私の勝ちね!!!

 ーーー私はあなたと、ケンカがしたい・・・・・


 そんなことを願う私は、おかしいのかな?変なのかな?

 ねえ、お願い…陽介、またいつもみたいに私を怒らせて?ケンカして、仲直りの勝負をして?


 私が勝って、あなたが負ける…いつものケンカを、私として?

 陽介が負けて、勝った私に“謝罪を込めてキス”をして・・・・・






 国の中心部。かつて街だった、崩れた建物の瓦礫が散乱する廃墟が広がっている…噴水がある広場だった場所。

 私が陽介と一緒に歩いていた…いつも私が驚かせるように陽介の手をいきなり掴んで、指を絡ませて繋げば陽介が顔を赤くするのがすごく面白くて。何度も何度も繰り返した。


 ーーー私は陽介をからかうのが好きだった…


 それは全部、陽介が大好きだからしていた。陽介は、そんな私の気持ちに気付いていたのかいないのか…今ではもう、その答えを聞くことすらできないから。

 私は、大好きな陽介を。ケンカして勝負をすれば、私が勝って、私の方が陽介より強いのに、陽介より速いのに…何も守れなかった。間に合わなかった。


 ーーー冷たくなっていく陽介に、泣いてすがったのは私…


 全てが遅かった。私は自分が強いと思っていた。でも、それがダメだった…私は何も守れてなんていない。


 ーーーそれはまるで、過去まえにもあったような強い後悔。


 こんなにも心を抉るできごとが二度もあってたまるものか…そう思うのに、私はそれをずっと何故だか否定できなかった。


「でも今日は、その理由を…陽介ががきっとトリガーで、定められた条件。」


 ーーー私は、。世界の廻間の権利者の能力を借りる者。


 いつもそう。私が転生すると、誰かがいなくなる。

 今回は転生してじゃなかった…この世界で一番大切で、大好きな陽介がいなくなるまでに時間があった。だけど結局は、これが理。


「こんな私がいていい世界なんて、何処にも無いのに…」


 何度泣いて、何度も後悔して、声が枯れるまで泣き叫んでも…私はそれを幾度も繰り返す。

 どれだけ失敗しただろう?

 どれだけ、“今回は成功する”と思っただろう?


 ーーー運命の変え方、なんて…いったい何処にあるのだろうか…?


「陽介に、ごめんは言えないの…私は、わがままで欲張りだからネ★」


 この世界で、陽介に見せたことのない私の喋り方…否、陽介に見られたくない“ 私の最低な姿”の間違いでしょう?

 それでも私は、いつの間にか頬を流れ落ちる涙を服の袖で拭う。陽介はもう、私の涙なんて拭いてはくれないから。


「バイバイ。運命を変えられなかった世界」


 私の姿が、纏う色が、この世界のルキから廻間にいる時の姿に変わる。

 この世界にはもう、いられない。この世界はもう、私がいていい世界じゃない。

 これも、いつものこと…私はいつもの動作で世界に亀裂を入れて廻間に帰った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る