第34話 十二名の出場選手
【前書き】
選手名簿一覧部分はサラッと見るだけでも大丈夫です。
なんなら読み飛ばしても大丈夫。
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紋章は二〇一二年、地球がフォトンベルトに呑まれたことを契機に全人類に発現したと言われている。
当然、当時の社会は大混乱に陥った。
突如異能が扱えるようになって、全能感に支配された民衆の中には犯罪行為に走る者も多かった。
そして、勝手な正義感で周りの被害も考えずに犯罪者を取り締まる自称ヒーローも後を絶たなかった。
しかし、それらは政府の異常なまでに迅速な対応によって長くは続かなかった。
いつにない迅速な対応に、“政府は初めからこうなることが分かっていたのではないか?” “異能の存在を知っていたのではないか?” という陰謀論も囁かれたがそれも長く続かず、気づけばその噂を知る者すらいなくなっていた。
こうした経緯を以って、紋章術は資格を持った人間以外の行使を禁ずる法律が制定された。
現在、その資格を取得できるのは警察組織、自衛隊、国に認められた民間警備会社、そしてそれらに入る為の勉学に励む学園『独立行政法人国立紋章術高等専門学校機構』の生徒だけだ。
クリスによる身体検査を何事もなく無事に終えた八神は凍雲と二人で件の学校、『独立行政法人国立紋章術高等専門学校機構』略して、『紋章高専』に訪れていた。
「まるでテーマパークに来たみたい。テンション上がるなぁ〜」
“はぁ〜”、と感嘆の溜息を漏らしながら眼前に
彼女がそうなるのも無理はない。
敷地面積は東京ドーム約二十一個分。
東京の名を冠しながら千葉にある某テーマパークとほぼ同じ土地面積である。
敷地内には眼前に聳え立つ一〇階建ての巨大な校舎を始めとして、戦闘訓練や救助訓練が行える施設が一二箇所ある。
その他、学生用の宿舎が各学年ごとに一棟ずつの合計五棟。
兵器開発や薬物研究の為の施設が四箇所。
このように、広大な土地を有効活用した、実に種々折々の施設が立ち並ぶ。
「遊びに来たんじゃないんだ。浮かれるのも程々にしておけ」
「へぇ〜い」
物見遊山気分を
右から左へとお小言を受け流して、彼女は門前駐在所にいた若手男性職員へ声をかける。
「こんにちは。七夜覇闘祭の件で伺った八神と凍雲です」
「あ、八神さんですね! お話は伺っています。こちらが入校許可証ですので校内では常に首からかけるようにお願いします」
声を掛けられた男性職員は喜色満面ながらスムーズに入校許可証を用意してくれた。
彼の表情から察するにSNSでバズった八神のファンではあるが、仕事と私事を分けられるタイプの人間だったのだろう。
「あの、握手だけでも良いですか?」
そんなことはなかった。
面倒な手続きをさっさと終わらせてファンサービスをしてもらいたかっただけであった。
「いいよ。大会では私と私の教え子の応援よろしくね」
知らない人とはいえ、純粋な好意は嬉しかったので快く握手に応じる。
手際良く入校手続きを行ってくれた男性職員に手を振って別れた彼女は、凍雲を伴って校内へと歩みを進める。
◇
「そういえば、ある程度目星はついてるの?」
高専敷地内の遊歩道を歩きながら八神が問い掛ける。
「ああ。先月紋章高専ではトーナメントに出場する十二名を選出する為の予選が開催されてな。これがその予選を勝ち抜いた十二名だ」
そう言って手渡された書類には予選を勝ち抜いた十二名の生徒のデータが記されていた。
名前:
容姿:緑のソフトモヒカンの少年。
武器:槍、盾
性別:男性
年齢:17
紋章分類:偉人格幻想種
紋章:アキレウス
紋章能力:・視界に映る距離なら瞬きの間に移動できる。
・踵以外の箇所はあらゆる攻撃を千分の一まで減衰する。
