曇りの温度

 家の外は晴れているのかそうでないのかすらも分からないぼやけた明かりがカーテンの間から差し込む。


 部屋の中は濡れた洗濯物が干されているため湿度が高くじめじめしている。


 湿度のためか少し息苦しいため窓をあけた。


 そして気づく、


今日は灰色の空だ。


 窓から顔を出して外の様子を確かめるが残念なことに外も湿度が高く無風であり、部屋の中と大して変わらなかった。


 冷房をつけてしまうと少し寒くなってしまうような温度の部屋に少しでも外の涼しい風を入れたかったのだが残念だ。


 私は人工的な風には敏感で、クーラーは少し苦手、部屋が冷えすぎると頭がキーンとしてしまうし直接風が当たるのもできるだけ避けたい。この頃は室温調整にてこずり、苦労をするものだ。


 しかし今は少しだけ涼しさが欲しかったので仕方なく窓を閉めてクーラーを着けた。


 最近クーラーはつけっぱなしの方が節約できると聞き、少し寒いと思ってもなかなか消せないでいた。消したとしてもまたしばらくしたらつけたくなってしまうからだ。しかし、寒いのは嫌だしどうにかならないだろうか。


 曇り空のため部屋は薄暗く、昼間でも照明が必要なほどであったので電気をつけた。青白い光が一気に目の中に入り込み少し目がくらんだ。


 こうも家の中に居続けると時間の感覚も失われてしまう。そのような状況でこの天気だ。今は昼頃なのに日が沈みかけの時間帯のようだ。


 曇りの時は私の気持ちも空と同様に灰色になる。頭は痛くなるし、何をするにもだるいし、そして、人のぬくもりが恋しくなってしまう。一人は好きで、楽であるがこればかりはどうしようもない。


 少しでも寂しさをごまかそうとラジオを流す。


 そしてクーラーも効いてきた。やはり少し肌寒い。早く何にも頼らなくても快適に過ごせる気温の季節になってほしいものだ。


 お昼になったので私はキッチンに向かう。今は温かい食事を食べたい気分だった。


 食事を食べ終えるといい感じに胃が満たされ、体の芯からじんわりと温かくなってきた。


 となると次に来るのは眠気。頭がぼーっとしてきて活動エネルギーを奪っていく。


 何もない一日、たまった疲労を解消するためだと私は自分に言い聞かせそのままベッドに横になる。そして電気を消し、クーラーも消した。


 部屋の中は再び暗くなり、静けさも増した。しかしそのおかげで気づく。


 雨だ。


 外で雨が降っている。サーッと雨が降ってくる音とパラパラと雨が屋根に打ち付けられる音が聞こえた。それらの音はぼーっとしていている私には心地よい音に聞こえ一種の催眠効果があるように私をリラックスさせた。そのまま私は目を閉じ深い睡眠状態へと落ちていった。


 どのくらい時間がたったのかわからないが寝ているとどうも暑くて寝苦しくなってしまった。かけていた布団を蹴飛ばし、ほぼ無意識にクーラーのリモコンに手を伸ばしていた。そしてクーラーをつけるとすぐさま冷たい風が部屋全体に広がり部屋の温度を下げていった。となるとやはり直接風が当たるのは苦手なので布団をかけ戻す。そしてほどよい温度を見つけ、暑さと寒さから解放された私は再び深い睡眠に入る。


 自然と目を覚まし昼寝を終えた私はほぼ無意識に体を起こす。部屋の中は寝る前とほぼ同じ暗さで現在時刻の予想すらできなかった。


 体の疲れは取れたもののまだ頭はぼーっとしていた。時計を見るともう夕方であった。


 部屋の明かりをつけたが青白い色は少し目にきつかったので暖色へと変えた。


 相変わらず外は灰色であったが、私の心はいま温かみのあるオレンジ色であった。


 

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