第11話 『顧問』
放課後、僕達は人気の無い、使われていない教室に集合した。
「廊下に誰もいない?」
「いませんね。今がチャンスです!」
盗人のような動きがいかにも怪しいが、そもそも誰にも見られていないのでセーフ。
急いで職員室に行くと、小柳先生は煙草を吸って書類をまとめていた。
「小柳先生」
「お前達か、どうした」
「少しお話がありまして」
少々緊張気味になる。
美人な先生だけど、二十六歳になっても結婚してない辺りから察してほしい。
「あの、部活動の顧問になってもらえませんか?」
「断る」
「即決……っスか」
確かに顧問をしても、先生にメリットはない。
帰る時間は遅くなるし、自分の時間も取られて学校で終えなければならない書類なども終わらなくなる。
だけど、相手は先生でこっちは生徒。少しは迷ってくれると思ったんだけどなぁ。
どうにか誘い込みたい……。
「ぼ、僕達はみんなのためになる部を作りたいと思ってるっス」
「そうか、頑張りたまえ」
「えぇー……」
取り付く島もないとはこのことか。
完全にやる気のない小柳先生は再び書類のまとめ作業に戻る。
「無理っぽいね、やめと――」
「先生! 私達は本気なんです! もう一回考え直してもらえないでしょうか……」
「考え直すもなにも、一回も考えてないんだが……」
なんとも言えぬ返しだけど、姫初は怯まず突き進む。
「どうしたら顧問になってくれますか?」
その問いに、小柳先生は髪をぐしゃぐしゃと掻き乱す。
面倒なことを嫌いそうな小柳先生だが、滅多に感情を出さない姫初の懇願に心が乱されているようだった。
「どうもこうもない。やりたくない気持ちに嘘偽りなし」
開き直った小柳先生はその大きな胸を突き出してドヤる。なんか、性格変わった? この人。
でも、その言葉は姫初にとって大ダメージとなり、紡ぐ言葉は失われた。
姫初は性格が良い人間だと思う。
だからこそ、私情で部活をしようと考えている姫初はこれ以上口を出せない。
――なら、僕が頑張るしかないよね。
「小柳先生、今僕達が作ろうと思ってる部活名は『陰を統べる部』っス」
「厨二病か?」
「意味合い的には、どんな事件すらも聞き入れ、陰ながらこなしていくというものっス」
「「え?」」
あ、姫初にも言ってなかったか……。
でも今は説明している暇はない。押し切れる時に押すしかない。
「つまり、事件を解決しても、僕達は陰でやるため手柄は小柳先生のモノっス。先生内の評価もあがり、良いようになっていくんじゃないかなと思ってるんスよ」
「!」
小柳先生はぴくりと反応した。ここしかなさそうだ。
「しかも、顧問でありながら小柳先生の些細な事件から大きな事件まで受け付けるっス」
「……私はいた方がいいのか?」
「どちらでも構わないっス。基本居なくてもいいので……どっスか」
「………………居なくてもいい、か。仕方がない、引き受けよう。――多分だが、他言しない方がいいのだろう?」
「はい、そうですね」
小柳先生は面倒くさがりだ、依頼殺到して全てと対話するのが嫌なんだろう。プラス、僕達のあの事件を目の前で見ていて、少しは考慮してくれたかもしれない。
「楽して社内での評価が上がるかもしれない……ふっ」
あ、してないっぽいや。
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