12話

前衛軽装召喚……?なんだっけ。もうよくわからないけどとりあえず意味わからない人なのはわかった。

立ち姿を観察していると、特に隠す気もないのか根をぶんぶんと振り回し、最後にこちらへ手を傾け挑発してくる。


攻めあぐねているところだけど前言の通り本気ではやらないでいてくれるみたいでこちらが攻めてくるのを待っている。


「コマイヌ君にはこういうやつもおるんやで~って参考になる程度のもんにしたるわ」


【 Action Skill : 《スラッシュ》 】


とりあえずスキル。あちらから攻めてこないならこちらから攻め続けることができるということだ。いくらモンスター制の棍とはいえ多少は。


「今使っとるんが【メタルフェレット】のメフェ言うてなぁ、本来は鋼鉄の尻尾を叩きつけるモンスターなんやけど」


そういうと先端の方を掴み僕のスラッシュに合わせ、剣に合わさった胴体部分とは別にしなるように尻尾の部分が叩きつけられる。重い衝撃が肩に入る。


「と、まぁ生き物なもんで結構柔軟性あってやな。わりと三節棍っぽく使うとる」


肩に入った衝撃はダメージとして入ってはいるが手加減してくれているからかそこまでのダメージになっていない。それに少しのダメージはボタンさんが回復してくれるらしい。

本当に戦っているところが見たいだけなのだろう。ならとりあえず手の内を全部晒すつもりで行こう。


まだ待ちの戦法を取るハナミさんを相手に距離を取った場所から再度走りこむ、今度は眼前まで迫ると動きづらそうに棍で弾こうとしてくる。


【 Action Skill : 《ステップ》 】


【 Action Skill - chain : 《スラッシュ》 】


相手の棍が振られるのを見てからステップを踏み、すぐさまスラッシュでキャンセルする。ウサギのように動きが素早かった相手に背中から攻撃を当てるための動きだが


【 Action Skill : 《入替(キャスリング)》 】


しなった棍が背中側までカバーするような動きを見せるが右上段から振られる僕の動きにはさすがに追随できておらず、スラッシュが当たるかのように見えたがスキルが差し込まれる。


棍は姿を変え、背中側を覆うような盾が現れた。キィンと甲高い音を立て、固いものを力いっぱい殴ったとき特有の痺れが手に走る。


「これは【シビレドウカメ】のシド。背中側にびりびりしたん出しとる便利な盾やな」


【 Action Skill : 《召喚》 】


「そんでもってこれが【クロガンチョウ】のガチョ」


そういうと左手に持った銃のようなものから弾丸を放つ。遠距離攻撃まであるとか聞いてない!ファンタジー世界に銃があるのも!

飛んでくる弾を六発切り落とすと、ハナミさんが弾倉らしきものを取り換える。それ本当に生物ですよね。


「うわー、初見で銃弾切り落とすとか」


「ハナちゃんもコマイヌくんも人間?」


「反射神経お化けやからコマイヌ君は人間ちゃうかもなぁ」


「対応力お化けに言われても」


どうやっても攻めあぐねてしまう。攻撃がどこかに届くというビジョンが見えない。悩んでいる僕を見たのか両手にあった盾と銃を消し、手をひらひらして見せる。


誘われているとはわかっている物の行かない手もなく、無防備に見える背中へ回り込み攻撃する。


にやりとハナミさんは笑うと、予想していた通りスキルが発動された。


【 Action Skill : 《召喚》 】


背中側が針にまみれた。このまま剣を振りぬくと大ダメージを負うことはわかっているので無理やり止めようとするも剣の勢いは止まらない。

ならば

【 Action Skill : 《飛燕》 】


飛び上がることにより滞空し、少しの間時間を稼ぐ。

ハナミさんはファーコートのようになった服のポケットに手を入れたまま背を向き、背中側に纏った針をこちらに向けた、確かにこのままでは針の中へ飛び込むことになる。それを回避するために少しの時間で必死にメニューバーを操作し、そして目的のものにたどり着く。


全力で【装備】のボタンを叩くと利き腕の反対側、左手に新たに片手剣を装備する。


【 Action Skill : 《飛燕》 】【 Action Skill - chain : 《スラッシュ》 】

【 Action Skill - chain : 《ラッシュ》 】


左腕を軸に無理やり飛燕で再上昇、その硬直を左腕のスラッシュで打ち消し、さらに右腕の短剣でラッシュを発動する。どれか一発でも当たれと言わんばかりのやけくそスキル連発だ。


ハナミさんは少しだけ驚いたような顔をして見せるとポケットから手をだし、笑った。


【 Action Skill - chain : 《召喚》 】


するとハナミさんの全身が光だし、光が五つにまとまったかと思うとこちらへ飛ぶ。

光の一つ一つが僕の額を、肩を、胴体を貫いたかと思うと僕のHPはすべて消し飛んだ。

え、なにそれ。





「いやー、やっぱり初心者にしては強かったなぁコマイヌ君」


「それよりも最後に食らったの意味が分からなすぎたんですけど」


なんか光ったと思ったら死んだ。反射的に回避とかいう次元をすっ飛ばして死んだので何が起きたのか全然わからなかったし。


「ハナちゃん大人げなーい」


「模擬戦であれやっちゃだめだよね」


観客席の方々はご存知のようだったが、やっぱり初心者にぶっ放すやつではなかったらしい。いくら僕のVITでも即死したもんな。


「でも、うん。だいたいコマにぃのことわかったね」


コマにぃって新鮮だな。弟も妹もいなかったので下の年の子とは関わってこなかったし。でも何がわかったのだろう。行き当たりばったりの考えなしってところとかかな。


するとリーシュ君は紙に何やら図案らしき物をガシガシと書いて、たまに手を止め、僕のほうを見るとまた書き出すのを繰り返した。


「じゃあ最後に詰めてこー。コマにぃ、直感的に答えてね」


心理テストっぽいのが始まった。

そのあと質問されたのはたわいない質問や今までプレイしてきたゲーム、その時どんなプレイスタイルだったかなど本当にSNSのゲーム診断のような質問だった。とりあえず言われた通り直感的に答えたけど。


「ボタン、待ってる間にお酒とか」


「ダメに決まってるでしょ」


「よし!できた!」


絶望的な顔をしたハナミさんとは対照的な顔の、達成感のある顔をしたリーシュ君が図面を見せてくれた。ゲームの機能によって空中に投影されたそれは……


「なにこれ」


「【十二支型試作・狛犬Edition】かな」


随分ファンタジー世界観に似合わないなんというか、機械らしいフォルムに加えて様々なところに剣が添えられた……何とも言い難いフォルムだった。


「機械っぽいのはリー君の好みだから……」


「これは理想!ボクが提案したいのは、この右下に書いてある機能のほう!」


なになに?関節部分に余裕を持たせ、柔軟性の高いモンスター素材をはめた防具にすることによって隠し刃を収納、さらに各部をインベントリと繋げることによって文字通り全身から刃を生やすことができる強化鎧……いやわからん。


「え、まずこれできるんですか?」


「リー君が提案してるならできるね……私もわかんないけど」


「うちの手袋とかコートみたいに見た目シンプルにはできるで」


「ハナミねぇのももっとカッコよくしたかったんだけど嫌がるから……」


まずこれどういう仕組みで生産されるんだ?鍛冶?服飾?このゲームの生産システムどころか、スキルすら把握できてないからわからないけど、レベル上がってくるとこれくらいできるもんなのだろうか……


「まずはじゃあ……脱いでもらおっか」


いやん。

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