第41話

「マロンやったな! お前ダメージ部門に名前でてんぞ」


 ジュリアナマカウッドから出てきた無数のカマウッドを全部倒し終えると、辺りに『キンコーン』という鐘の音が鳴り響いた。

 その音はジュリアナカマウッド討伐ランキングが発表された音だった。

 

 腕時計のボタンを押してシステム画面を開き、そこに表示されていた『情熱のジュリアナカマウッド討伐ランキング』というのを押し、それから――

 手間取っている間にシグルド君が祝いの言葉を掛けてきた。

 ランキングページは部門、レベル帯でも分けれていて、ようやく自分が該当するページを見つけると、



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【レベル1〜15帯ランキング】


順位/キャラクター名/レベル&職業


1:カルロ(LV15:弓手)

2:トーチキ(LV15:魔術師)

3:グランブル(LV14魔術師)

4:けーた(LV15:剣士)

5:ローズベリー(LV15:魔術師)

6:ロビン(LV14:弓手)

7:影|(LV15:盗賊)

8:正宗|(LV15:剣士)

9:マロン(LV14:闘士)

10:木苺|(LV14:魔術師)

11:ショコラ(LV14:魔術師)

12:ロギ(LV13:弓手)

13:たぬたん(LV15:盗賊)

14:モンク(LV15:闘士)

15:ラインバッハ54世|(LV13:弓手)


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 あった!

 ボク、九位だったのか。

 うわぁ〜、嬉しいなぁ。


「そういえばシグルド君はヘイトじゃなくってダメージ部門で見てるの?」

「いや、ヘイト部門もう見たからお前の名前あるかなと思って」

「そうなんだ。シグルド君どうだった?」


 ボクがそう言うと、シグルド君はピースサインをしてにっこり笑った。


「だんとつ一位だったぜ! やぁ、やっぱ開幕しょっぱなにヘイト取れたのがよかったんだろうなぁ」


 嬉しそうに言うシグルド君の言葉を聞きながらランキングを見てみると、レベル16から20の『ヘイト部門』堂々一位の所にシグルド君の名前があった。二位から下、十位までは全員レベル20だ。


「それもこれも、カマウッドに気づいた兄貴のお陰だぜ。それなのに……兄貴がランキング外なんてなぁ」

「あ、そういえば……シグルド君からヘイト取ってたのに、なんでランキングに名前が無いんだろう。ねぇ、セシルさん――」


 あれ?

 そういえばセシルさん、さっきからずっと黙ったままだ。

 ……あれ?

 そもそも――


「セシルさん、どこに?」

「あれ? 兄貴が見あたんねぇな」


 きょろきょろと辺りを見渡してもセシルさんの姿は何処にも無い。

 すると、近くにいた知らない人が、


「君たちと一緒に上から落ちてきたあのエルフは、さっき死んでセーブポイントに帰ったよ」


 と教えてくれた……。

 え?


「えええぇええぇぇぇぇぇっ!?」

「ちょ、え? 兄貴!?」


 視界の隅にあるパーティー一覧を見てみると、HPが真っ暗になっているセシルさんのキャラクター情報バーがっ。






「のおおおぉぉぉぉっ」

「死亡したら貢献度はリセットだったのか。死ななくてよかったよな」

「そうやねぇ。ランキングに上位以下が混ざってたのは、自分が上位だからって馬鹿みたいに突っ込むのがいたからやったんやねぇ」

「ノオオォォォォォォッ」


 壁の上にいたアンナさんかっちゃん、マヨラーさんとも合流して各々のランキング入りを喜んだ。

 ただ一人、ランキング外だったセシルさんは雄叫びを上げている。


「エルフの人は如月に『ヒール』ばかりしてないで、せめて回復アイテムでも食ってりゃよかったんだ」

「え? どういう事かっちゃん」

「どうって、お前らがジュリアナから落ちた後、落下ダメージで瀕死だったろ。アンナはシグルドの回復優先してたし、エルフの人がお前に『ヒール』掛けてたんだよ」

「え……セシルさん!?」

「ぬ……」


 ボクたちの視線が一斉に彼へと注がれると、真っ赤な顔をしてセシルさんが明後日の方角を見つめる。鳴りもしない口笛を吹いている気になって。


「セシルさん……どうしてボクなんかの為に?」

「ぬ……まぁアレだ。君はネトゲ初心者なのだろう」

「はい」

「だからアレだ。せっかくの初公式イベントだし、ゾンビアタックが出来る位置でもなかったし、ジュリーをその手で倒したかっただろう?」


 そんな……そこまでボクの事を考えてくれてたんですか。でも、だからって自分が犠牲になる必要なんて無かったのに。

 ところでさらっと言ったけど、ジュリーって誰ですか。

 

「でも兄貴、いつの間に死んでたんだよ」

「んー、最初の扇子攻撃はわんコロ君が防いだが、もう片方の手の扇子攻撃でなぁ。いけると思ったんだよ、『落下ダメージ減少』技能もマックスだったし」

「技能?」


 そういえばそんな技能を取っていたんだっけか、セシルさんは。

 ジュリアナカマウッドから振り落とされたとき、ボクの視界は真っ赤になってて瀕死状態だったけど、セシルさんは技能のお陰でダメージが少なかったのかな。


「セシルさん、あれ取ってたんですか? どうりでシグルドとマロン君が真っ赤なのに、セシルさんだけ緑だったわけね」

「んむ。五割持っていかれたが、まぁ大丈夫だろうと高をくくっていたんだがね。いやぁ、まさかの即死だったとは、あははははははは」

「つまり、別にマロンの身代わりになって死んだって訳じゃなく、油断して勝手に死んだパターンか」

「んむ。見も蓋もない言い方だがその通りだ。ドヤッ」


 自分で『どやっ』って言わないでくださいよっ。

 一瞬でも感動しそうになってたボクが惨めじゃないですかぁ。


 はぁー……と大きな溜息を吐くと同時に、ピコンという音が聞こえた。

 システム画面を開くと、今度は『運営からのお届け物』というクリックボタンが。

 え、もう届いたの!?


「やったっ。アバター届いてるぜ」

「お、選択方式なのか。好みじゃないアバター来たらオープンで売ろうと思ってたんだが、中身見て考えるか」

「売れないんじゃないかなぁ、こういうのって」

「わっ。武器と防具両方を選べるみたいっ。いやぁん、嬉しいっ」


 え、え、皆見るの早いよ。

 ボクも慌ててボタンをタッチし、お届け物画面を確認する。

 すると別ウィンドウが開き、定番の「おめでとうございます」的なメッセージが上部に、下部にはアイテム一覧のような枠が出ている。その枠の中に装備アイコンが沢山並んでいた。


「はぁ……アバターに変身ヒーローみたいなスーツは無いか?」

「ないない」

「じゃあスパンコールで煌びやかに光るタキシードとか」

「ないない」

「じゃあ真っ赤な軍服とかは? 短めの黒いマントとマスク付きで」

「ないないない」

「じゃあ――」

「兄貴、どこまでもネタ装備を求めるんだな。だが残念ながらというか不幸中の幸いというか、全部普通にファンタジーっぽい外見だから」

「なんだつまらん。ランキングから外れて良かったわ」


 シグルド君とセシルさんの会話を聞きながら、ボクはアイコン一覧をじっと見つめた。

 アンナさんが言う通り、武器と防具、それぞれ一つずつ選べるようだ。

 何にしよう。

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