アメリカの壁

今一番読みたい本は?


 読もうと思えば離れまで取りに行けばいいのですが、それ以外では入手が困難かもしれない本で、「アメリカの壁」(小松左京)が読みたいです。予見的な本なのは表題で明らかですが、アメリカが完全に世界から孤絶してしまう、そういうSF?PF?です。豊富な知識を駆使した小松左京の真骨頂というような小説で、アメリカという国はもともとトランプ氏が大統領になりうる歴史的経緯、思想的なバックグラウンド、が存在したことが明快に解き明かされている。30年以上前に書かれた小説ですが、「日本沈没」同様まったくテーマが古びていないのはさすがだと思う。遥か高みから見下ろしている知性には多少のタイムラグとかは問題ではないのだろう。「知性というものは明るいものなのだ」と、説くヒューマニズムゆえに却って晩年にかけては不遇だったような印象もある小松氏ですが、知っている人は彼の偉大さを知っている。スケープゴートを作り出すことには絶対に肯んじなかった「衆愚を嫌う左派」という思想にはサルトルの姿がダブる。入手困難かもしれないがまあ全集には収載されているだろうから是非ご一読ください。


(2018年10月13日)

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