第24話『体育』
「今日の体育バレーだな。男女混合だぜ、楽しみすぎねぇ?」
「……僕、運動苦手なんだけど」
今日から体育の内容は変わってバレーボール。
これといって得意ではないけど、強いて言うなら……で選んだ。
「一悟は得意そうだもんね」
「まぁな。運動全般苦手じゃねぇよ。ま、いざとなりゃ俺を頼ればいい」
「え、かっこよ……」
僕の素直な感想に「茶化すなよ〜」と照れる一悟。かっこいいけど……BLとかじゃ、無いよね?
「あ、玲紋さん!」
「姫初さん! 授業で話せるなんてなんか新鮮だね!」
僕はたたっと走ってきた姫初に声をかける。
隣にいた一悟は姫初の隣にいた翠華と話を始めた。
「やあ、いっちゃん。またハブられたのかい?」
「うっせぇな。そりゃ玲紋だって彼女と話してぇだろ。俺もいたら話してぇしな」
「じゃあボクがなってあげようか?」
「はっ! あんまり言い過ぎっと本気にするかもしれねぇぜ? そういうことは本気で思った時だけにしとけ。――そろそろ時間だ、行くぞ」
「……本気にしてもいいのに」
ぽつりと呟かれた言葉は、一悟の耳に入らなかった。
そんな会話の最中、僕と姫初も話を弾ませていた。
「私、運動は得意ではないんですよ……」
「僕もあんまり得意じゃないけど、姫初さんにいい所を、そして僕はやれる人なんだってみんなに見せつける絶好のチャンスだね!」
僕の小さなガッツポーズに呼応して、姫初もむふーと胸元でガッツポーズ。
さて……僕の評判をあげよう!
*
「まさか一悟が敵だなんて……」
「か、勝手に決められたからな。俺はなるべく狙わねぇから、とりあえず頑張れよ」
一悟に励まされて、試合開始。
名前は分からないけど同じクラスの男が、サーブを打って始まる。同じチームだし、強いサーブ打ってくれるといいな。
そう思って見ていると、彼はスパイクサーブをするためサーブトスを高くあげた。
これ打てたら僕もかっこよくなれるんだろうな……と思ってブロックするべく相手チームに視線を向けると。
「――ッ!?」
強烈なスパイクサーブが、僕の後頭部を直撃。
朦朧とする意識の中、僕が最後に聞いたのは。
「あっははは! ごめーん、雑魚! ミスっちまったぜ!」
それを最後に、僕の意識は闇へと沈んだ。
*
「……?」
「目が覚めましたか?」
目を覚ますと、目の前には可愛い顔があった。……うう、キスしたい。
「ここは?」
「保健室です。翠華さんと私で運んだんですよ」
「矢倉さんは?」
「試合だって戻りました。私はここで玲紋さんを見ててと言われまして」
そうなんだ、あとで感謝しとかなきゃ。
僕はあまり事の顛末がわからないので、姫初に問うことにした。
「どうなったの?」
「玲紋さんが倒れたあと……その、誰も助けなくてですね……。誰が運ぶかで揉める間に試合を開始させろってみんながせがんだんですよ」
「そうなんだ」
「で、ですね……誰が見ても明らかにキレていた一悟さんが、トスをよこせ! と大きな声を出して……」
僕はなにか嫌な予感がして、生唾をごくりと呑み込んだ。
「百キロを超えるスパイクで玲紋さんの後頭部に当てた人の顔面に当てたんですよ。で、そこで気絶してます」
「oh......」
カーテンからちらっと見えた限り、姫初は嘘をついていない。
そっかー……やっちゃったか。でも正直スッキリしたなぁ。
「姫初さんは戻らなくていいの?」
「玲紋さんがこんな状態で戻るなんて、心配で体育に身が入りません!」
「あはは、そっか。そう言ってもらえるのは素直に嬉しいかな」
「何かしてほしいことありますか?」
「じゃあ水を一杯もらえるかな?」
僕がそう言うと、姫初は立ち上がって「待っててください」と保健室を後にした。
そんな一連の流れを見ていた気絶していると思われたムキムキ男――龍ケ
(あいつら……あんなに仲がいいのか。俺は少し勘違いしてたみてーだな)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます