第51話宣誓③
ゲートの先では亜人たちが家族と出会えたことに喜んでいたり、泣いていたりだった。俺の目の前にはさっきのガキもいる。
「おぉ!女神様だ!」
ルアが見えた瞬間に女神様が現れたという声が拡がっていく。よし、ここからは俺の役目だ。
「ルア、エマ。何があってもここから手を出すなよ?」
ルアとエマは同時に頷く。
「聞けっーーーー!!!亜人!!!」
俺は大声を出して全員の注目をこちらに集める。さぁ、宣誓といこうか!
「お前たちにはこれから亜人ギルドに入ってもらいたい!!お前たちの生活は俺が保証しよう!!何かあればすぐに言ってもらって構わない!」
「俺の目的は亜人の地位向上!!そのために力を貸す!!知識、戦闘俺たちにできる限りのことをお前たちに教えよう!」
「出て行きたいものはぐに出ていってもらって構わない!」
亜人たちの表情は変わらないどころか少し不機嫌だ。それはそうだ。結局は奴隷と変わらないと思っているものもいるだろうし、そもそもそんなことが可能だと思っていないものがほとんどだ。人間を信用出来ない。これが問題なのだ。なら!信用してもらう。覚悟を示す!
「お前たち亜人が俺たち人間を嫌っているのは知ってる!憎んでいることも!人間と亜人は姿形はちがうかもしれない!!だがな!」
俺は亜空間収納からナイフを1本取り出す。そしてそれを…
ザシュッ!
俺の手に突き刺した。
「ぐわぁぁぁ!!ぐっ!」
「「タイチっ!?」」
ルアとエマの声は聞こえるが、アイツらに静止するように合図する。
「グッ!流れている血は同じだ!!!」
俺は自分の血で滴る腕を掲げながら続ける。が…
「グッ!!!」
腹にナイフが刺さった。さっきのガキが刺したのだ。俺はわかって避けなかった。
「同じなものか!!お前たちは俺たちを獣としか見ていない!!俺の親は亜人という理由で食料を貰えなかった。それでも楽しく生きてたんだ!でも!人間はそれすらも奪った!」
ゴンっ!頭突きをして睨みつける。
「よく聞け、ガキ!お前たちが獣だとか知らん!だがなお前の親は人間たちに抗った!お前を守るために死んだ!心があった!仲間を思う、家族を思う心が!そんな奴が獣のはずがないだろうが!だがな!今のお前を見て俺はどう思う!?今のお前は復讐に囚われ人間を殺すことしか頭にない!今のお前が獣だろうが!」
「う、うるさい!うるさい!黙れ!死ね!」
ガキはさらにナイフを深く突き刺してくる。吐血までしてきたな。
「グッ!ガブっ!!今のお前は貴族に似てるぞ。お前の親は最後までお前を守るために戦った!!お前はそんな親を誇りに思っているなら!両親のようになれ!両親のように戦え!!心を持て!」
「う…うわぁぁん!!!父ちゃん!!母ちゃん!」
ガキは泣き崩れてナイフから手を離した。俺はナイフを抜き取り地面に突き刺す。
「亜人共よ俺たちに手を貸せ!そして、俺の命に誓おう。お前たち亜人の人権を取り戻すと!」
最後だ!気合いを入れろ!
「すぅぅーっ!お前たちの歴史と尊厳を取り返しに行くぞぉぉぉ!!!!」
「「「「「おおぉ!!!!!」」」」」
ゼェゼェ。なんとかなったな。
「「タイチ!!」」
「今回復する!」
ルアに回復魔法をかけてもらう。血を失いすぎたな。
「全く無茶するんだから!」
「これぐらいやらなきゃあいつらの心は動かせねぇだろ?」
「だからって!」
ルアの治療も終わり、なんとか回復した。2人とも俺を刺したガキを見ている。
「今はほっとけ。別に刺された傷も大したことないし。」
「うっ!でも!」
ぐぎゅゅゅる〜。
かわいい音が鳴ったなーって思ったら、
「ご…ごめん…なさい…。」
ルアだった。顔を真っ赤にさせている。
「朝から何も食ってなかったからな。しゃあねぇ。俺がなんか作ってやるよ。」
「タイチが!?やったー!」
確かここには食料も調理器具も一通り買っておいたはず。
保存場所は…と。ここか。ん?調理器具も使った形跡がない…?調味料も使われてない。若干食料が減ってる…?
「おい、お前たちは料理…してないのか?」
近くにいた亜人に尋ねてみると。
「い、いや。調理の仕方もわからないですし…。」
な…んだと…??てっきり知っているものと思っていた。こいつら一体2日間何食ってたのだろうか?
「はぁ。今から飯を作ってやる!腹が減ったやつは取りに来い!!!」
1人分のはずが100人分以上作らなきゃいけなくなっちまった。ここには何人いるのか知らないけどな。亜人たちは驚きと喜びの様子。
「た、タイチ!あんた100人前以上作るつもり!?1日終わるわよ?」
「そりゃ普通に作ればな。俺には魔法がある。見とけよ?これが魔法の使い方だ!」
「ゾーン!!!」
空間操作なめんなよ?
俺は食材を全て移動させて包丁、食材、スパイス、調理道具などを移動させたり使ったりする。同時に30人分の働きはしていると思う。
「「「お、おぉー!!!」」」
亜人たちも匂いにつられてこっちに集まってきた。もしくは俺の魔法が見たいのかもな。だって勝手に包丁が野菜を切ってるんだから。不思議だろ?
30分後…。
「できた!!」
作ったメニューはカレー。王国には勇者のおかげで米が育成されている。なので大量に買っておいたのだ。
30分という短い時間でなぜカレーが出来たのか?答えは時間魔法。これでご飯の炊きあがりやルーの完成を速めた。
時空魔法とんでもないだろ?これが本来の魔法の使い方よ!
「…これほどに無駄なユニーク属性の使い方は初めて見たわ。」
「うるさい!使えるものがあればすぐに使うんだよ!」
エマはそう言いつつも俺の作ったカレーを食べているけどな!
「ルアどうだ?」
「美味しい〜!!やっぱりタイチの料理は美味しいね!」
「だろ?」
まだラギルダンジョンにいた頃、肉を焼くのはいつも俺の役目だった。どのタイミングで引き上げたら美味しいのか、完璧に調整していたと思う。
まぁ、肉の丸焼きとカレーを比べられるのは不服だが。ルアが笑顔なので良しとしよう。
俺は後ろにいる2人と会話しながらカレーを皿に乗せて亜人たちに配る。亜人たちは列になって俺のカレーを待ちわびている。
俺のカレーを食った亜人も絶賛してくれた。中には泣いているやつもいた。
これからずっと100人前作るの面倒臭いし料理部門でも作ろうかな?
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