五分前の世界

山川ぼっか

五分前の新世界

 皆さんはこの世界が五分前にできたものなのです。そういわれて信じるでしょうか……。信じてもらえるわけないですよね。

 では質問です。この世界はいつできたものなのでしょうか。紀元前? もっと前? 

 では次の質問です。それが本当にそうだという証拠を示すことができますか?

 そんな古いものなんて身近にないし、そう習ったから。まあそうなりますよね。私の質問がよくなかったですね。ちょっと変えましょう。

 今、あなたの目の前には年輪が12本ある木があります。それは何年ものですか?

 12本なんだから12年目…たしかにそうかもしれません。確かにこの証拠に対する原因があると主張しているわけですものね。ですが、それが本当に12年前に創造されたものかは言い切れませんよね。

 そんなのひねくれものじゃないかって? あなたからしたらそうかもしれませんね。僕だってそう信じてきてました。というか、そうじゃないと生きてきた私はなんなんだってなりますもん。でも、普通が普通に思えなくなってしまう出来事があったのですから。。


 

 ある晴れた時の事。それは雲一つない、いい天気だった。

 

「おはよー。今日もいい天気だな!」

「そうだね。部活日和だ。」

「俺たち陸上部なんだから学校までどっちが早く着くか競争な! スタート!!」


 彼はそういうと先に走っていく。僕はタイミングが悪く、信号に捕まってしまいそうだったが駆け抜ければ間に合う。そう思い突っ込む。


「はは~俺の勝ち~! そんなんじゃ短距離のレギュラー取れないぞー?」

「急にスタートするお前がずるいんだよ!」

「ごめんごめん。でも、今日は午後から雨だから走れるときに走っておきたかったんだよ!」

「は? なに言ってるんだよ。今日は一日中晴れじゃないか。だってこんなに空は雲一つなく…」

「何言ってんだよ。確かにお前とあった時は晴れてたけどそこまでだったろ」

 

 僕の気のせいだったのだろうか。雲一つない天気だったような気もするけど…



「「イッチニ―! イッチニー!」」


  部活が始まる。軽くグランドを部員みんなで走る。それが終わると各々種目ごとに練習に取り組む。僕は長距離なのでまだ同じく走っているが。この部は長距離ランナーが多くみんなで声を掛け合いながら和気あいあいと部活を楽しむ。


 「よーしタイム測るぞ~!」


 僕は適当にペアを組みタイムを計り合うことに。相方は1500メートル。顧問の合図と同時に自分の腕時計のタイマー機能のスイッチを入れる。

 毎週来るたびに 「今何分~!」 と聞こえる様に大声で声を掛ける。あと一周。ペアは部内一の速さを誇るやつなので余裕でたしかに4分ちょうどで走り終えた。一息ついた彼にタイムを教える。


「さすがだなー。タイムは4分ちょうどだよ」


 そう言いながら彼にタイマーを渡すと


「4分って。途中まで計ってなかったな? 3000メートル走ったのに4分ってオリンピックも出れちゃうんじゃないかな」

「あ、あれ。1500じゃなかったっけ」

「勘違いしてたのか。次から気を付けてくれよな」


 彼はそう言い残して去って行ったがなにかおかしい。それとも俺の体調がよくないのだろうか。確かに4分で彼は走り切っていた。彼だけじゃなくみんな。なのにまだ実は半分ある。前半を見逃していたのだろうか。

 悩んではいたが今度は僕が走る番。3000ならそれだけ走ろう。途中で止まって恥かくより走り続けて、止まらないほうがまだいいだろう。

 僕はスタート位置につく。


「朝はずる勝ちしたけど今度は正々堂々勝つからな」


「よーい、、、スタート!!」


 掛け声に合わせてスタートをする。

 

 





 彼はついて来なかった。

 






 これはフライング勝利じゃない。




 反則負けだ。

 

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五分前の世界 山川ぼっか @ke0122

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