第十二話 Heart Doll本店のはじまり

 いつかのルキは、世界の変え方を探して無限の世界をさ迷っていた。

 だけどもう、その頃のルキいない。


 これは、無限に存在する世界にルキが同時に存在する者だから。





 ◆◆◆

 とある廻間。今ここにはルキ以外はいない。ルキは仮の地を蹴り、いつものように宙に足を組んで座った。

 青龍と別れ、銀狼と一緒に過ごして…一体どれくらいの時間、銀狼といただろうか。

 あの時、“私の銀狼”を失くしてから私は無限の世界を、世界の廻間をあてもなく進み、そして最初の頃の私のようにこの廻間に迷い込んだ数多の強い意志いのちを持つ者をただ感情のまま狩りまくった。


 ーーーいったい私はをしていたのだろう。


 あの頃のことは、あまり良く憶えていない。いつもは消えないキズを心に刻むのに…何故かこの頃のことは“今の私”には思い出せないことが多い。

 さて、私は自分が権利者となってしまった廻間ここで何をしようか。


「そう言えば、いつかの世界で見た心の入ったお人形…」


 あの、確か“Heart Doll”といっただろうか?あれを作った“あの人”とはいったい誰だろう?なんて、一瞬だけ思ったけど...あの世界で過ごしたルキとしての人生で記憶にある“あの人”はたぶん、いつかの自分だと思う。

 本当におかしなこともあると思う。転生して記憶の無い私が記憶のあるルキに出逢うなんて...たぶん、ケースだと思う。


 ーーー否、世界に転生や干渉をした分だけ、きっとあった。


 記憶をすべて心に刻んでも、すぐに思い出せないことばかりで…それでも嫌な忘れたい記憶キズだけはすぐに思い出せるのに。


「Heart Dollなんて、人形どうやって作ったんだろう…?」


 ルキは思い出すことをやめて、これからどうしようかと考えた。

 もう、頼れるのは自分だけ。誰も私を助けてはくれないのだから。


 私はどこで間違えたのだろうか…?


「でもまあ…なるようになるよね★」


 いつかの世界の誰かの口調を真似てルキは仮の地から立ち上がってふらりと歩き出した。

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