第19話 ここをお家とします!
ユサ ユサ
男性はぐっすりと眠っていたのか、身体を強く
「わ!わ、寝てないよ!?」
いやいや、おじさん…かなり
というツッコミを私は入れたかったが、ぐっと
「初めまして。私はユメと申します。オルデンブルク
ここミューレンの町は
おじさんは大
ポツンと残された私だったが、数分すると
こういう時、スマホが無いのは
スマホに代わる通信魔法ってないのかな…?落ち着いたら調べてみよう。
はぁっはぁっ
二人とも息があがっている。慌てなくてもいいのに、かえって申し訳ない気持ちになる。
「お待たせしました。ミス…えっと…」
「ユメと申します。
「いえ、こちらこそ失礼しました。私は町長の屋敷で身の回りの雑務をしております、ライアンと申します。その…本日のご用件は何でございますか?」
ふむふむ。こちらのお兄さんはライアンさんというのね。
「あの…私はアレクサンドラ先生の弟子として、こちらで
「かの
おじさんも一緒について来たそうだったが、しぶしぶ警備の仕事に戻り、私はライアンに案内されて町長の家に向かった。
町長の家は町の中でも山側に近く、立派な3階建ての
壁はレンガ造りで
このレンガと
一見似たような建物だらけで道に迷いそうだが、鉄製の窓枠には家々の個性が出ているので、慣れたら大丈夫そうだ。というか、きっと大丈夫だろう。なにせ知力
家の応接間に案内されると、そこには町長さんが先に座っていた。
軽く
「こちらが
そう言って私は町長に書類を見せた。
「確かに、アルスベルド・オルデンブルグ
町長さんは、てっきりお
前世の日本では女性の町長って、ほとんど記憶にない。どうも私にはまだ前世の日本の
しかし私は今から
「ありがとうございます。町長さん。」
「そんなに
「はい、フリーダさん。あの、早速質問があるのですが…」
「なんでしょう?」
フリーダは
「この町に不動産屋さんはありますか?
この町に住むからには、まずは生活の
…ところで、この世界にも不動産屋さんってあるのかな?
「不動産屋はないのだけれど、空き家は私の方から紹介できますわ。ちょっと待ってね。」
そう言うと、フリーダ町長はハンドベルを鳴らした。
「お呼びでしょうか?」
隣の部屋で待機していたライアンが現れる。
「ライアン、確かノアさんご夫婦が娘さんの町にお引っ越しされたので、家が空き家になっていましたよね?」
「はい。私どもで空き家の管理をしております。」
おそらく…だけれどこの異世界、不動産屋はあっても、ミューレンの町ではそれを
「
「はい。まず、家賃は不要とのことです。ただし、家具には思い入れがあるので、壊れて使えなくなるまでは捨てないで欲しい、というご要望でした。建ててから30年以上経っているので、リフォームは必要であれば構わない、とのこと。以上になります。」
ライアンは
「それは
聞くところによると、ノアさんはこの町の薬屋さんだったらしい。いわゆる
私にとってはまたとない超優良物件なのだけれど、薬屋としての
物件は町長の家から20メートルほど坂を下ったところにあった。
ちょっとした商店街の中にある物件で、出入り口は北側だった。もしかしたら、直射日光で薬が変質しないようにとの
築30年以上とのことだが、中に入ると清掃が行き届いており、とても
自宅スペースの水回りは意外にも近代的とさえ思えるほど水道が行き届いていて、それをキッチンやトイレ、お風呂などに利用していた。ここミューレンはホルン山脈から豊かな水が流れてきており、それを各家庭に引き込んでいる。
驚いたのは、下水道も整備されていたことだ。
2階には部屋が3つ。家の南側には、広めの庭までついていた。洗濯物を干すのに良さそうだし、家庭菜園なんかもできそうだ。
庭には人の高さほどの細長い倉庫のようなものがあった。ライアンに何なのか尋ねると
見れば見るほど素敵な家。
迷うことなく、ここに住むことを決めた私は、町長の家に戻って、手早く契約の手続きを済ませ、ライアンから家の
女性の一人暮らし。もちろん
ご近所さんに挨拶をしつつ、日用品を買い込んで整理していると日が傾き始めた。
今日の夕食は、町長さんのホームパーティーに招待された。私の歓迎会を兼ねて頂けるらしい。
何を着ていこうかと迷っていたら、その魔女の装備でよいと言われた。なので、特に着替えることもなく
コンコン
町長さんの家のドアについている金属の輪のようなものでノックをすると、ライアンさんが現れた。
「お待ちしていました、ユメさん。皆さんお揃いですよ。」
――え?皆…さん?
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