第9話 『視線』
昼休み、僕はいつも通り一悟と飯を食む。
……会話がない。というよりも、一悟は緊張しているようだ。
「どうにかしろよ、玲紋。周りの視線が俺の食欲の減衰となってんだよ」
「無茶言わないでよ……。僕もやりすぎたなぁって反省してるんだから」
うーん……視線が刺さる。
男からの視線は多分嫉妬、女からの視線はきっと「なぜお前が」って忌む気持ち。
「無視してご飯食べよ」
「……だな」
高校二年生にもなれば、昼食時はスマホいじってゲームなどをして楽しむもの。
だから僕達もスマホゲームで通信対戦していると、隣から人影がにゅっと伸びた。
僕達は一旦対戦をやめて人影に視線を向けると。
「……姫初、さん」
「一緒に食べていいですか?」
どうぞどうぞ、と机に場所を作って、姫初の弁当を置くスペースを空ける。
「すみません、一悟さん。一緒に食べているところをお邪魔して」
「え? お、あ、ああききき、気にすんな」
さすがヤンキーもどき、緊張しまくってる。
こうやって女子耐性無くて友達もいないから、僕と仲良くなったんだろうなぁ。
「どうしたの、姫初さん。今一緒に食べてて大丈夫?」
「わかりません。けど、このままでは玲紋さんに迷惑ばかりかけてしまいます……。もしかしたらこの行動すらもいけないのかもしれませんが」
人の噂も七十五日というが、今回は噂ではなく事実であり、事実の場合何日で過ぎていくのかはことわざには無い。
故に、己で行動を示さなければ、どうにもならないのだ。
ただ、どう行動すればいいのかはさっぱりで、試行錯誤していくしかない現状では姫初の行動は否めない――が。
「多分、一緒にいない方がいいよ。僕のことは気にしなくていいからさ、まだ姫初さんの友達とは縁が切れてないんでしょ? なら今は僕とじゃなくて、彼女らと仲良くして絆を深めるのが先決なんじゃないかな?」
「……でも、私は玲紋さんが好きです」
「ありがとう、僕も姫初さんが好きだよ。けれど、学校生活において、友達がいなければ最悪な鳥籠と化すよ」
「へぇ、妙に説得力あんな」
そりゃあ体験談ですので。なんて姫初の前では言いたくないけど。
僕だって姫初とご飯を食べたいし、学校内でも仲良く話したい。
けれど、友達の大切さも知っている。
このままでは姫初は友達がいなくなり、孤立していくのは明白。それが僕が手を引くだけで済むのであれば――しっかり受け止める。
姫初は納得いかない様子だけど、弁当を持って立ち上がる。
仕向けたのは僕だ――けど、どうしても「待って」と言いたくなる。
渋々嫌々そうに背を向けて、ギャルの元に向かう姫初に、一悟がスっと手を挙げた。
「お前ら、部活でも作れば?」
「え?」
「要は場所が欲しいんだろ? なら、部活作ってそこで話しとけばいいんじゃねぇの? 知らんけど」
「ナイスヤンキー風」
「風言うな」
確かに、その手があった。
僕と姫初は一度顔を見合わせる。出来るかどうかは定かでなくとも、試す価値は大いにある。
「俺も入れてもらえ――ねぇよな、知ってた」
僕は姫初は微笑む様子を見て悟った一悟は、寂しそうに白米を口に運んだ。
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