第65話キリアダンジョン最深層①

キリアダンジョン最深層


「いよいよね…!」「そうだな。」「うん!」


俺たちは今最深部のドアの前にいる。エマもゆっくりとした休憩によって魔力も肉体も回復したようだ。


「最初に言っておくが、最深層の魔物はさっきまでの魔物とはレベルが違う。驚く程に強い。油断だけは絶対にするな。それは命取りになる。」


「わかったわ…!」


ルアとの再会によってエマの魔法弾も増やすことが出来た。これで準備は万端だ。


「よし、行くぞ!」


「「おー!!」」


ギィィ!


目の前の大きなドアを開ける。そしてその先には…!!


「あれ?」


「何も…いない…??」


ラギルダンジョンと同じ空間だったが、前回と違い魔物が居ない。前なら龍がいたのに…。


いや…これは…。ッ!!?!?


「エマ!ルア!」


俺は隣にいる2人を後ろへと飛ばす!そしてシロガネを俺の体の前に抜刀するが…!


「ごフッ!」


「タイチ!!?」


俺の体には鉤爪のような傷がつけられていた!


「何が起こったの!?」


エマは困惑している。それはそうだろう。。俺でもだ…!!


俺も本能が反射的に防いだだけだ。


だが…!!俺の左目の物理眼は捉えたのだ!大きなドアベクトルの流れを!つまり…


「透明…?」


「いや、それは違うな。敵が速すぎるんだ…!!エマ!今すぐに雷装!!ルアはエマを守れ!!」


「「わかった!」」


右目を閉じて物理眼でベクトルの流れを捕える!!


「フッ!」


ガキイィィ!!


俺の体をもう一度狙おうとした所を反射で紙一重で防ぐ…!!そして空いた手でクサナギを抜刀して風斬りかざぎりこがらしを俺の体の正面には放つが当たった感触はない…!


クソっ!今のはルアでも回避できない距離だと言うのに!!


つまり俺たちの誰より速いのだ。目にも止まらぬ…、いや目にもほど早いということで分かってはいたが…。


「雷装!!」


「全員動きを止めるな!!狙い撃ちにされるぞ!!」


すぐに俺とルア、エマでバラける!


時間減速クロノダウン時間加速クロノアクセル!!」


すぐに俺は時間を操る!ついでにルアとエマにも時間加速の魔法をかける!それでもまだ敵の姿が見えない!


「チッ!身体能力強化!」


身体能力強化は単純に身体能力を強化するだけじゃない。動体視力、聴力そういうものだって強化される。要は体の筋肉を強化するのだ。エマの雷装は電気により体の反応速度を上昇させることにより動体視力も強化される。


身体能力強化は魔力を込めれば一部分だけを強化することが出来る。例えば足だけに身体能力強化の魔法をかければ脚力のみが上昇する。そして目のみ強化すれば視力が上がる。


そして見えた敵の姿は、


「何よ、あれ……。」


「あんなの見た事ない……。」


合成獣キメラ…。」


魔物はギリシャ神話に登場するキマイラそっくりだった。獅子の頭に山羊の胴体と顔。そして尻尾には蛇が混在している。俺の世界では伝説上の生き物がとてつもない速さで空を駆けながら動いているのだ。魔力で足場を作り、それを蹴ることで宙を駆けているのか…。


これはエマにはキツい…!近接に寄られればエマはまだ弱いと言わざるを得ない。キメラがとんでもない速さで動くのでさすがに銃で捕らえるのは難しい!!俺への攻撃速度も考えると、雷装も関係なしに攻撃してくるだろう。


「クッ!」


ガキイィィン!


今度は俺の背中を狙われたがしっかりと見て防ぐことが出来た…が、


「フッ!」


キメラに向かって刀を振るが感触がない。コイツ…!自分への攻撃にはより早く対応するのかよ!


