第1535話「戦争の気配」※
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FPO日誌
このブログはVRMMO、FrontierPlanetをプレイしている一般のおじさんが惑星イザナミでの出来事をぼんやりと記していく日誌です。
あまり有益な情報などはありません。
攻略情報は公式wikiかBBSのほうがいいでしょう。
上級者向けのものは「大鷲の騎士団(別窓)」や「ねこのあしあと(別窓)」へ。
あくまでも、平凡な日常を淡々と記したものであることにご留意ください。
メンバーからの許可を得たので、今後はバンド〈白鹿庵〉の活動日誌としても運営していきます。
その一環で、本人らからの要望を受けて記事中の画像にあったメンバーのプライバシー保護編集を消しました。
ゲーム内での問い合わせは〈白鹿庵〉リーダーのレッジまでお願いします。
#677「スイーツコンペティション“新たなる水平線へ! 爆食い気絶の血糖値スパイクスイーツコンテスト”が開催されます!」
第四次砂糖増産計画が目覚ましい成果を見せるなか、皆様どのようにお過ごしでしょうか。私はウェイドさんとの縁もあり、この計画中もちょこちょことオブザーバーのような形で参加しておりました。〈ナキサワメ〉をぶん回した際には大変ご迷惑をおかけしました。
さて、本日はタイトルの通りスイーツコンペティションの開催告知となっております。
こちら正式名称“新たなる水平線へ! 爆食い気絶の血糖値スパイクスイーツコンテスト”は第四次砂糖増産計画が佳境に入ったことを受けて、次なる段階へ進むべく管理者ウェイドが発起人となって企画された公式イベントとなります。『なぜ公式イベントをただの一般プレイヤーであるレッジが告知してるんだよ』という声も聞こえてきますが、実は先日ウェイドさんより直々にあるお誘いを受けました。というのが、このスイーツコンペティションにおいて審査員をやってみないかという話でして、こちら是非にとお引き受けした次第です。
まずスイーツコンペティション“新たなる水平線へ! 爆食い気絶の血糖値スパイクスイーツコンテスト”の概要についてお知らせいたします。
本イベントの企画趣旨としましては、先日開発され安定栽培にも成功している次世代の砂糖品種“ネオ・ピュアホワイト”(以下、NPW)の適切な利用方法の模索が第一となります。NPWは2,500PWという規格外の甘さとカロリーを有する革新的な品種であり、ウェイドが目標としていた基準を満たす栄養となっています。しかし、それ単体では摂食が非常に難しく、現状では一部の調査開拓員しか食べることができません。
そこで、“新たなる水平線へ! 爆食い気絶の血糖値スパイクスイーツコンテスト”ではNPWを用いたスイーツや料理をそれぞれに開発し、それを審査します。見事審査員のお眼鏡に適った作品は、調査開拓団の強い支援を受けて量産体制が整えられ、次のフィールドに向けた開拓進行の主装備として採用される予定です。
なお、今回のコンペは料理のアイディアを広く集めるという方針もあり、実際の調理時に
このスイーツコンペティションでなぜ私のような無名の若輩者に審査員の打診があったのか。この理由はシンプルで、私自身があまり甘味を得意としていないからです。そもそも味覚というものがリアルではほとんど喪失してしまっていることもありますが、基本的にはカフェオレよりもブラックコーヒーを好んできました。そんな私でも問題なく食べられる程度の料理、というものがこのスイーツコンペティションで求められています。
とはいえ、仮想現実内では人並み程度にスイーツを食べることもできますので、皆様、そう気負うことなくお気軽に参加していただけるとさいわいです。
なお“新たなる水平線へ! 爆食い気絶の血糖値スパイクスイーツコンテスト”の詳細につきましては管理者ウェイドからの発表およびイザナミ計画実行委員会の告知を確認いただきますよう。よろしくお願いいたします。
それでは、今日はこのあたりで。
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◇名無しの調査開拓員
コーヒーとかいうただ不味いだけの黒い液体wwwww
香り高い紅茶こそが至高ってイギリスの偉い人も言ってた
◇名無しの調査開拓員
紅茶なんて海に食わせとけよ
豆の繊細な機微を感じることもできねぇバカ舌がよ
◇名無しの調査開拓員
紅茶コーヒー論争なんて久しぶりじゃないか
◇名無しの調査開拓員
俺コーラ!!!
