第2話
それから俺達は生活が快適になるよう努力した。学校で会うと毎回脅されて毎回鳥肌立つけど……。
家では俺が洗い物している時に、静が「今日はあんたの番だけど、仕方ないから手伝ってあげるわよ。感謝しなさい」と、洗い物の食器を一緒に洗ってくれる。
「お、おうありがとな」
「どういたしまして」
意外と優しいとこあるじゃん。こんな優しい一面があるんだったら学校で脅さないでくれよ、と俺は心の中で祈願した。
その日の晩御飯、静が肘を机につき、「おいしい?」と聞いてきた。
これ普通って言ったら何されるかわからない……。まぁ実際、普通なんだけど……。
「おいしい」
「そ、そう?ありがとう」と上機嫌で言った。すごく嬉しそうだ。まんま顔に出てるよ。
その日の夜、俺はベッドに入ると、すぐに寝付いてしまった。俺が寝付くのに1分もかからなかっただろう。
1
「お、起きなさいよ。もう!早く起きて!」と言う言葉が飛んできたので目を開けると、静が俺にまたがって乗っていた。
俺は、思わず「な、何してんだよ! 早く降りろ!」と静を払いのける
「な、何よ! こっちは起こしてあげてんのに! ほら、早くご飯食べてよね!」とだけ言い、ガタンっと勢いよくドアを閉め、出ていってしまった。
これは怒らせたかな、マズイお世辞で挽回しないと。
あいつの機嫌の取り方は褒めるだ。
俺が着替えて階段を降り、一階の食事場へ行くが、そこには、ご飯と梅干ししかなかった。
「お、おいなんでご飯と梅干ししかないんだよ?」と、俺が聞くが、静はつーんとして無視した。
さっきのか……まぁここでごねてもおかずは多分来ないし、まぁいいか。今日は、我慢しよ。
2
俺はご飯を食べ、今日は一人で学校の門までいくと、懐かしい声の女子生徒に呼び止められた。
「翔~! おっはよ~」と俺の肩を思いっきり叩いてきたのは幼稚園からの腐れ縁の新垣美優だ。
「新垣、俺を見かけ次第殴ってくるな。あと下の名前で呼ぶな。」
「え~いいじゃん別に~! それとも私に下の名前で呼ばれるのは嫌?」と、上目遣いの涙目で聞いてくる。
この状況でダメなんかゆえるはずないだろ。
新垣は天然だが、頭のキレるやつだ。きっとこの状況だと断れないのを想定したんだろう。
「いや、別に嫌じゃないけど」と答えるとその答えを待ってたかのように、「ほんと~? ならこれからも下の名前で呼ばせてもらうよ~」と即答した。
こいつアホなのにこういうことにだけは天才なんだよな。
3
放課後になると教室は静まり帰り窓を開けると、部活動に励んでいる生徒の声が聞こえてくる。
俺は小中とサッカーを続けていたが、今はもうやる気が一ミリすら芽生えてこない。
なぜなら俺は、中学校最後の大会の県大会をかけた試合でオウンゴールをしてしまい、それが決勝点となり、俺達は県大会出場を果たせなかったからだ。
あの時の悔しさと、自分の不甲斐なさを思い出すくらいならサッカーなんて一生したくないと思う。
「さて、そろそろ帰るか」
そう独り言を呟くと教室を出て、まっすぐ家へと向かう。
4
俺が家の前まで着き、玄関を開けようとした瞬間、あるものが目に止まった。
それは、玄関前に付いてるプレートだった。
そこには、俺の名字である『月神』《つきがみ》がしるされていたからだ。
この時俺の脳にひとつの可能性がよぎった。
それは、正式に結婚をしてるか否かだ。
もし、俺の祖父と霞の祖母が婚姻届を役所に出していたとする。
悪魔でも、その二人が一時の感情に任せた無理やりの婚約だ。もし俺の祖父と霞の祖母が冷めたとしよう。そしたら俺達の関係も終わり、元々俺の祖父と霞の祖母が無理やりさせた婚約だ。何の未練もない俺達は当然離婚するだろう
そしたら俺達は、高校生にしてバツイチだ。
これは非常にヤバイ。早急に手を打たないと。そう考えているうちに霞が帰ってきた。
呆然と立ち尽くしている俺に霞は「何してんの? 早く中に入ったら?」と、当然のように言葉をかける。
もしかして気づいてないのかな?
俺は、そう思ったので、聞いてみることにした。
「おい、これ気づかないのかよ? これ」と、月神と書いたプレートを指す。
「あんたの名字月神って言うんだ。」
え? それだけ?
そして、霞は何事もなかったかのように家に入る。
普通ならもっと驚くでしょ! もしかしてこの意味が理解出来てないのかな?
まぁ相手がいいならいいか。俺は別に気にしないし
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