愛唯と凉子~援交と拒絶~ あの後



 スマホの画面の光だけが浮かぶ暗い部屋。


「えへへ……」


 スマホからは、人の話す声が流れている。

 その話し声は、同じことを繰り返し繰り返し話している。



『っ……待って! 行かないで!』

『それでも、嫌なの……行かないで』

『分かってる。でも、この手を離したら絶対に後悔するから』

『でも、友達として、愛唯と一緒にいたい』

『何それ。だから、えっと、その、明日暇だったら遊びに行かない?』



 ベッドの上で、スマホの光に顔を照らされた愛唯がいた。

 愛唯は恍惚の笑みを浮かべながら、スマホから流れる声に聞き惚れている。


『それでも、嫌なの……行かないで』


「んふふ、行かないよー。援交なんてするわけないじゃん。私に触れていいのは……凉子だけだから」


 愛唯はスマホを眺めるのを止めて、ベッドの上にスマホを置く。スマホの画面は光ったままで、部屋の中を照らす。


「私はー……凉子の事、何でも知ってるよ……」


 部屋中の壁や天井には、凉子の写真があちらこちらに貼られている。

 その写真はどれも、カメラに目線を向けているものは一つもなく、あきらかに盗撮だと分かる。


「ふふっ、ドラマチックだよねぇ。喧嘩してた二人が、【偶然】再会して……さらに友情が深まる。そして、いつしかその友情が愛情に変わり始める……ふふっ」


 愛唯は再び、ベッドの上に置いていたスマホを手に取る。スマホの画面にある時計が、二十三時と表示されている。


「そろそろ、凉子が寝る時間だ。ふふっ、さーて、電話しなきゃ」



 

 家に帰ると、繋がることのなかった番号へ繋がることができる。


 繋がれなかった日々が終わる。


 また口元が緩くなるのを感じた。











愛唯と凉子~援交と拒絶~ あの後 END

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