第十五話 運命を変える力~あの日~
とある時、廻間の権利者となったルキは今ならばあの日、自分が生まれ育ったあの世界の消滅という運命を変えられるのではないかと思い立った。
今の自分なら、世界の廻間の神であった銀狼よりも格上の存在と成ってしまった存在なのだから。
「行ってみる?」
ルキは自分で自分に問いながらも笑う、答えなんて決まっているのだと…その問いに答えるように廻間に亀裂を入れた。
「青龍が今の私を見たら、何て言うかな…?」
青龍に会えるかもしれないという期待、お前なんて“ルキ”じゃないと否定される不安…いろいろな感情を感じては、ルキはそれら全てを無視して開けた亀裂をふわりとくぐり抜けた。
ーーー懐かしい・・・
だけどここは私のいるべき世界ではないのだと、瞬間的に直感してしまった。
私はもう、この世界からはすでに弾き飛ばされた存在。
「
もう、最後の戦いは始まっている。
当代の応龍の巫女である光梨を中心に陣を描き、その守り手である四神の巫女が霊神力を送っている。
北を玄武の巫女である
「ルキ、バランスが崩れてるわよ!」
「もっと私達を見てルキ」
相変わらずの、落ちこぼれ。
当代の青龍の巫女だった時も、先代の青龍の巫女と呼ばれるようになっても、私は皆に迷惑ばかりかけていた。
「今の私なら、
私達のリーダーだった応龍の巫女、
なんなら、この陣は敵に対してあんまり有効じゃないのも今なら気付ける。
少ない時間の中で即席で作ったから、ところどころいびつで自分が担当したところなんて特に陣の繋ぎ目のバランスが悪い。
それに祈祷時間も足りない道具ばかり使ったから威力を底上げできなくて…それでも、この時の私達にはこれが精一杯だった。
「こんな力じゃたりないんだよ…」
私は昔の自分に言っていた。後悔しかないこの日、この時…こんな落ちこぼれが、どうして生き残ってしまったのか。
銀狼のいる世界の廻間に行ったのが私じゃなく、当代の青龍の巫女である真折だったなら…陣の構成が1番うまかった緋音だったなら、いつも皆の中心にいた王龍の巫女の理央や光梨だったなら、もっとうまく運命を変える力を手に入れて変えられたんじゃないだろうか。
私なんかよりも皆の方が、絶対に主人公に相応しい。
「ルキでなければ無理だ。あの廻間で、お前以外では魂も意識も砕け散る」
突然の声と一緒に吹いたのは青い、大好きな青龍の風。
まさか、話しかけられるなんて、姿も見せてくれるなんて思っていなかった。
「それに、あいつも我も風を操る者同士だからこそできた奇跡のような現象に過ぎない。風の繋がりを辿れたのもたまたまだ」
「本当に?」
本当にそうだろうか…私は気付いてしまったかもしれない。
本当は、気付いてはいけないことに…私は、
「世界の廻間の権利者の
ルキがそう言っている間に、次々と巫女達は倒れていっている…
それでも、この敵は倒せない。それがこの世界の定められた運命だと云うように。
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