第6話 日代子の容態

目の前の電柱にぶつかり止まっているトラックと運ちゃんの青ざめた顔を見てやっと大地は状況を理解した。


大地「日代子ぉぉお!!!」


大地の声が事故現場にこだました。あまりの声の大きさに運ちゃんが手で耳を塞いだ。


運ちゃん「誰だよ!?ヒヨコって!?」


大地「あんたが今轢いた女の子だよ!てめー!!!」


大地は窓から運ちゃんの胸ぐらを掴んで目一杯引っ張った。窓から運ちゃんを引き摺り下ろしそうとしたのだろう。が、さすがにパワー不足。運ちゃんの洋服が伸びただけだった。


運ちゃん「離せやバカ!人なんて轢いてねぇだろが!」


大地「!?」


運ちゃん「物損!!!」


大地「ぶっそん!?ぶっそん、、、、、仏尊っててめー、轢いて即お経唱えてんじゃねーよ!」


運ちゃん「もういい!保険会社に電話する!」


運ちゃんは窓を閉めて大地をシャットアウトした。


大地「てめー!保険会社の前に救急車だろーがぁ!」


大地がトラックのドアを開けようとしたその時、トラックの後ろから声がした。


日代子「ふぁー!大地さん大丈夫でしゅか?」


大地は開けようとしたドアから手を離し、声の主の元に駆け寄り抱きしめた。ドアから日代子までの距離は5メートル。


見物人のAは、その後死ぬまで語り継いだという。

A「あの時の青年の5メートル走は、世界最速だった。」と。


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