第64話再開③
「すぅ…すぅ…。」
俺の背中ではエマがぐっすりと寝ていた。まぁ無理もない。エマからしてみればかなり大変だったろう。
エマのオリジナル魔法である雷装は本当に体の負担が大きい。王国でも1度しか使ったことがなかった。そしてそれまでずっと戦闘続きだったから精神的にも肉体的にも疲労が相当溜まっていたんだろう。初めてのダンジョンでここまで出来れば上出来だ。
「ルア、次右側から来るぞー」
「分かった!」
ズババッ!と鮮やかにルアが魔物を倒してくれるおかげで俺が戦わずにすむ。というか本当に強すぎる。
「エマちゃん、ぐっすり寝てるねー。」
「…そうだな。初めてのダンジョンだったから相当疲れたんだろう。ほんと、よくやってるよ。」
「タイチが人のことを褒めるなんて…。」
確かに俺が他の人を褒めるなんて珍しいかもな。ルア以外でだけど。まぁ、あんなに努力してる姿をみたら褒めたくもなる。昔の俺では考えられないようなことかもしれないけどな。
「……そういや、俺達と出会うまでルアはどうしてたんだ?」
俺の予想では2日ぐらいあれば余裕でルアは俺たちに追いつくと思ってたんだけどなぁ。俺はエマの進行速度に合わせていたから比較的ゆっくり進んでいた。対してルアはおそらくかなり速かったと思う。
「ん〜。転移された後はね?すぐに上に向かったんだよ。それで、入ってきた場所まで戻って…、そこからまた全力で下を目指してたんだけど……」
「もしかしてもう一度あの転移のトラップに引っかかったのか?」
むしろこれ以外に理由を考えられなかった。もしくはこはのトラップにかかるだが…トラップが魔法陣である以上ルアの反魔法で対処できるはずなんだが…。
「あ、ううん。そこは1回見たから避けることが出来たんだけど…。」
?じゃあ一体何がルアを苦しめたものは何なんだ?
「う〜ん。……毒を貰っちゃったんだ……。」
毒?あれ?今までキリアダンジョンを進んできたけど毒を使う魔物なんていたっけ?少なくとも俺とエマは遭遇してない…よな。ってことは俺が転移した場所より上層の魔物にやられた可能性が高いってことだけど今更そんなところでルアがやられるなんて信じにくいなぁ。
「それ、魔法じゃなかったのか?」
「ううん。魔法じゃなかったんだよ。」
ルアの反魔法は魔法にしか作用しない。なので普通の毒だと治すことができないのだ。
「あれ?なら回復魔法で治したら良かったんじゃないか?」
「そうなんだけどねぇ……。……ちょっと前のことなんだけどね。」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
1日程前 Sideルア
「う〜ん?今日もタイチとエマちゃんに出会えなかったなぁ。」
でも、ここまで出会えないってことは2人は一緒ってことだよね。良かった…。それなら安心だ。
結構スピードを出してるつもりなんだけどなぁ。予想以上にタイチ達と転移先が離れてたのかなぁ?私は多分8層ぐらいに飛ばされていたから。
「さてと!今日も1人だから自分で用意しないと!」
私はタイチから貰ったアイテムボックスから野宿用のセットを取り出す。……タイチにご飯作って欲しいなぁ…。
それにしても寂しいなぁ。…タイチに助けられてからずっと一緒だったからこんな気持ちになることはなかったのに…。
1人は嫌いだ。昔のことを思い出すから。ずっと仲間に嫌われて1人だった記憶と暗闇でずっと1人でいた記憶が頭の中を支配しちゃうから。
うぅ…。恐い……。タイチ……。
腕をぎゅっとして身を小さくする。
腕にある物が当たる。すごく硬いもの。それはタイチがくれた指輪だった。
『俺はルアに支えられてきた。これからも支えて欲しい。俺はルアが好きだ。愛してる。この指輪を受けとってくれないか?』
うん…。大丈夫。私はもう1人じゃない…。
「よし!ご飯の用意しなくちゃ!」
アイテムボックスにはタイチが作ってくれたご飯がある!ちょっと焼けば簡単に食べれるんだって。昨日も美味しかったな〜。火魔法で簡単に焼くだけだから私でも作れる!
後はお水を用意して……と!よし完成!
「いただきます!」
うん!やっぱり美味しい!
ごくごくごく!
は…れ?なんか変な感じがする…。このお水ちょっと違うような…。
「う…う…。ダイヂ〜!どごにいるの〜!1人はざびしいよぉ。それに最近ずっと私に構ってくれないし……。私だってもっとかまって欲しいのに……。もっと遊びたいよぉ。ふぁあ。なんか眠…いや。」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「っていうことがあったんだよ。これ毒でしょ?」
「お、おう…。そうだな。そうに違いない。」
クソー!また酒かよ!というか俺の亜空間収納マジでどうなってんだ!?ちょっと後で整理する必要があるな……。とりあえず適当なものに酒と水を入れておこうと思ったのが間違いだったか…!!
「まぁ、何がともあれルアが無事でよかった…。このダンジョン出たら今度は2人でどっか行くか…。それとも2人でゆっくりと過ごすか?」
「ふふ。2人でどこか行ってみたい!」
「そうか。まぁ考えとくよ。」
どこに行くかな。エマに王国内でおすすめの場所とか聞いておくか。地元人の方が詳しいだろうし。
「あ、ルア、次は左から魔物。」
「任せて!」
さて、そろそろキリアダンジョンも大詰めだな。最深部には何がいるのか…。楽しみだな…!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます