第13話ドン底

真っ暗闇の中火の灯火がどんどん小さくなり見えなくなってくる。現在進行形落下中の司馬太一は何も抵抗する気が起きず、ただ途轍もない落下感に身を委ねていた。


ここまでのことを思い出し、もう一度目を開けた。そして、ちらっと下を見ると、地面があるように思った。




俺は、覚悟を決める。何もしないまま落ちて一瞬で死ぬ方が楽かもしれないが、俺はまだあいつらに復讐していない。それまでは死ねない。




残りの魔力を全て身体能力強化に使う。そして、目を閉じる。




ドンッ!!!!




「がはっ!」




地面にぶつかる音がした。それに伴い血反吐も飛び出る。内臓が壊れたのだろう。ゆっくりと目を開けて自分の状態を確認する。




全身骨折で、指も動かすことが出来ない。背中から見たことも無い量の血が出ている。体が寒い…




ははっ…賭けに負けたようだ。そう思うと




「あっはっはっははははは!!」


笑けてきた。もう全てが馬鹿らしい。俺が「無」職なのも、この世界のこともクラスのことももう全てがどうでもいい。




あぁ、今になってようやくわかった。この世界の絶対のルールを理解した。




この世界は弱肉強食なんだ




アイツらがどんな手を使おうと、勝ったアイツらが正しく正義で負けた俺が、悪なんだ。




あぁ、なんだ簡単なことじゃないか。そう思えたらこの死を受け入れるのも何ら難しいことじゃない。




でも、たとえ…そのルールが正しいのだとしても…




「力が…欲しい…」


俺はこの世界に来たくて来たわけじゃない。「無」職になりたくてなったわけじゃない。理不尽じゃないか…




俺だけ力がないなんて…




この世界に来てからずっと考えないようにしていたけれど、時折ふと頭を横切る。「どうして、俺にはなにも与えられなかったのだろう…」




俺にもあいつらのような力があれば、一緒に戦えただろうか?仲間と認めて貰えただろうか?


こんなことを考えたくなかったからおれは、この世界で知識を蓄えた。少しでもあいつらの戦「力」になれるように。




でも、もうあいつらに認められるような力はいらない。




ただ、純粋な戦う力が欲しい。




あいつらに復讐できるような…




どんなに理不尽からでも俺から何も奪われないような…




そして、全てを失ってドン底にいる俺がこの弱肉強食の世界で成り上がれるような…




そんな、戦う力が欲しい…


そう思ったら叫ばずにはいられなかった。最後の気力を使い、叫ぶ。




「俺に…力をよこせぇぇ!!!!」




それで何かが変わることなんてないことはわかっていた。




そして、目を閉じようとした………が、




《対象者、異世界人司馬太一の力への渇望を確認。これにより全ての条件を満たしました。対象者の覚醒を開始します。》




はは、とうとう幻聴まで聞こえてきた。しかも何を言っているのか全く分からない。対象者?進化?




そう思っていると、身体に変化が現れた!




「グッ!!がっ…!!がっ…ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!」




身体中の血液が逆流したように感じ、身体が雷に打たれかのような衝撃が全身を襲い、呼吸すら許されない!体が中と外から同時に壊されるような痛みに襲われるが、抵抗することもできずただ耐えるしかない!




痛みで悶絶する中、俺はおじいちゃんのことを思い出す。






後書き

更新が遅れてすみません。




実は先日作者のスマホが水没致しました。耐水性もない古いもので、新たなスマホが届くまで更新できませんでした。感想の返事遅れて申し訳ございません。




感想、レビュー是非ください!


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