地獄の業火インフェルノ…!!」


俺の攻撃を避けたキメラの移動先にルアが広域の魔法使って仕留めようとするが…


「「ウソっ!」」


「……今のも避けるのかよ…。」


ゲートを使わない限り避けれそうになかったというのに!唯一の幸運はラギルダンジョンの龍ほど攻撃力が高くないことか…。


ッ!?キメラは標的を俺から別の人に変えた!


「エマっ!!」


ドン!とキメラに向かって銃を撃つがあの速さと反射速度相手には分が悪い!


「ゲート…!!」


すんでのところでエマの前にゲートを発生させ、キメラを遠くへ飛ばす。


「ゴメン!」


「気にするな!」


エマの雷装の時間も考えればモタモタしていられない…!!


空間操作を使いたいところだが、俺は…使


ラギルダンジョンでルアと話した会話を思い出す。


『タイチって不思議だよね〜。いくつも魔法を使えるんだから。』


『?どういうことだ?』


『普通の人はね?同時に2つ使うことは出来ないの。私も2つまでしか使えない。複合魔法を使える人は2つまで使えると思うよ?けどタイチは3つぐらい使えてるんだよねぇ。昔にもそんな人いなかったと思うよ。』


『そういやそうだな。ルアはできないのか?』


『私は無理だよ!3つも使おうと思うと、思考が追いつかないっていうか…。』


『なるほどなぁ。でも身体能力強化を使いながら複合魔法は使えるんだよな?』


『うん。だって身体能力強化は無意識にコントロール出来るでしょ?だからあんまり考える必要も無いからね。』


これは空間操作を使う時と同じで脳の処理速度が追いつかないということだろう。そして俺は空間操作で脳の処理速度を速くする特訓を自分でも知らないうちに行っていたのだ。


煌縛鎖の操作が1番の理由だろう。あの特訓も無駄ではなかった。


しかし今の俺では3つが限界。今は時間加速、時間減速、ゲートを使っているからな。限界突破を使えばもっと使えるかもしれないが、制限時間を考えれば使うことは出来ない…!!


どうする…どうする!?


「これならどうかしら!」


ドンドン!!


エマから2発の銃弾が発射される。キメラはそれを避ける…が、弾丸はありえない角度で曲がり、キメラを追う。風魔法の魔法弾だ。


しかし弾丸より速く動くキメラは弾丸を壁に引き付け、直前に回避する。弾丸は壁に埋まり勢いを止める。しかし…


「剣速なら私が一番はやいんだから!!」


その隙ををルアが狙うが…それも回避。どころかルアの背中に攻撃を仕掛けてきた。


「ウソっ!?」


「ルアに何しようとしてんだ??」


「タイチ!!」


ギリギリのところで俺がルアを守る。


マジで冗談きついぜ。どうやって一撃をお見舞いしてやればいいんだ?


キメラは再び地面へと逃げられてしまう…。しかし、キメラは運悪く、エマの魔法弾を踏んでしまう…。そこで俺達はとんでもないものを見た。


「は……???」「う…そでしょ?」「ど、どうして…よ…」


キメラは銃弾を踏んだことで発動した魔法すら避けたのだ。


エマの魔法弾は基本的に触ることで発動する。そして触る→発動までのタイムラグはほとんどない。これは俺やルアでも防ぐことは出来ても避けることはできない。というか誰でもできない。


コイツの速さ…本当に異常だろ…。


クソっ!思考を止めるな!!止まった瞬間に殺される!考えろ!コイツに勝つ方法を!!


「タイチ!?」


ヤバいッ!?油断し……


「フッ!!」


ルアの声のおかげで俺の後ろにいたキメラの攻撃も何とか防ぐ…が、先程より攻撃が強く、ルアたちの方に吹き飛ばされてしまう…。


コイツ…まだ全力じゃなかったとか言うのか?いや、ベクトルの大きさは同じだった…。どういうことだ?


「タイチ!?」


「……ルア、エマ、1つ作戦を伝える。」


「えっ!?」


「ただ、これはエマ次第だ。やれるか?」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る