第63話再開②
俺はクサナギとシロガネをもう一度抜刀して両手に構える。煌縛鎖は装備したままだ。
「
ルアの初手は風と水の複合魔法である氷魔法の帝級でも最上位に位置する広範囲魔法だ。とてつもなく繊細な魔力コントロールで俺たちにだけはその寒さが届かないようにしている。こういう所は流石だ。
ルアの魔法により今目に見える全ての魔物が絶命してしまったが、次々に壁から魔物が出てくる。それでも残りは150匹ぐらいだろう。
「ムゥ…。キリがないね…。もう1回私が…」
「いや、あとは俺がやる…。まだここに来て1回も全力で戦ったことないからな。」
「そういうことならタイチに譲るよ!」
足に力を込める…。使う魔法は身体能力強化のみ…。そして全力で地面を蹴った。そのスピードはエマの雷装を使った時のスピードを追い越すような勢いだった。魔物の群れに突っ込み、ひたすらに刀と鎖を振り回す。適当ではなく確実に敵の首だけを刈り取る。
そしてルアたちの元に戻る。この間わずか1秒足らず。
「紫電一閃…!!」
キンっ!と刀を鞘に戻す時独特の金属音を立てると同時に魔物から大量の血しぶきが上がる。
「よしっ!これで終わり!!」
「全く…あなた達には敵わないわね……。」
「いいや?そんなことは無いぞ。正直言ってエマがいなかったら相当にヤバかった…。」
「そうだよ!!ありがとう!エマちゃん!!」
「言っておくがさっきの戦いで1番討伐数が多いのは紛れもなくエマだ。それに雷装もシリウスも上手く使えてた。確実に強くなってる。」
正直エマの成長スピードはとてつもなく速い。それは本人の才能という部分もあるんだろうが1番は常に上を向き、努力している点だ。今までみた貴族や王族はおごっていて努力なんて知らないクズみたいなやつが多いというのにエマには全然そんなところが見られない。本当にすごいと思う。
「そ、そうかしら…!ま、まぁ当然よね!私はその…2人の仲間…なんだから…。」
「そうだね!!」
「ところで私が倒した魔物って何だったの?私の魔法弾で倒せたってことはルアでも倒せると思ったのだけど……?」
「エマ……」
俺はしゃがんでエマと同じ視線になるように座る。
「知らない方が幸せってこともこの世の中にはあるんだぜ……。」
もしかしたらこの世界に来て1番気持ちの入った言葉かもしれない……。
「そ、そう…なの?」
「あぁ。だから何を倒したかは忘れろ。エマはゴーストを倒したんだ。ゴーストでは物理魔法が効かないからな…。」
ちなみにだがゴーストという魔物は本当に存在する。物理は効かないが魔法なら倒すことができる魔物だ。そして魔石を取れないことで有名なんだ。
「さて、そろそろ行くか…。ほれ。」
俺はしゃがんだままエマに背を向ける。そして自分の背中を指さす。
「?どういう意味よ?」
エマは首を傾げて意味がわからないという感じで俺に尋ねてくる。
「どういうって…。まだ雷装の効果で動けないんだろ?それに魔力も結構使ったし疲れてるだろうから俺が背中に乗せてやろうって思っただけだ。」
「…私に変なことする気なの??」
「まだ昨日のこと根に持ってんのか?そんなことしねぇよ。」
さすがの俺もルアの前でそんなことをするほど肝が座っていない。
「まぁ、嫌ならルアに頼め。」
俺はしゃがむのをやめて立ち上がろうとするが…、
「待って…。嫌だなんて言ってないわ。しょうがないからと、特別に私をおぶることを許可してあげるわ…!!」
エマに服を掴まれてそちらを振り返る。
「素直じゃないやつ…。ほれ、乗れ。」
「ん…。」
エマはゆっくりとだが、動いて俺の首に腕を回してくる。
エマ曰く、雷装を使った後は身体が痺れたように動けないらしい。しかし時間が経つにつれて徐々にだが治るみたいだ。完全に治るのは1日後ぐらいかな?
「よっと…。それじゃあ、ルア。ここから先は魔物がいたらルアに倒してもらいたんだが……」
隣を見ると頬を膨らましたルアがいた。分かりやすく怒ってますよっていうアピール…ということか?
「……どうした?」
「……ずるい…。」
「…は?」
「エマちゃんだけずるい…。私も頑張ったのに…。」
とは言われても今はエマが動けないからこれは仕方ないと言える…。さすがの俺でも腕を増やすなんて言うことはちょっと出来ない。
俺はルアの頭の上に手を置き、優しく撫でる。
「今はこれで我慢してくれ…。このダンジョンを攻略したらおんぶしてやるから。」
「……うん…。約束…。」
「あぁ、約束だ。」
「このバカップル…。」
?後ろからなにか聞こえたというか振動が背中から伝わった。
「?何か言ったか?エマ。」
「なんでもないわ。ほら、早く行きなさい。」
久しぶりに3人揃ってダンジョンの攻略を再開した。
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