第36話王都②

次は武器屋に向かう。王女ではなく、騎士に渋々だが教えてもらった武器屋に向かう。王国一を誇るらしい。なんでもドワーフが鉄を打ってるみたいだ。


この世界に最初に来た頃はエルフとドワーフとケモ耳の獣人には会いたかったから、少し興奮していた。


実は最初にエフィーさんを見た時も少しだけ興奮した。もちろん俺にはルアがいるから、直ぐに切り替えたが。




目的の武器屋に着いたと思ったら中から怒鳴り声が聞こえてきた。


「さっさと金貨10枚を出せと言ってるだろ!汚らわしい亜人が!」


「何度も言うがそれは不良品じゃない。お前の使い方が悪いからそうなる。」


なんだろうな?偉っそうな太った男と店主?の揉め事っぽいな。デブ男の後ろには騎士もいる。デブ男は貴族なんだろうな。


「そんな訳が無いだろ!なら、何故このピーグ様が剣で負けるのだ!武器が悪い以外に理由がないだろ!」


元いた世界でもああいう迷惑なクレーマーいたな。しかも自分の剣に、そんなに自信があるのか?見た目からは想像できないが。



こういうのは無視が一番いい。関わるとめんどくさいからな。


「ルア、自分に合う武器を見てこい。これからダンジョンに潜るだろうからちゃんとした武器はあった方がいい。」



俺の魔物の骨で作った剣はドラゴンとの戦いで壊れた。ルアも同じような細剣を持っているが、やはり職人が作った武器の方がいいだろう。


「わかった!探してくる!」


ということで俺も自分の武器を探すか。この世界にあるのかは知らないが俺的には剣より刀がいいんだけどな。元の世界にも馴染みがあるということで扱いやすい。それにそこまで重くないから敏捷も活かせる。


それにしてもあのクレーマーうるさいな。


「なら、僕の剣の腕がないというのか!?亜人のくせに生意気だぞ!………ん?」


お?静かになったな。おぉーこの剣とかカッコイイな。でも、刀が無いな。


「そこの女!僕の妻にして……」


「ァ??」


デブが言い切る前に俺は素早くルアの前に立ち、デブを睨んだ。


「ヒッ!なんだ貴様は!」


「てめぇなに人の女に手を出そうとしてんだ??」


「そ、そうか!貴様の女か!ならば金貨10枚出そう!その女を寄越せ!」


「殺すぞ??」


「なっ!?僕は貴族だぞ!護衛がいるのが見えないのか!!僕はピーグ男爵様だ……ブホォ!」


デブが言い切る前に思いっきり顔面を殴った。前歯が何本が抜けたな。そのまま後ろの護衛1人と一緒に吹き飛び、店から出た。


「俺の女に手ぇ出してんじゃねぇよ。」


何が起こったのかを理解したもう1人の護衛は、腰が抜けているのか座り込んでいる。


「ホラ!金貨10枚入ってる。それ持ってここから失せろ。次、俺とルアに出会ってみろ。その時は本当に殺すぞ?分かったらデブ持って俺の視界から消えやがれ!」


「ひ、ヒィィ!!」


軽く?脅すと護衛はデブを担いで直ぐに逃げた。ひとつ分かったがデブに剣の腕は無いな。デブは多分生きてるが、重症だろうな。自業自得だ。


「タイチー!!」


「おわぁ!」


後ろからルアが抱きついてきた。


「超カッコよかった!!スカッとしたよ!」


「それは良かった。あんなデブがルアに触れるのは許せないからな。ルアがデブを殴って触れる前に俺が殴ってやろうと思ってよ。」


今回は俺がやらないと気がすまなかった。あんなデブにルアが触れるのは嫌だからな!


「ふんっ。余計な真似をしおって。わしは助けをよんだ覚えはないぞ?金まで出しおって。」


俺がルアとのスキンシップを楽しんでいるとさっきまで揉めていた店主?が話しかけてきた。多分こいつがドワーフだろう。ラノベに出てくるドワーフのように少し小柄だが、がっちりしている。


「俺もそんなつもりは無い。あのデブが俺のルアに余計なことをしようとしていたから殴っただけだ。それに金は別だ。あれだけあれば、デブの葬式には足りるだろう?」


もちろん殺してはないぞ。多分な!