・世界を内包した盾を持つ。
紋章位置:左手の甲
紋章画数:三画
特記事項:・向上心が高いが、上を見上げ過ぎるきらいがある。
名前:
容姿:199cmの高身長に加え、かなり鍛えているので実際よりも大きく見える。
坊主頭でゴツゴツとした骨格をしている。
武器:素手
性別:男性
年齢:19
紋章分類:動物格
紋章:タコ
紋章能力:タコに変身する。軟体な為打撃を受け ても半減する。毒を扱え、擬態も可能。
紋章位置:胸の中心
紋章画数:三画
特記事項:・合気道部の部長。
・戦闘よりもその軟体性を活かした救助活動を得意とする。
名前:
容姿:赤髪に染めた髪をヘアバンドで纏めている。
武器:拳銃
性別:男性
年齢:18
紋章分類:概念格
紋章:血液
紋章能力:目視した血液を操る。自身の血液は目視せずとも操れる。
紋章位置:左手の甲
紋章画数:三画
特記事項:・射撃部部長。
・彼に傷をつけられることは敗北を意味する。
名前:
容姿:黒髪短髪のスポーティなイケメン。
武器:素手
性別:男性
年齢:19
紋章分類:動物格
紋章:イルカ
紋章能力:イルカに変身できる。
通常ではあり得ない超高速で回転するエアーリングを用いた瞬間的な超加速を可能とする。
紋章位置:左手の甲
紋章画数:三画
特記事項:・水泳部部長。
・紋章高専において水中戦最強とも称される傑物。
・生来の才能に加えて幼少期から途方もない訓練を積む事でエアーリングの超加速を実現した。
名前:
容姿:黒髪ベリーショート。
武器:素手
性別:男性
年齢:19
紋章分類:動物格
紋章:シャコ
紋章能力:シャコに変身できる。凄まじいパンチ力を誇る。
紋章位置:左手の甲
紋章画数:三画
特記事項:・ボクシング部部長。
・仲間想いな熱血少年。
名前:
容姿:薄く青みを帯びた銀髪ショートの少女。
武器:素手
性別:女性
年齢:16
紋章分類:動物格幻想種
紋章:スライム
紋章能力:・スライムに変身できる。
・核を破壊されない限りありとあらゆる攻撃を無効化。
但し、身体を蒸発又は消滅させられると再生に水分を必要とする。
紋章位置:左手の甲
紋章画数:三画
特記事項:・生物部部長。
・ドイツ人のクォーター。
教育担当者【陸上自衛隊:
名前:
容姿:真ん中分けの金髪。
生意気そうな目つきをした少年。制服を着崩している。
武器:素手
性別:男性
年齢:18
紋章分類:概念格
紋章:硬化
紋章能力:全身の各部を鋼鉄以上の硬度に硬化する。
紋章位置:右手の甲
紋章画数:三画
特記事項: ・元不良グループ総長。
・風紀委員長。
・困っている人がいれば助ける義理人情を大切にする人物。
教育担当者【陸上自衛隊:
名前:
容姿:襟足を伸ばした鋭い目つきの少年。
右のこめかみに傷跡がある。常に眉間に皺を寄せている。
武器:素手
性別:男性
年齢:17
紋章分類:動物格
紋章:豹
紋章能力:豹に変身する。
紋章位置:右手の甲
紋章画数:三画
特記事項:・風紀委員副委員長。
・篠咲の不良グループで副総長を張っていた。
・過去、虐められていた時に篠咲に助けてもらい、彼の横にいたいがために共に上を目指す。
教育担当者【陸上自衛隊:
名前:
容姿:毛先が真紅なオレンジの長髪をサイドテールにした可憐な少女。
武器:素手
性別:女性
年齢:18
紋章分類:自然格
紋章:火炎
紋章能力:炎そのものとなる。炎を刀剣類の形に造形できる。
紋章位置:右手の甲
紋章画数:三画
特記事項:・ダンス部部長。
・元気溌溂とした快活な少女。
・ダンスから取り入れた軽業を得意とする。
教育担当者【陸上自衛隊:
名前:
容姿:前髪を右へ流したショートヘアの少年。メガネの奥に臨む双眸は鋭い。
武器:刀
性別:男性
年齢:19
