幕間 『上辺』☆
「お前、なんで玲紋に絡むんだ? 合わねぇと思うんだけど」
玲紋が呼び出されて俺と翠華二人になったので、疑問に思っていたことを問う。
翠華は不敵な笑みを浮かべて。
「似てる……は少し失礼に当たるかもしれない。けど、ボクは親近感が湧いているんだ」
「意味わかんねぇ」
「ふ、ボクもまた、友達がいないってこと」
その言葉に俺は首を傾げる。
玲紋には俺がいるし、五月女さんには男女共に仲良い人がいる。
「多分だけど、五月女さんは友達いなくなると思うんだ」
「失礼な奴だな」
「ちょっと言い方間違ったかな? 既にいない、の方が表現としては正しい」
やはり意味がわからず、俺が再度首を傾げて目で訴えると。
「つまりは上辺だけってことさ。――ボクのようにね」
「怖ぇよ、喋んな」
「あはっ、酷いじゃないか」
くつくつと肩を震わす翠華は、はぁと笑い疲れの息を吐いて涙を拭う。
そんな翠華をしり目に、俺達は玲紋の後を追うべく職員室に向かう。
「でも、それでお前が肩入れするのは理由になんねぇだろ」
「確かにそうだね。――そもそも今のは、建前に過ぎないんだ。当然事実ではあるけどね」
楽しそうな笑みから一転、不敵な笑みに作り変えた翠華は。
「楽しそうだと思ったんだ、彼らに付くのは」
「楽しそう?」
「五月女さんと言えば、この学校で生活する以上皆が知っている人。どんな陽キャと付き合うのか、胸を馳せる気持ちを裏切って付き合ったのは変哲もない玲紋くんだ。当然反感は買うだろう?」
「……ノーコメント」
友達の立場だと口出し出来ないが、客観的に見れば間違っていない。
それを楽しそう……と、表現するか。こいつ、根っからの性悪だな。
「本当に好きなら、きっと周りの視線を気にせず別れないと思うんだ。でも、何かきっとアクションは起こす。ボクはそれに携わりたい」
「もの好きな奴。性悪だからか」
「解釈変えて?」
職員室の前まで行って、話を聞く。
好きだとかなんだとか聞こえるが……聞いてよかったのか?
不安になる気持ちを抑えるように翠華に視線をやると。
「……いいなぁ、付き合うって」
「なんか言ったか?」
「ふ、上辺だけじゃない、真の付き合いっていいなって言っただけさ」
そういう翠華の顔は、どこか儚げを感じた。
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