あの頃の星空に願う


 ーーーお前と一緒に見上げていた強く光り輝く星空は、今でもお前に見えているだろうか。





 今日もまた、俺の見上げる空は暗い闇の空間。

 あんなにも無限に光り輝いていたはずの星達は存在を消されたように暗闇に同化している。今も1つ1つ彼らの光りは弱々しく鈍い光りに変わっていき最期には光りを失って闇に沈む。まるで、俺の仲間達のように。お前と一緒に見上げていた星空のようにたくさんいたはずの仲間はもう、ほとんどいない。


「アキラ、この辺の敵は狩った?」


 声と気配で敵ではないと確信でき、浮遊魔法で宙を浮きながら近付いてくるこの空色の似合う少年は俺を少し安心させてくれる。やっぱりお前と何処か似ているせいだろうか。


「ああ、さっき狩り終わった。お前の担当分は?」


 俺がチームの隊長としてレイに聞けば、こいつは表情1つ変えずに“オレがここにいるんだから全部狩ったに決まってんじゃん”と返す。こいつはもう、年相応には笑わない。


「そうだな、守護魔法が得意なお前が敵の攻撃なんかくらわねーか」


「オレに守護魔法教えたの、アキラの彼女じゃん。」


「お前のねーちゃんの魔法はすべてが最高レベルだからな」


 お前が俺の傍にいなくても、俺の世界はこの暗い闇の中にある。昔はもっと星明かりで明るかった。お前がいた頃はあいつらがいて、もっとうるさいくらい声が聞こえてた。

 もちろん、お前の声はあいつらと違って“うるさい”なんて思わない。むしろ敵との戦闘ばかりで疲れていてもお前の声が聞こえただけで、お前の顔を見れただけで...俺の心は回復魔法みたいに癒やされた。


「またねーちゃんのこと考えてる?それとも敵に負けて死んでいったあいつらのこと?」


 俺より年下のはずのこいつは、人の気持ちを考えずによく“こういう言い方”で喋るから友達も少なかった。こいつを俺のチームに入れて、こいつに仲間の死を変な形で教えてしまったのは間違いなく俺だ。

 敵に殺られて無惨に散っていくあいつらのことをちゃんとしてやれなかった。俺もこいつを見ているようでちゃんと面倒を見てやれていなかった。


「あいつら全員のこと考えてた。レイ、そろそろねーちゃんとこ帰るか」


「今のねーちゃんは、オレ嫌い」


 さっきとは違って、レイは嫌そうな顔をする。ここは俺も少し同感だと思うところでもある。だって本部にいる今のお前は、魔力の塊だ。

 この頭上に広がる星空が今よりもう少しだけ明るかった頃、俺達を一掃するために放たれた敵の強力なレーザー攻撃に...お前は俺とレイを庇って死んだ。


「ねえ、アキラ!帰るんだろ?」


 レイに呼ばれて現実に戻れば、あいつはもう本部のある方向に向かって浮遊魔法で浮いていた。レイの顔を見れば“早くしろよ”と目が言っている。

 この生意気なレイも俺と一緒で早く帰って“お前”に会いたいらしい。



 ーーーたとえもう、お前に触れることが許されなくても...

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