第1555話「相手を知れ」※
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◇名無しの調査開拓員
レティは ふしぎなおどりを 踊った !
◇名無しの調査開拓員
しかし 効果はない
◇名無しの調査開拓員
結局あれは何したかったんだ?
◇名無しの調査開拓員
なんかクネクネしてたけど
見たら死ぬやつ?
◇名無しの調査開拓員
ポポポポポ!
◇名無しの調査開拓員
ネット怪談入り組んできたな
◇名無しの調査開拓員
たぶんエンジェルを口説きたかったんだと思う
なんかおっさんと連絡とった結果、エンジェルを口説くのが攻略法だって言われたらしいし
◇名無しの調査開拓員
どんな攻略法だよ!
◇名無しの調査開拓員
そんなボスおるわけないやろ
と言いたいがあのT-3が発端なわけだしなぁ
◇名無しの調査開拓員
真面目な話、俺たちの物質系スキルも通用しなかったしほとんど無敵なんだよなエンジェル。管理者の武器も無効化するってことはもうどうやっても倒せないだろうし、特殊ギミックボスだと考えればあり得るのかもしれない。
◇名無しの調査開拓員
にしてもあのクネクネダンスで口説いてるつもりだったのか……?
◇名無しの調査開拓員
ウサギの生態はよく分からねぇけどよぉ
アレは違うんじゃねぇか?
◇名無しの調査開拓員
アストラ到着したみたいだし、今度こそ一斉攻撃しかけるのかと思ったけど、そうじゃない感じ?
◇名無しの調査開拓員
攻撃は無意味っぽいからちょっと停滞中
いま上の方が対策練ってて、その間に赤兎ちゃんがエンジェルに求愛してた
◇名無しの調査開拓員
意味がわからん
◇名無しの調査開拓員
何がどうなったらそうなるんだよ
◇名無しの調査開拓員
わしにも分からん
◇名無しの調査開拓員
おっ、なんか話はまとまったみたいだな
やっと俺たちの出番か
◇名無しの調査開拓員
ずっとスイーツ食ってるだけだったからな
頭痛くなってきたぜ
◇名無しの調査開拓員
こんだけ平和なレイドバトルも珍しいよ全く
◇名無しの調査開拓員
スイーツコンペ、結局誰が優勝するんだろうね
◇名無しの調査開拓員
……?
◇名無しの調査開拓員
今、団長なんて言った?
◇名無しの調査開拓員
ちゃんと文字起こししてやったから感謝しろ。
「今からエンジェルとの対話を行います。最終目標はエンジェルと仲を深めることです」
3回声に出して読んでみろ。訳がわからないから。
◇名無しの調査開拓員
団長までクネクネダンス教に入っちまったのか?
◇名無しの調査開拓員
俺たち戦力で呼ばれてるんだよなぁ?
何が嬉しくてアザラシのバケモンを口説かないといけないんだよ
◇名無しの調査開拓員
いやでも大マジだよあの団長
◇名無しの調査開拓員
理屈は分かったよ。
シナリオAIが一般プレイヤーのおっさんを拘束したってことは、おっさんがいると即解決しちゃうから。つまりエンジェルの攻略法はおっさんみたいにNPCを口説くことだったんだ!
なるほどね?
◇名無しの調査開拓員
なるほどね、じゃないが。
◇名無しの調査開拓員
言うほどおっさんNPC口説いてるか?
◇名無しの調査開拓員
口説いてるって訳じゃないけど、即仲良くなってるのは事実だからなぁ
管理者しかりメイドちゃんしかり
◇名無しの調査開拓員
あれを俺たちで再現しろと
◇名無しの調査開拓員
そもそもエンジェルの性別はなんなんだよ
◇名無しの調査開拓員
おっさんなら性別は関係ないだろ
◇名無しの調査開拓員
そういう話なのか?
そもそもエンジェルに言葉が通じるかすら怪しい気がするんだが
◇名無しの調査開拓員
まあ近づくだけなら無害だし、話しかけるくらいならできるんじゃないか?
◇名無しの調査開拓員
ウェイドちゃんがもうやばい形相してるんだが
◇名無しの調査開拓員
町を半壊させた相手を愛せと言われても困るよなぁ
◇名無しの調査開拓員
うおおおっ!?
なんか早速誰か出てきたな。あれ誰?
◇名無しの調査開拓員
知らんが、勇者であることに違いはないだろ。
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アストラによってエンジェル攻略の方針が示された。後方で待機していた調査開拓員たちに動揺が広がる。だが、そんな中でも率先して動き出す者もいた。
「なるほど、俺の出番って訳だな」
群衆の中から歩み出て来たのは、タキシードスーツに身を包んだ金髪の男。手に薔薇の花束を持ち、口に一輪の薔薇を加え、なぜか胸元が大きく開いている。あまりにも派手で場違いな出立ちに周囲がどよめくなか、彼は堂々とした足取りでエンジェルの前へと向かった。
「俺の名を知る権利を与えよう。1000年の凍土も溶ける情熱の赤がこの身に宿る。愛と情熱の貴公子、レッドパッション=ジュテームだ!」
彼の堂々とした名乗りに、背後が大きくどよめく。
こんな逸材がまだ眠っていたのかと、多くの者が歯噛みしていた。
後ろの動揺には気が付かず、レッドパッション=ジュテームは花束から一輪を取り出してエンジェルに差し向ける。
「この薔薇は情熱の証。受け取ってくれ、マイハニー」
『………………』
風が吹き抜ける。
エンジェルは微笑みを湛えたまま、微動だにしない。目すら動かすことなく、石のように佇んでいる。高く掲げられた薔薇が、かすかに震えていた。
「ふっ、この俺を無視するとは、おもしれぇ女じゃないか。いいぜ、気に入った。お前は俺の友達一号に認めてやろう」
――そこは友達からなんだ。
後方で固唾を飲んで見守っていた調査開拓員たちが思った。というか、友達は他にいないのか、とも。
エンジェルは動かない。聞いてすらいないようだ。
「ふっ、この俺を無視するとは、おもしれぇ女じゃないか。いいぜ、気に入った。お前は俺の友達一号に認めてやろう」
一瞬、周囲の困惑が空気を揺らす。強烈な既視感を抱いたのかと錯覚した。レッドパッション=ジュテームが一言一句違わず繰り返したことに気付いたのち、彼らは驚愕した。
――こいつは、精神が強いやつなのか? と。
だがエンジェルは動かない。全くもって反応を示さない。
「……くっ! なかなか手強いじゃないか。だが、俺がこの程度で諦めるとでも?」
なおもレッドパッション=ジュテームは薔薇を掲げ続ける。だがエンジェルは動かない。周囲に憐憫の感情さえ醸されはじめるなか、金髪の青年は懸命に訴え続ける。
その時だった。
「はいっ、なんですか? えっ? えー? わ、分かりました……」
群衆の中からぴょこんと立ち上がる赤いうさ耳。レティが誰かと通話しながらレッドパッション=ジュテームの元へと向かう。彼女の気配を感じたレッドパッション=ジュテームは、怪訝な顔で振り返る。
「どうしたんだ? 愛の告白を邪魔するなんて勇気があるじゃないか。それとも君も俺のことが――」
「いや、レッジさんが、『相手の言葉じゃないと伝わらないんじゃないか』って仰ってまして」
「……へ?」
思わぬ人物からの助言に、レッドパッション=ジュテームも素の声を出して驚く。硬直する彼に、レティは更に代弁を続ける。
「エンジェルはT-3さんによって生み出されたとはいえ、大半は改良された原生生物であるシュガーフィッシュ由来ですから。まずは彼女? に理解可能な言語を模索するところから始めないと、とのことです」
「えっ、は、え?」
レッドパッション=ジュテームには理解が追いつかない。否、彼のみならず、他の調査開拓員たちも似たような顔である。エンジェルを口説くためにはまず、理解可能な言語を模索する。どんな攻略方法だよ、と全員が唖然としていた。
「やっぱりレティ的にはダンスがいいのではないかと思いますよ。ボディランゲージは共通言語ですからね!」
「はぁ……」
自信満々に言い切るレティ。そんな彼女を、レッドパッション=ジュテームは力の抜けた顔で見ていた。
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Tips
◇レッドパッション・ローズ
栽培師:レッドパッション=ジュテーム
ある一人の男が、己の信じる愛と情熱の真紅を表すため、長い時間と凄まじい手間をかけて生み出された特別な薔薇。光にかざすことで豊かに変化する深い赤色が特徴。栽培の難易度は非常に高く、弛まぬ世話と繊細な管理が必要。これこそが愛と情熱の体現であるという言葉は決して過言ではない。
口に咥えても痛くないように棘が付かないようになっている。
“愛と情熱が燃え上がる!”――レッドパッション=ジュテーム
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