「ふっ。気に入ったわ。お主達名前は?」


「俺は太一」「ルア!」


「わしはガルアだ。武器を探しておるんだったな。ついてこい。いい物がある。」


というわけで俺とルアがついて行くと店の奥には工房が広がっていた。壁には立派な武器が立て掛けられている。


「ここから選べ。どれも優れものじゃ。」


だろうな。店に並べてある武器とは格が違う。見ただけでわかる。俺とルアは武器を持ったり、眺めたりして自分の武器を探す。



「…ん?ガルのじいさん」


「なんじゃい?」


「あれはなんだ?」


俺が指したのは一振だけ別の壁に飾られた真っ黒な武器だった。よく見ると刀に見える。ルアもその武器をじっと見ている。


「…あれか。あれはやめとけ。切れ味はいいが、呪われとる。」


「呪われてる?」


「あぁ。あれを使った剣士は全員死んだよ。あの刀に刺されるようにな。しかも作り手は誰かわからん。いつからあるのかもな。何から出来ておるのかもわからん。だから『魔剣』と呼ばれておる。」


「自分の武器で自分を刺す?そんなことありえんのか?」


「だから、呪われておるのじゃ。」


なるほどねぇ。ぱっと見た感じあの武器は間違いなく刀だ。ここには他に刀がない。それになんか上手く言えないが、何かを感じる。鑑定してみたんだが、1番初めにルアを見た時と同じく、何も見えなかった。


「じいさん。あれをくれ。」


「……本気か?死ぬぞ?」


「あの刀を使ったやつが呪われたからって俺も呪われると決まったわけじゃない。俺は呪われるほど弱くないからな。それに呪いで死んだら俺はそこまでって事だろ?」


「ワッハッハ!面白いのぉ!お前さん本当に気に入ったわい!あれはお前の好きにせえ!」


「あぁ、そうさせてもらうよ。…それより俺と契約しないか?」


「契約?」


「あぁ、俺はじいさんに金と欲しい素材を渡す。そんでもってなんかあれば俺を呼んでくれたらいい。その代わりに俺の言う武器を優先的に作ってくれ。どうだ?」


「ふっ。面白いのぉ。乗った!」


「契約成立だな!」


俺とじいさんは手を交わす。これで俺の欲しい武器は手に入るわけだ。オーダーメイドでな!しかも作り手は王国一!


「早速だが、鉱石は山ほどある。だから、俺とルアの武器をいくつか作って欲しいんだが。」


「どれ。鉱石と作る武器を言え。」


「あぁ、わかった。」


俺はさっきと同じように袋をアイテムボックスのように見せかけて異空間収納を開き、ダンジョンの深層で取った鉱石を出す。



「こ…これは!アダマンタイト!?それに大量のミスリルもある!お主どこでこんなもん取ってきた!?」


「秘密だ。いつか話してやるよ。まぁこれで鉱石は問題なさそうだな。」


ヒヒイロカネは出ていない。というかほとんどない。かなり使ってしまったのだ。ルアもこれには少し驚いているようだった。


「タイチ、いつの間にこんなにとってたの?」


ボソッと耳打ちで聞いてきた。ルアの声って綺麗だから、近くで話されるととても心地がいいな。


「指輪作る時だよ。ルアが寝た後に鉱石を取りまくってしまっといたんだ。指輪の試作にたくさん使うと思ってな。」


それを言うとルアは納得したような表情を浮かべた後に、恥ずかしそうな、嬉しそうな表情をした。


「ありがとう。タイチ!嬉しいよ。指輪本当に大事にするね?」


「…そうか。それなら良かった。」


ルアとの会話が終わった後に俺とルアはそれぞれ作って欲しい武器を言った。


「そんなもんでいいのか?」


「あぁ、それでいい。鉱石は全部じいさんにやる。俺が持ってても意味ないからな。」


「1週間の時間をくれ。」


「1週間でいいのか?」


「お主らの武器を優先して作るなら、それぐらいで十分じゃ。それにこんなに珍しい鉱石があれば楽しみで仕方ないわい!」


「…そうか。なら今日はこの黒い武器だけもらうぞ?」


「あぁ。そうしてくれ。金も1週間後でいい。この店の裏に庭がある。そこで試し振りしてから帰れ。それとその武器に名前をつけとけ」


「名前?この武器の銘はないのか?」


「ないわい。お主が使うんだからお主が考えればいい。」


「……そうか。ならこいつは『クサナギ』だ『魔剣クサナギ』。」


日本の神話でアマテラスが授けた3種の神器のひとつ、天叢雲剣。その別名が草薙剣。そこからとった。


「それがいい。それではわしは今から作り始めるからお主は試し振りしてこい!死なんように気をつけろ!」


「あぁ。それじゃあまたな。」







後書き

簡単に予想できるかもしれませんが、どのような武器を作るのか楽しみにしておいてください。




少しでも面白い、続きが読みたいと思った方は★とレビューをください!




「君を好きになるなんて絶対にありえない!」もよろしくお願いします!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る