第23話 『誘導』
僕達の部活内容は、『頼まれ事を引き受ける』が表向き。
だけど僕達を頼る生徒はいないし、そもそも生徒に浸透していないのであってないようなもの。
だからいつも椅子に座って、だべっている。
「昨日のアニメ観た? あ、姫初さんそういうの興味ない……か」
「あまり観てきませんでしたが、面白いアニメがあれば観てみたいです」
「こ、今期だとかぐ〇様とか面白いよ。一回観てみて」
「わかりました、観てみますね」
僕達は共通の話題(に強引にした)で盛り上がっている。
そんな隣で。
「……」
「……」
「あ、姫初さん怪我してるね。どうしたの?」
「体育の時に擦りむいてしまいまして……」
「絆創膏あるよ、貼ってあげる」
僕が怪我に絆創膏を貼っていると、
「おーい、気まずいんだけど」
「ボクのような美女といて、そんなこと思ってしまうのかい? ひどいなぁ」
けたけた笑う翠華は一悟の肩に手を回す。
「美女でも毒持ってたら近づかねぇだろ」
「幼なじみ相手に酷い言いようだね。別にいいけど」
ジリジリと火花が散りそうな二人に目もくれず、僕達はイチャつく。
「見てみなよ、いっちゃん。二人はラブラブじゃないか。ボク達も見習おう」
「なんでだよ。付き合ってもねぇお前とイチャつく意味がわかんねぇよ」
ドSが炸裂するが、上回る性格の悪さを誇る翠華はにひっと笑って。
「いいじゃないか! 向こうではまだやってない、胸でも触るかい? それなりの大きさだよ?」
「はっ!? ばっ、そんなことするわけ……」
「言いながらも視線は胸元。君も男だね」
そんな声は当然僕達にも届いていて。
「や、やっぱり玲紋さんも触りたい……ですか?」
「ふぁっ!? い、いやぁ……そ、そりゃ……なんていうか……」
「あ、でも小さい胸……は、嫌ですよね」
「貧乳が悪いなんて誰が決めたの? 大きい胸より小さい胸の方が価値が高いよ」
僕は真顔で語るが、内心冷や汗ダラダラ。
むむむむ、胸を触るって!? け、結婚もしてないのに淫らだよ!?
「ぼ、僕達が……その、カップルより上に発展した時、また……その……」
「は、はい! ですね!」
「うーん……触らなかったね」
僕達は謎の約束を交わして、胸触りの件は落ち着いた。
「す、翠華……マジで、触っていいのか?」
「いいわけないじゃないか、二人を誘導しただけさ。痴漢で訴えるよ?」
(俺、こいつとは一生仲良くなれねぇわ)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます