第35話王都①
「あ!王都が見えたわよ!」
「どれどれ〜!おぉー!おっきいねえー!」
……ようやくか。長かった。1週間もずっと質問してた訳では無い。2日目には聞きたいことはなくなってしまった。なので俺は睡眠と、魔力操作の修業のみを行っていた。ルアは王女さんと仲良くなったみたいだ。
俺が護衛を引き受けてから1回だけ襲撃があった。だが、これはわざとだ。護衛の仕事しましたっていうアピールを軽く行った。それ以外は早く進みたかったので、空間操作の範囲に入ったら、その魔物の動きを止めて通り過ぎた。
ルアは人間の街を見たのは初めてだろうな。昔は天使族中心だったらしいし。俺も帝都の全貌を見たことは無かったから、知らないが王都はとても大きく感じる。
護衛とも仲違いが起きなかったから、割と楽な1週間だった。
「護衛ありがとうございました。楽しかったわ。」
「こちらこそありがとう!私も楽しかったよ!」
王都に入ったらルアと王女さんが別れの挨拶を交わし、握手している。
「情報ありがとう、王女さん。」
「タイチさん、私には名前があります。「王女」ではなく、名前で呼んでくれるかしら―?」
「それは次の機会だ。じゃあな。それと、俺はしばらく「瞬きの宿」にいる。なんかあったらそこにいけばいると思う。」
護衛にもはっきりと聞こえるように俺の滞在場所を言う。王女に勧められた宿だ。
王女は俺が名前を呼ばないことに納得が行かない様子だったが、無視して俺とルアは別れた。
「また会えるかな?」
「気にすんな。王女っていう身分だけどまた会えると思うぞ?俺たちの泊まる予定の宿も言っといたし。」
というわけで俺とルアは王都を回り始めた。まず最初にやることは魔石の換金だ。
俺たちは文無しだからな。ダンジョンで狩りまくった魔物を売りさばく!
そのためには冒険者ギルドに行けばいいらしい。これも王女から聞いた情報。場所も把握しているので問題は無い。
「ここが冒険者ギルドか…。」
ラノベでよく出てきそうなイメージがそのまま存在しているな。中は意外と清潔というか汚くなかった。ただ、酒の匂いは激しいけど。酔っ払いも沢山いる。
入ったら酔っ払いどもの目がルアに向いた。ルアは気にしていないようなので俺も無視する。受け付けのカウンターを見つけたので、真っ直ぐにそっちに向かう。
「こんにちは。…初めて見る方ですね。冒険者登録ですか?依頼ですか?」
受け付けの女性は耳が長かった。エルフだ。…帝国と神聖国では亜人は奴隷扱いとなる。王国だけは奴隷を禁止しているから、比較的に亜人が多い。だからといって亜人に王国民は嫌悪感を覚えない訳では無い。宗教の問題だな。
「あぁ。俺たちの冒険者登録と買い取りをお願いしたい。」
「……」
エルフの女性は驚いた様子だった。俺、変なことしたか?
「どうした?」
「珍しいですね。亜人を見ても嫌な顔をしない人間なんて。」
「…そうか。亜人と人間に差なんかないだろ。」
「…そうですか。」
エルフの女性は笑っていた。俺からしたら人間の方が醜いぞ。
「それよりも冒険者登録を頼む。」
「は、はい。それではこちらに名前と職業をお書き下さい。」
渡された紙に言われた通りに書いた。が、俺は職業を剣士に、ルアは職業を魔法使いにした。
俺は無職なんて書いたら死んだはずの御使いだとバレてしまうから。ルアは熾天使なんて書いたらどんな事態になるか予測できないから。
「それでは冒険者ギルドについて説明致します。」
説明を纏めるとこんな感じ
・冒険者同士の争いにギルドは介入しない。ただしギルドに損害が発生する場合はその限りではない。
・クエストを失敗すると違約金がかかる。
・ギルドカードが紛失した場合再発行は可能。しかし、お金がかかる。
・一年間クエストを受けない場合は冒険者の資格を剥奪する。
・冒険者ランクというものがあり、上から順にS→A→B→C→D→E→F という順番。ギルドカードには色があり、これは冒険者ランクと対応している。上から順に
金→銀→銅→黒→赤→青→白となっている。
俺たちはFランクからのスタートとなる。
・クエストには適正ランクがあり、冒険者ランクと同じように判別される。冒険者は自分の1つ上のランクまで依頼を受けることが出来る。
・Bランク以上になると緊急クエストの参加が、義務付けられる。
「説明は以上です。疑問点はございますか?」
「俺たちは今金がないんだ。だから先に魔石と魔物の素材を売ってからギルドカードを作りたいんだが大丈夫か?」
「それなら問題ございません。先に魔石等を換金致しますので、提出していただけますか?」
そう言われたので、俺は小さな袋を出し、そこから魔石を出す。
「アイテムボックスですか…」
この世界には異空間収納と同じような魔道具があると王女から聞いたので、袋の中に異空間収納を開いてアイテムボックスに見えるようにした。
袋から止まることなく、魔石と素材が出てくる。
「ち、ちょっと待ってください!こんなに!?」
エルフの受付は驚いているようだが、まだ3分の2ぐらいしか出てないぞ?
