第14話 『前夜』☆
「どうしましょう……」
「どったの、おねぇ」
「私……ツインテールにしようかと思うんですが、どうですか? ……な、なんて弟に訊いても意味ないですよね!?」
「意味ないってなんだよ……。ああ、そうだね、意味ないかもしれないね! だっておれは、おねぇがどんな格好しようと可愛いとしか思えないから!」
舞童がドヤって答えると、姫初は少し間を空ける。おかげで今恥ずかしいこと言ったと羞恥が舞童を襲うが、姫初は気にする素振りを見せず。
「ですよね……。私も、玲紋さんがどんな格好で来ようと、受け入れる事が出来る気がします!」
「そうじゃない……」
舞童としては「おれは」の部分に重きを置いているのだが、まったく姫初には伝わらず、むしろ変なスイッチが起動してしまった。
思う展開とは反転した方向に進んで行くので、舞童は軌道修正に入る。
「で、でもそれはおれの場合だから。浮気性の玲紋って人はわかんな――」
「大丈夫ですよ。絶対、大丈夫です」
謎に、でも力ある言葉に舞童は気圧され、言葉に詰まる。
「私が玲紋さんを信じずして、信じてもらえると思いますか? もしかしたら、この決断が残酷なものとなったとしても……です」
「…………そんなに、好きなんだ」
「はい! すごく好きですよ、玲紋さんのこと。い、いずれ舞童にも紹介出来るといいんですが……」
私がそこまで言うと、舞童は顔を伏せたまま立ち上がって部屋を出ていく。
「ど、どうしたんですか……?」
問いかけには反応せず、舞童は扉に背を預けて。
「おねぇのバカ……結婚してくれるって言ってたのに……」
幼き頃の記憶。だけど、まだ小三な舞童には厳しい現実。
玲紋とは立ち位置が違って、結婚出来ない立場であろうとも、好きの度合いは変わらない。
まだそこまで知らない舞童は、玲紋に姉が取られた現実しか見えていない。
となれば、怒りが込み上げてきても仕方の無いこと。
「――でも、まだ結婚した訳じゃない。おれにもチャンスはある!」
そのまま舞童は自室に向かい、己を磨くためにネットで勉強。
残された姫初は。
「どうしたんでしょうか。……でも、今は気にしていられません! 明日、絶対私リードで進めて行きます!」
玲紋も姫初も気合いを入れた初デートが、明日の土曜日、始まる――
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