第34話遭遇
ルアに膝枕をされて一眠りしたあとは2人で移動していた。もちろん魔法を使って走っている。
ここが王国ということはわかるが、それ以外のことは全く分からない。なので、目標は人を見つけること。その人に王都の位置を聞く。
王都に行ってダンジョンの魔石を高値で売りたい。金がないからな!
ルアは探索魔法を、俺は空間操作の異変に集中している。探索魔法は魔力を薄く広げるような感覚で使える無属性魔法だ。おれは、空間操作で問題ないので覚えていない。
「っ!ルア!見つけたぞ!情報源だ!」
今は森にいるのだが、ようやく俺の空間操作の範囲に人らしいものが引っかかった。
ヤバいな。魔物に襲われてる。何人か死傷者までいる。このまま行けば魔物に蹂躙されるだろう。普段なら助けないが今回は別だ。
「ルア!俺は先を急ぐ!情報源が死にそうだ。」
「すぐに追いつくよ!」
というわけで俺はゲートを使って移動する。
どうやら馬車を守るように騎士が3人いる。相手はオーク、2mぐらいの二足歩行している豚の魔物だな。それが3匹。
「俺の情報源に何してくれてんだァ!」
俺はオークを2匹ぶん殴って1匹は思いっきり蹴る。それで死んでしまった。
ダンジョン内の魔物との差が激しいな。あのダンジョンが異常だったのか。
「タイチー!」
お!ルアも来たようだな。
「我々の窮地をお救い頂きありがとうございます。」
急に馬車から高そうなドレスを着た女性が俺に向かってお礼をしてきた。
ふむ。当たりだな。格好からして貴族…。ならば、聞きたい情報を山ほど持ってるだろう。勇者関連の情報とかな。
「王女様!お戻りください!」「まだこいつが何者か分かりません!」
ふむ。王女……だと?
「彼らは私たちを救ってくださった恩人よ。信じましょう。私はレルス王国第2王女、エマ・ファン・レルス。あなたのその腕を見込んで1つお願いがあるのだけれど…」
王女か…。帝国でのことが頭によぎるが、すぐに打ち消す。王女となると国家機密の情報を持ってるかもしれない。それを教えてくれるはずはないが。
とりあえず大当たりってことだ。
「俺はタイチだ。こっちはルア。俺の仲間だ。それでお願いとは?」
「貴様!王女様に向かってその口の利き方はなんだ!無礼だぞ!!」
んなもん知るかよ。それこそ恩人に向かって無礼だろ。
「気にしないわ。」
王女のその言葉で騎士も渋々だが、黙ってくれた。俺の方を睨んではいるがな。
「あなた達に王都まで私たちの護衛を頼めないかしら?」
「条件付きならいい。」
「条件とは?」
「俺たちの知りたい情報を教えろ。」
「わかったわ。交渉成立ね。」
契約成立だな。騎士の方はずっと俺を睨んでる。そんなに敵意があるなら殺してしまいそうになるんだけどな。そんなことしたらせっかくの情報がなくなってしまうので殺らないけど。
「悪いな、ルア。勝手に決めちまって」
「ううん。別にいいよ。私はタイチにずっとついて行くから。」
そう言って俺に微笑んでくれた。可愛いわぁ。
「それではこちらでお話しましょうか。」
「エマ様!それはいけません!」
「情報を教えるなら私からゆっくりとお伝えするわ。それが条件のはずよ。」
というわけで俺とルアは王女に案内されて馬車に乗り込んだ。その時に騎士からは思いっきり睨まれたが、無視した。
それにしても、王女の護衛だと言うのに人数が少ない上に少々弱くないか?オーク3匹に全滅しそうになるほどの強さでいいのか?この国の王女なんだろ?大事なんじゃないのか?
「先程は私の騎士が失礼いたしました。」
「いや、いい気にするな。それよりも聞きたいことが山ほどあってな。」
「ええ。なんでもどうぞ?」
改めて王女を見る。長い銀髪に整った容姿。この国の人は美しい人が多いのかな?偏見だが、帝国の皇女よりは全然美しいと思う。
「現在の勇者について知ってることは全て教えろ。」
「…分かったわ。1ヶ月ほど前に御使い様の1人が事故で亡くなったというお話はお聞きになられたかしら?」
「……一応な。」
俺のことだな。あの時の王角の言葉通り俺は事故死扱いになっているらしい。全くふざけた話だ。ルアの方の視線が厳しくなっている。俺はルアの頭を撫でて落ち着かせる。ルアは1度俺の方を見てから、ふにゃんとした表情を浮かべて落ち着いた。効果てきめんだな。
「その後、帝国、王国、神聖国の3国と御使い様の話し合いにより、主に3つのグループに別れたわ。1つ目は非戦闘派。このグループは魔人領から1番遠い神聖国に移ったわ。聖女の清水様が筆頭ね。2つ目は訓練派閥。このグループは主にこの世界にある八大ダンジョンを巡り、レベルをあげることを目的としてるわ。そして最後が戦闘派閥。このグループは魔人との戦いに加入して、魔人の撃退を目的としているわ。訓練派と戦闘派は一定周期で入れ替わっているの。勇者王角様もそちらになるわね。」
…非戦闘派ねぇ。俺が死ぬ前にそんなものができる気配が感じなかったことを考えると帝国のクズ共はここまで考えていたのか。俺が死んだことで音を上げるやつが出ることは明らかだからな。そこまで俺を殺したかったか。
「………賢者の住野様は現在どこのグループに所属しているか知っているか?」
「ええ。賢者様は今はラギルダンジョンでレベルを上げておられるわ。御使い様の中では勇者様の次に強いと思われております。」
…そうか。出来れば非戦闘派閥にいて欲しかった。ダンジョンで戦うことも、魔人と戦うことも命のやり取りが発生する。それは必ずしも住野さんが勝つとは限らない。俺は今は会うつもりは無いが、いつか果たした約束は果たそうとは思っている。
ルアが俺の方を睨んできたが、目を逸らした。
「…気になるの?」
「…………………少しな。」
ルアはぷいっと顔を逸らしてしまった。嫉妬してしまったか。それでも俺の頭撫でからは逃げようとしない。そんなルアも好きだけど。
「ルア、愛してる。」
ルアの耳元で王女には聞こえないように小さな声でそうつぶやく。
「………ん」
俺の方を向くことはなかったけど、耳まで真っ赤になっていることがわかった。
「…んっん!あなたたちは何をされているのかしら?」
急に王女からの質問が来た。わざとらしく咳き込んで。
「俺たちは旅人だな。」
咄嗟にでた言い訳がこれだった。まぁ、あながち間違いじゃない。
「ふふっ。面白い人ね。」
聞いた話によると王都まで1週間はかかるらしい。ダンジョンを出てから初めてゆっくりと過ごすことができそうだ。
後書き
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