この光景には他の冒険者も驚いているようだった。酔いが覚めている奴もいるな。
「おし、これで全部だ。」
ふぅ。別に負担に感じることは無いが異空間収納の中身が少なくなって軽くなったように感じる。
「か…鑑定致しますので、しばらくお待ちください…。」
ということでエルフの女性はカウンターの奥に行ってしまった。
「エルフの人、驚いてたねー。」
「そうだな。他の職員と協力して運んでても重そうだったからな。」
あの量なら鑑定は長引くだろうな。ということで俺とルアは2人で雑談もといイチャイチャしていた。
「おい!そこのガキ!」
なんか急に声を荒らげる酔っ払いが来た。うるさいなぁ。俺は久しぶりにルアとイチャついてるのに!
「タイチ!このあとどうするの?」
「俺的にはまず武器を揃えたい。その後服でも見に行くつもりだけど、先に服を見るか?」
「ううん!先に武器でいいよ!」
ルアの笑顔は素晴らしいな。めっちゃ可愛いわ。
「おい!そこの白髪のクソガキ!」
さっきからうるせぇな。誰のこと言ってんだよ。
「お前だよ、お前」
俺の頭を掴まれてようやく俺の事だとわかった。たまに自分の髪が白髪だって言うこと忘れるんだよな。
「何の用だ?」
俺の頭を掴んできた筋肉でかためられた巨漢の手を払ってルアから目を離して、そいつの方をむく。
「てめぇ、何イカサマしてんだ?」
「イカサマ?なんのことだ?」
「とぼけんなよ?さっきの魔物の素材のことだよ。あんなに大量なわけないだろ?」
「知らん。イカサマなんかしてない。それにそれはお前に関係あることなのか?」
俺は今すごく不機嫌だ。ルアとの会話を邪魔されたからな。だからといって簡単に手を出したりしないが。
「て、てめぇ。俺が誰だかわかってないようだな。俺はCランク冒険者のハッスルだぞ!」
それがどうしたレベルだな。名前を言われたからって怖気付くと思ってるのか?俺はお前の名前なんて知らないから意味が無い。
「おぉっ?今更怖気付いたか?だが、無駄だ。さっきまでの俺への無礼がなくなると思うなよ?」
俺が沈黙したから、俺が怖気付いたと思ったのか?阿呆なのか?
「だが、今ならそこの女を俺によこせばさっきまでのことをなかったことにしてやるよ。」
そいつがルアを下卑た目で見た。俺は何も言わずただハッスル?の前に立った。
「おぉ?なんだやる気か!舐めん……がっ!」
俺はただその場でジャンプしてマッスル?の顔面に横蹴りを入れた。もちろん手加減してるがな。だが、確実に気絶はしてる。本気でやったら死んでしまう。ルアを気持ち悪い目で見たやつを簡単に殺す訳には行かない。
「彼我の差くらい悟れ。」
それだけ言ってからもう一度腹に蹴りを入れてアックス?を入口に吹き飛ばす。冒険者ギルドの入口を突き抜けた。
「…まだ俺たちに何か言いたいことがあるやつはいるか…?」
威圧をかけながら他の冒険者に質問するが特に問題は無さそうだ。ゆっくりと元いた椅子に座ってルアの方を向く。
「…かっこよかったよ、タイチ。ありがとう。」
「どーいたしまして。…でもルアがやっても変わらないだろ?」
「そういうことじゃなくって!私を助けるために動いてくれたのが嬉しかったの!」
そうか。それならば良かった。
「…タイチさん?先程冒険者ギルドのルールを説明致しましたわよね?」
後ろを見ると、鑑定を終えたのかエルフの受け付けがいた。怒っているようだな。
「もちろん覚えてる。冒険者同士の争いにギルドは介入しない、ただしギルドに損害が発生する場合はその限りではない、だろ?」
「ならあれはなんです?」
エルフが指さした方向は…俺が筋肉を蹴ったことで壊れた入口だった。ギルドの損害だな。
「いや、あれは違うんだ。受付の職員さん。」
「何が違うのでしょうか?それと私はエフィーです。」
「エフィーさん違うんだ。あの筋肉がルアを気持ち悪い目で見てたし、あいつが喧嘩ふっかけてきたから。」
そこでエフィーは他の冒険者の反応を見て、俺が嘘を言ってないと判断しているようだった。
「はぁー。わかりました。今回は扉の修繕費の2割をタイチさんに、8割をハッスルさんに払っていただきます。それより鑑定が終わりました。こちらへ。」
俺も払うのかよ。まぁ、いいか。これでルアからお礼を言われたと思ったら安い。
ということでエフィーについて行った。
ルアは俺の方を見てニヤついていた。
「鑑定の結果ですが…魔石、素材を合わせて金貨100枚で買収させていただきます。」
「「「「金貨100枚!!?」」」」
酔っ払いの冒険者共がいっせいに声を上げた。金貨100枚は換算すると約100万円だ。一気に金持ちになったな。
「当ギルドと申しましては現在金貨50枚までここでお渡しして残りは後日ということにしていただきたいのですが…?」
「あぁ。それで構わない。よろしく頼む。」
「ありがとうございます!」
ということで金貨50枚を受け取った。重さがしっかりしてるな。
「ところで、この魔物はどこで倒したのですか?」
「企業秘密だ」
エフィーさんが質問してくるが、答えるつもりは無い。ラギルダンジョンの底です!なんて言ったらパニックだ。まず信じてもらえるなんて思ってないけど。
あとはギルドカードを作った。血を1滴垂らすと完成らしい。色はもちろん真っ白だった。
それが終わると用は無くなったので、冒険者ギルドを出た。
後書き
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