第33話競走

水浴びを行った後はルアが魔法で温風を流してくれて、頭をかわかした。


とても心地よかった。


「そうだルア。ルアの羽って他の人に見えないように出来るか?」


ここからは人と接することが多くなる。この世界に天使族はもう居ない。ならば、きっとルアは目立つ存在になってしまう。そうなればどんなことが起きるか想像つかないからな。


別に出来なければ亜人ってことで突き通すが。


「出来るよ!ほいっと!」


何とルアの羽が見えなくなったのだ。背中を見るがない。


「どうしたんだ?」


「えへへ。魔法を使ったんだよ!変身魔法!」


変身魔法は魔力を使うことで自分の姿を変えることができるらしい。使ってる間は常に魔力を使うんだと。今のルアなら大したことないけど。諜報とかするのにすごく便利そう。


しかも無属性魔法!俺は実戦のための無属性魔法しか帝国で教わらなかったから、知らなかった。後で教えてもらおう。


「ねぇねぇ、どうやって王国まで行くの?」


もっともな疑問だな。この世界に車なんてない。移動するなら、徒歩か馬車だ。馬車で行くにしても何日もかかるだろう。一刻も早く王国に行きたい俺はそんなことをしてられない。ならば!


「走る。魔法を使って」


魔法を使って走る以外にないだろう。俺とルアの魔力はかなり多い。身体能力強化を使って本気で走ればすぐに着くだろう。さながら、あの蜘蛛の時のように。


ブルルっ!もう思い出したくもない!


「ふ〜ん。じゃあ!競走しようよ!」


「競走?どういうことだ?」


「簡単だよ。王国にどっちが早くつくかの競走!魔法を使ってね!」


なるほど。それは面白いな。


「いいぜ。けどいいのか?俺の方がレベル高いし、敏捷も上だぞ?」


これなら魔法を使えば俺の方が速いのでは?と思ってしまう。


「全然いいよ!蜘蛛と出会った時、私の方が速かったでしょ?だからそれはハンデだよぉ。」


随分と余裕そうだな。自分の勝ちを疑ってないようだ。秘策でもあるのか?


「どんな作戦があるのかは知らないが、全力で勝ちに行くぞ?」


「そうこなくっちゃ!それじゃあ、負けた方は罰ゲームね?」


「罰ゲーム?いいけど何にするんだ?」


「負けた方が勝った方の言うことをなんでもひとつ聞く!これでどう?」


なんでも…か。ルアにして欲しいことは沢山あるからな。負けられないな。


「いいぜ。その勝負のった!」


この後にルールが決められた。


ゴールは国境付近の塀を超えたらゴール。そこで目立ってはいけないので、塀が見え始めたら飛ぶこと。まぁ、バレなければOKだ。スタートはここから。いきなり森林地帯で難しいが面白い!町や、村は空を飛んでバレないようにすること。ルアは羽を使ってOK。


「それじゃあ、行くよ!!」


「ああ! 」


「「よ〜い!!」」


俺とルアが走る体制になる。俺に限ってはクラウチングスタートだ。本気だからな。


「「どん!!!」」


その瞬間に身体能力強化を全力にしてスタートを切る。土はえぐれて砂埃が周囲を包む。そんなことはお構い無しに本気で走る!スタートダッシュは俺の方が速かった。森の中でも若干だが、俺の方が速い!このまま行けば勝てるだろう。


しかし、森林を抜けるとルアの方が速かった!あっという間に抜かれてしまう。


なんでだ!?と思って義眼でルアを見て気づいた。ルアは足に風の魔法を使って踏み込んだ時に風でさらに加速している。それに体も軽くなるようにしていて、追い風まで吹かせている。


ベクトルで見るとすぐに分かる。便利だな。


それにしても、ルアのやつかなり魔力使ってるな。本気のようだ。それにやはり魔法の使い方が面白い!俺では思いつかなかった。


だが、このまま負ける訳には行かない。タネが分かればな!距離はどんどん離されるが、まだ逆転可能だ!


「ゾーン!」


空間操作で、俺の足裏に空気を集めて踏み込む時に思いっきり解放させる。それをベクトル操作で俺の進行方向に一直線にさせる。


これはルアの魔法の真似だ。さっきルアを見て閃いた。


これなら少しだけ俺が速い!すぐにルアの姿が見えてきた。勝てる!そう思った。しかし


「面白いね。魔法の使い方!でも、まだ甘いよ!」


ルアが俺ほうを振り返ってそう言った。その瞬間に


「何っ!?」


土の状態が変化した。急にすごく柔らかくなったのだ!これでは上手く走れない!


さらに俺が進む先に地面から岩が出現する。


クソっ!!こういう魔法はベクトルで操作出来ないんだよ!


これをわかった上でルアは魔法を行使しているのだろう。


さらに距離を離されてしまった。だが!甘いぜ!ルア!!


俺には奥義がある!こうなったら魔力度外視だ!


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


Sideルア


私はタイチに土属性の魔法を使って足止めさせた。その隙に風魔法で私の体をサポートして本気で走る!


タイチが見えなくなってからは羽も使う!羽があった方が走りやすいし、飛びやすい!かなり走ったから、もうすぐで塀が見えると思う。


ここまで町も村も人が住んで居そうな場所はなかった。ならここからもないだろう。


タイチは気づいてないけど、タイチには常に向かい風が吹いている。もちろん私の魔法だ。


えへへー!タイチにはどんなお願いを聞いてもらおうかな〜。


私は自分の勝ちを疑ってなかった。途中でタイチが私と似たようなことを時空魔法でした時は驚いたけれど、タイチが何かすることは想定内だ!


そんな愉快な気分で走っていると、


「待ちやがれ!!!ルア!!」


なんと!!後ろからタイチの声が聞こえた!ちらっと見ると本当にタイチがいた!


