四話

アラームが鳴り、新しい朝が来た。希望の朝だ。


「はぁ………」


分かってたよ……昨日僕がした事は只の現実逃避。分かってたんだよ………


「はぁ…………」


「お兄ちゃん、うるさい」


しょうがないだろ……こんなに学校に行きたく無いと思ったのは、中学校の修学旅行以来なんだよ……


え?なんでかって?

そりゃあ、ぼっちにとって修学旅行なんて地獄の合宿と変わらないからさ!


冬香が用意してくれた朝食をとった後、歯を磨いたり、寝癖を直したりして準備を整える。


「「行ってきます」」



共に我が家に別れを告げ、学校に向かって歩き出した。


暫く歩くと、何時ものY字路で涼介に会った。


「よお!おはよう修!それに冬香ちゃん!」


「……おはよう涼介……」


「おはようございます。」


「ん?どうしたんだ、修。」


「色々あったんだよ……」


「……そうか。大変だったな……」


察してくれたようだ。

なんて良い奴なんだ。涼介。見直したぞ。


「昨日お兄ちゃんは、美咲さんに怯えられて泣いて帰ってきたんですよ。」


「おい、それは違う。」


「へぇ?あの西川に、ねぇ……」


何平気な顔で嘘を付いているんだ?冬香。

お兄ちゃんはそんな子に育てた覚えはありません。


「まあ…色々とな。」


「そうか……が、頑張れよ?」


「ああ……」


その後も3人で話しながら登校した。

僕はその間もずっと策を考えていたのだが、やはり浮かばない。


……これはもう、どうにでもなるという事だな。うん。きっとそうだ。


下駄箱で冬香と別れ、涼介と一緒にクラスに行こうとしたのだが、何やら上履きに違和感を感じる。


「すまん、先に行っててもらえるか?トイレだ。」


「りょーかい。じゃあな」


そう言って涼介は去っていった。


さて……


この感触は、恐らく紙だろう。そして、靴箱に入れる紙など1つだけしか無い。


……そう。果たし状だ。


因みに、ラブレターという選択肢は初めから無い。僕を好きになる人がいたのなら、それはただの変態か、極度の変態である。


周りの人に見られないようにトイレに入り、なるべく潰さないようにして手紙を出した。


………ん?


ピンク色の封筒……だと!?


震える手で封筒を開ける。


<日下部 修さんへ>

今日の放課後、少しだけ時間をください。お話したい事があります。

体育館裏で待っています。


……え?これだけ?

この便箋にこれだけって、勿体無くないか?


それにしても…字体は女の子で間違いない。もしかすると、昨日のチンピラは実はこの学校の生徒だったとか?


……あり得るな


取り敢えず、録音の準備だけしておくか。



教室に行くと、早速涼介が話しかけてきた。


「大丈夫だったか?」


「ああ。問題ない」


……何か今日は違和感があるな。

あの果たし状を貰ったからか?


ふと昨日の事が気になって美咲の方を見るが、いつも通り人に囲まれている。


……まあ、良いか。取り敢えず今日も授業を頑張ろう。


キーンコーンカーンコーン


……もう終わりか。今日は授業が終わるのが早かったな……


「圭介ー帰ろうぜー」


「あー……すまん、今日はちょっと用事があるんだ。」


「なんだ?お前に用事なんてないだろ。」


「言い切るなよ……」


『親しき仲にも礼儀あり』だぞ。


「職員室に呼ばれたから、さっさと行かないといけないんだよ。」


「そうか。なら仕方ないな。」


「ああ。じゃあな。」


「また明日な。」


さてと……行きますか。


この後、朝の違和感の正体に僕は気付くこととなる。




◇◇◇◇◇



さて、次回はついに修くんに美咲が接近します!


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