紋章分類:概念格
紋章:収束
紋章能力:・魔力を収束することで魔力消費量が増す代わりに身体強化効率を飛躍的に上昇させる。
・空気を収束させて解除することで気流操作も可能。
紋章位置:右眼の下
紋章画数:三画
特記事項:・学生会長。
・真面目で厳格な性格。
教育担当者【陸上自衛隊:
名前:
容姿:黒髪を短く整えた美少年。
武器:刀
性別:男性
年齢:19
紋章分類:偉人格
紋章:
紋章能力:剣術無双と称される剣術。
紋章位置:右手の甲
紋章画数:三画
特記事項:・剣術部部長。
・前年度七夜覇闘祭優勝者。
教育担当者【陸上自衛隊:
名前:
容姿:ポニーテール。スラッとした手足の長いモデル体型。
武器:刀
性別:女性
年齢:18
紋章分類:概念格
紋章:遅延
紋章能力:・相手の動きをワンテンポ遅らせる。
・自身の動きをワンテンポ遅らせてタイミングをずらす使い方もする。
紋章位置:右手の甲
紋章画数:三画
特記事項:・剣術部副部長。
・真面目だが凄まじくアホな子。
・直感は野生の獣並みに優れている。
レポートに記された生徒たちはどの子も良い紋章に恵まれた才気溢れるものばかりであった。
その中でも特に目を引いたのは……。
「
「ああ。本年度優勝候補の筆頭株だ。それ以外だと学生会長の
染谷一輝は救助能力、戦闘能力、思考力等を総合して第一位でなければなれない学生会長の座についている。
吉良赫司は紋章が凶悪であり、彼の前に血を晒せば即座に身体中の血液を抜かれてしまう。
日向夏目は自然格の紋章故に、紋章高専ではそもそも攻撃を当てられる者が限られる。
「そっか。そういえば自然格って普通は攻撃通じないんだっけか」
「ああ。“
雷の紋章者であるルーク。
大空の紋章者である静。
彼らと交戦した経験はあるが、“超克”を使える八神にとっては流動性という自然格の利点は作用しなかった。
しかし、本来自然格は“超克”を身につけていないものは触れる事さえできない。
そして、戦闘のプロである特務課メンバーや戦闘兵器として育てられた八神と違い、未だ発展途上の生徒たちには“超克”ができる者、即ち自分だけの現実を持ち、物理法則を歪められる者は少ない。
そもそも、“超克”ができる者は世界的に見ても全人口の一パーセント程度しかいない。
なぜなら、いくら紋章が世間的に馴染んで当たり前のものとなった現代であっても、物理法則は依然変わらないからだ。
例えば……、
火に水を掛ければ消えるし、凍らせることなどできない。
火や電気、光といったエネルギーには触れることなどできない。
このような常識を……
火は水をかけられようが、全てを蒸発させれば消えないし、熱エネルギーを越える冷気を放てば凍らせることもできる。
エネルギーは魔力で干渉が可能。
だからこそ、自然格の流動する身体も捉えられるのも道理である。
このように自分だけの現実でもって捩じ伏せる必要があるのだ。
だが、そんなことができるのは一部の才能ある人間か感性が常軌を逸した異常者のみだ。
故に、未だ未熟である高専生徒では自然格へ対処できる者が限られてくるのだ。
「じゃあ、この
「いや、彼女は既に売約……といえば聞こえが悪いか……。既に担当者が決まっている。レポートにも書いているだろう。既に半数は陸上自衛隊が確保しているから俺たちは残り半数の中から選出しなければならないんだ」
陸上自衛隊は出場者が特務課よりも少ない分、例年二日目の高専トーナメントにおける教育担当者の優先選出権を得ているのだ。
「それに、既に選手の目星はついてる」
そう言って彼は八神が持つレポートに記載されたある人物を指差す。
「射撃部部長、
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