まさか追いつくとは!!


けどまだかなりの距離がある!それにそろそろ塀だって本当に小さくだが見える。


このまま行けば私が勝てるとは思う。けど、ここまでどうやって追いついたのか分からない以上危険だ!


何をしたかは分からないが、単純な速さ勝負ではタイチに勝つことは難しいだろう。


ならもう一度!!妨害だ!!


「マッドスポット!!」


これは大地の状態を泥にして、相手の動きを閉じ込める魔法だ。さっきも使ったが、これなら空間操作でも何とかならない!


しかし、


「ゲート!!!」


タイチはそこを踏む前にゲートで飛び越えていた!


しまった!忘れていた!タイチには移動するのに最適な技があったことを!これでは妨害をゲートで通りこされてしまう!でも距離がまだかなりある!これならいける!


そう思って私はタイチへの妨害をやめて私を走るために支える魔法に全力を注ぐ!


「ゲート!!」


タイチはゲートを駆使してどんどん私との距離を埋めてくる!でも、私だって負けない!


「「うぉぉぉぉぉ!!」」


私もタイチも、全力で走る!そして、私たちは並んでほぼ同時に地面を蹴って塀を越えるために宙を舞う!!


空中なら、私の方が速い!私は羽があるし、風魔法で加速できる!


勝った!!


「甘いぜ!!ルア!時間加速クロノアクセル!!」


なっ!!タイチが速い!


時間魔法だ!!


タイチが、私を抜いた!!


このままじゃ、負ける!!かくなる上は!


ごめんね?タイチ!


「雷霆!!」


直後ドーン!!という雷が落ちた音がする。もちろん私がした。


「なっ!!?マジか!?そんなのありかよ!!」


反応出来なかったようで直撃してしまった。でも、今の魔法耐性の高さとHPの高さなら余裕で耐えると思う……。……多分。


でも、おかげで時間魔法が解除された!その隙に!!


もう塀は飛び越えている!後は地面に着地するだけ!!


「まだだ!ルア!!俺が諦めるときは今じゃない!!」


雷の黒煙からタイチが出てきた。


嘘っ!?しかもその言葉、使い道間違ってない!?


でも、雷で痺れて動けないはず!なら私の勝ちだ!


「限界突破っ!!!」


そこまでする!?ダンジョン内でだってドラゴンとの時しか見てないよ!?


でも、それなら痺れていても動ける!タイチが白銀のオーラを纏って空中を蹴って私を追い抜こうとして来る!


「うぉぉぉぉぉ!!」


「うにゃあああああ!!!」


ドンッ!!!


ほぼ同時に地面に着いた音がする。他の人が見たら引き分け!と言うだろう。しかし、


「クッッソーーー!!!」


「やっったーー!!私の勝ちーー!!!」


刹那の差であったけれど私の方が速かった!!


危なかった。


タイチはそのまま大の字になって空を眺めていた。そのまま私に話しかけてくる。


「普通に考えて雷霆まで使う?」


ウッ!! 仕方ない!だって負けそうだったもん!


「でも、それを言うならタイチだって限界突破使ってたじゃん!」


「雷霆使わなかったら使ってなかったわ。」


それを言われると弱い。でも、ルール違反ではない!


「じ、じゃあ、お互いの言うことをひとつ聞く!それで雷霆のことを無しにしよう!」


タイチはお願いを聞いてくれるし、私がタイチがどんなお願いをかなえても私は幸せだと思う!


うん!得しかないね!


「分かった。ルアのお願いはなんだ?」


「私は……まだ決まってない。決まったら叶えてもらうよ!タイチは?」


本当はえ、エッチなお願いでも叶えてもらうかなって思ってたけど、タイチが言うかもしれないからやめた!


「うん?おれか?俺は決まってる。」


決まってるんだ…。やっぱりエッチなお願いかな…?緊張する。






「ルアに膝枕されながらゆっくり回復魔法かけてもらいたい」


「…」


ううっ〜!期待してたのに!乙女の純情を踏みにじるなんて!でも、タイチらしい!そこがいい!


「分かったよ。ほら!おいで!」


私は膝枕の準備をして、自分の太ももを叩く。すると、ゆっくりタイチは私の方に来た。


タイチが私の太ももに頭を置くと、私は回復魔法をかけ始めた。


「なんで膝枕?」


「いや、ほら、一番最初にルアと出会った時に膝枕してもらったろ?あれが忘れられなくて…。」


嬉しい!あの時はどうしたらいいのか分からなかっただけだけどね。


「ありがとう!私の太もも好きなんだね!」


「いや、そうなんだけどそんなにはっきりという!?それに雷で結構ダメージ食らったからだ。」


ウッ!私の心にダメージが。私のせいだけど!


「ご、ごめんね!?あの時本当に負けると思って…それで!」


「別に怒ってねぇよ。パートナーの力を改めて知って頼もしいと思ったし。それにあれは避けることが出来なかった俺が悪い。油断してた。」


自分のせいにまでするとは…。優しい。


私はタイチの頭を撫でながら話を変えることにした。


「私、てっきりタイチはえ、エッチなことにお願いを使うんだと思ったよ。」


「ウッ!いやそんなことには…使わない。うん。多分。」


動揺した。使うつもりはない訳ではなかったのか。うう〜!嬉しいけど、恥ずかしい!


い、いつかそんな日が来るのかな…?嫌じゃ全くないけど!


私もどんな願い事を叶えてもらおうかな〜って考えてたら私もタイチも寝てしまっていた。





後書き

レルス王国到着です!


一瞬で帝国を出ました。


少しでも面白い、続きが読みたいと思った方は★とレビューをください!


「君を好きになるなんて絶対にありえない!

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