第43話
『情熱のジュリアナカマウッド討伐に参加されました皆様、お疲れ様でした』
突然男の人の声が辺りに響き渡る。
ちょうどセシルさんがかっちゃんの顔面を蹴って着地したときだ。
『実はですね。正式サービスに向けてのプロモーションムービーの撮影も兼ねたイベントだったのですが……』
プロモーションムービー?
あぁ、ゲームを宣伝する為のってことなのかな。
『ジュリアナカマウッドに踊らされている方々の慌てふためく様を撮影しようと思っていたのに……まことに残念ながらその目論見は成功しなかったわけでして』
なんか凄い事ぶっちゃけてるよこの人!
ていうか、この声の人って運営の人なのかな。
思わずぶっちゃけてる内容に、周囲でも笑ってる人だとかつっこんでいる人だとかいる。
『それでですね、誠に恐縮ではありますが、もう一度ジュリアナカマウッドを出しますので――』
うわぁーっ。また凄い事ぶっちゃけてる!
「おいおい、撮影出来なかったからって、またあれと戦うのかよっ」
「今度こそランキングに入るぜっ」
「カマーン!」
やる気満々な人のほうが多い……。たぶん、ランキングに入れずにアバター装備を貰えなかった人だろう。
もう一度あれと戦うのは面倒くさいなぁ。
『ご安心ください。戦闘行為は不要です。ジュリアナカマウッドは非戦闘状態の、むしろ愛玩動物――いえ愛玩植物のような存在として登場させますので!』
愛玩……。
皆と顔を見合わせ戦場に戻ると、そこには確かにジュリアナカマウッドが立っていた。
『プロモーションムービー撮影のご参加よろしくお願いします。とりあえず踊っていただければOKですので』
なんてアバウトな。
などと思っていると――
「しまった! 既に奴の頭上は占領されているではないかっ」
「あぁ、セシルさんやっぱりあそこに立ちたかったんですね」
「あたりまえだろうっ。せっかくこんなステキ装備まで持っているというのにぃぃ」
セシルさんが地団駄を踏んでいた。
彼……もう彼でいいよね?
彼が見つめる先、カマウッドの頭上というのかなぁ。そこには縁のぎりぎりにまで人の姿が見えていた。
「そうだっ。ゲームマスター! 扇子だっ。そのジュリアナ扇子の上に立たせろっ」
「兄貴……い、いや姐御? いくらなんでも無茶すぎるぜ」
「坂本の頭上にでも立っていればいい」
「加藤、そろそろシグルドっつぅ名前覚えろよな」
「大丈夫。知ってるから」
知っててわざわざ本名で呼ぶんだ……。
それはそうと、かっちゃんの顔――
「かっちゃん、顔大丈夫?」
「ん? 大丈夫だぞ。踏まれようが殴られようが、痛みもなければダメージだって無いからな」
「え、そうなの?」
「あぁ。たぶんPVが未実装だからだろうな。それとも町の中だったからかな。まぁどっちにしろ痛くは無かった」
痛い痛く無いの問題だけじゃない気もするんだけど、かっちゃん自身は蹴られた事を気にはしてないようだ。
まぁかっちゃんがポロっと言わなければ蹴られることもなかったんだろうし。
なんて思っていると、突然ボクの目の前にもさもさした大きな羽飾りのような物が現れた。
「わんコロ君、乗るのか乗らないのか、早く決めたまえ。でないと人が詰掛け過ぎて重量オーバーになるっ」
「え? え? ええぇ!?」
セシルさん、そしてシグルド君やアンナさん。かっちゃんとマヨラーさんが立っているのは、ジュリアナカマウッドの扇子の上――だった。
「の、乗りますっ」
「んむ。早くしたまえ」
伸ばされた手を掴んで、ボクはジュリアナ扇子の上に飛び乗った。
イベントボス討伐ランキングで頂いた装備の中に、プレイヤーの性別によって異なるデザインの装備というのがあります。
女装男装の人がこれらの装備を着用した場合、プレイヤーの性別に準じたデザインになってしまい、女装や男装している事がばれてしまいます。
諸事情で男装せざるを得ない人もいると思いますので、既存装備のように女装男装用にもなるよう修正をお願いします。
要望報告完了っと。
ふぅー、終わった終わった。
問い合わせフォーム探して、なんて書こうか悩みに悩んで――もう十一時かぁ。
クローズドが終わってサーバーが閉じたのが十時だってのに、一時間もあれこれやってたんだなぁ。
さて、お風呂に行って寝よう。
明日も一応まだ学校だし。
あぁ、早くオープンベータにならないかなぁ。
そうだ、日程の確認しておかなくちゃ。
えーっと、公式サイトのトップページ見れば解るかなぁ……あ、お知らせのところにあった。
【オープンベータテスト日程】
23日|(水曜日):15時オープン予定。
25日|(金曜日):24時サーバーダウン予定。
26日|(土曜日):15時正式サービス開始予定。
あれ?
オープンベータテストも三日間しかないのか。しかも翌日には正式サービス……。
正式になると何が変わるんだろう。よく見ておかなきゃ。
ふわわぁぁぁ。眠い。
調べるのは明日にして、今日はもう寝よう。
最後はずっと踊りっぱなしで疲れちゃったよ。
ずっと、ずっと……ずんずんちゃ〜ずず〜ずちゃ〜♪
ずずんちゃ〜ずずんずちゃ〜。
うわわぁぁっ、頭の中でメロディーがぐるぐる回るぅ〜っ。
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