第18話 『会議』
「僕達がするべきは、認められることだよ」
部活に足を運んで対面するように座ると、僕は開口一番言い放つ。
意味は通じたようで、姫初は「んー」と唸って共に考え込む。
「まず、原因がわからなければどうしようもありませんよね……」
「……いや、原因はわかってるよ」
「そうなんですか? 何が、原因なんですか」
生唾を呑み込む姫初に僕は間髪入れずに。
「姫初が可愛すぎること」
「…………ふえぇ!? い、いきなり何言い出すんですか!?」
「だけどそれは仕方の無いこと。そこをどう改善するかが課題なんだ」
「課題を変えるべきではないですか……?」
おずおずと否定に入る姫初だけど、そこを変えることはありえない。
そんな僕に対して、姫初は小さくつぶやく。
「玲紋さんは……私を顔だけで選んだ、ってことですか……?」
「あはは、それはないよ。だって僕が姫初のことを知った時には――ってこの話はちょっと恥ずかしいね」
僕はにへらと笑って後ろ髪を掻く。
顔の善し悪しは少なからず、恋愛対象には求めてしまう。きっと姫初は人一倍、その悩みは大きいだろう。
だからこそ、僕は姫初に対して何一つ偽りなく接するのが礼儀。
「ま、まあ原因がわかったところで解決策は見つからないね」
「私としては何もかもが置いていかれているんで、何も案は無いですが……」
話は膠着状態。解決案が無ければ、今日の部活は話す間もなく終わりを告げるチャイムだけが鳴り響くことになる。
……何かないのかな? 僕が、僕が出さなければならないのに!
女優が結婚報告するとファンが沸き立ち、少なくなったり反感を買うのと同義、姫初が学校一の美少女であるならば交際報道が出れば反感を買う。
ましてや相手が僕のような凡人で、陽キャで己に自信がある者ならなおさら。
姫初に落ち度はない――問題は釣り合うに足らない僕の現状。なんて言ってしまえば姫初に怒られるのが明白なので口を噤むけど。
「玲紋さん」
「――! な、何かな姫初さん」
考え込む僕に声をかけてきた姫初に少し反応が遅れると、姫初は小さく微笑んで。
「もう、やめましょう」
「――え?」
口を開けて阿呆ズラする僕に言い放った、姫初の言葉。
一瞬、意味がわからなかった。
でも、姫初の表情を見て、僕は悟らずにはいられなかった。
どこか悲しそうな表情。
それはきっと、僕を好いていてくれたからのものだと思う。
「……そっか。まあ、仕方ないよね」
「そうですね、仕方ないです」
「…………楽しかった、ありがとう姫初さん」
「え? なんのことですか?」
「部活ももう最後だね、小柳先生になんて言おうかなぁ」
「え、え? さっきからなんのこと言っているんですか?」
僕は瞳からこぼれそうな涙をグッと堪えて。
「付き合ってくれてありがとう!」
「えぇ!? なななな、なんで別れることになっているんですか!?」
「姫初さんがやめようって……」
「ち、違いますよ!? 考えるのが大変そうだと思ったので、解決策を探すのをやめましょうって言ったんです! 私……は、玲紋さんのこと好きなので別れたくはない、と思っています」
……………………そっちかーーい。
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