◇名無しの調査開拓員
小3みたいな奴おるな・・・
◇名無しの調査開拓員
うおおおおおおおおおおおおおおおおっっっっっ!!!?!?!
◇名無しの調査開拓員
うるせえ
◇名無しの調査開拓員
黙れ
◇名無しの調査開拓員
お、 FPO日誌更新されてるじゃん
◇名無しの調査開拓員
絶叫ニキが時報になってて草なんだ
◇名無しの調査開拓員
おっさん・・・・偉いこっちゃで
◇名無しの調査開拓員
なんてこったい
◇名無しの調査開拓員
マジか
◇名無しの調査開拓員
何があったの?
URL貼ってくれないと分からないよ
◇名無しの調査開拓員
ブクマしろ定期
◇名無しの調査開拓員
完全に公式の告知垢みたいになってて笑っちゃった
公式イベントでるとかさ
◇名無しの調査開拓員
今更って話ではある
おっさんなんか幻聴聞こえてるよ? 一般人??
◇名無しの調査開拓員
スイーツコンペねぇ
まあNPWの使いにくさは分かってたし、妥当な展開かもしれんが・・・
◇名無しの調査開拓員
にしてもおっさんが審査員か
一応審査委員長はウェイドらしいけど
◇名無しの調査開拓員
ウェイド狙いならとりあえず甘さマシマシにしとけば良かったけど、おっさんが入ってくるなら話変わってくるな
てかおっさんリアルだと味覚ないってどゆこと???
◇名無しの調査開拓員
何気におっさん考察勢に爆弾投下されたな
やっぱ水槽の脳説が濃厚になってきた?
◇名無しの調査開拓員
謎すぎるんだよな、おっさんの素性
平日もログインしてるし、えらい高価なVRシェル使ってる説あって、超大金持ちFIREおじさんって話もあったけど
◇名無しの調査開拓員
やばい、騎士団がNPWを根こそぎ買い集めてる
◇名無しの調査開拓員
七人の賢者の人たちが市場ごと買い取ろうとしてる
◇名無しの調査開拓員
えらいこっちゃ・・・戦争や・・・
◇名無しの調査開拓員
何やってんだおっさん!!!!
◇名無しの調査開拓員
うわああああっ!? ウチの農場に隕石が!!!
って思ったら赤兎ちゃんだったんだけど、何があったの?
◇名無しの調査開拓員
もう各所で被害出始めてて草なんだ
◇名無しの調査開拓員
おっさんが審査員を務めるスイーツコンペが開かれるよ
理由の説明はそれだけで十分だよな?
◇名無しの調査開拓員
おk把握
◇名無しの調査開拓員
話がはやい
◇名無しの調査開拓員
いやー、これ真面目にかなりやばいな
おっさんが審査する云々抜きにしても、優勝作品は次の開拓で使われるんだろ? めちゃめちゃ利益出るぞこれ
◇名無しの調査開拓員
あー、主装備になるってそういうことか。このゲーム権利持ってるだけでひと財産築けたりするしなぁ。レシピを登録すりゃあ寝てるだけで金が稼げる。
◇名無しの調査開拓員
けど厳しいぞこの条件
NPWをブラックコーヒー好きのおっさんが食べられるくらいにしないといけないんだろ? しかし希釈もできないし
◇名無しの調査開拓員
公式HPの方にレギュレーション書かれてるな
最終的な実感糖度は無制限だけど、カロリーが1単位あたりで最低50,000キロって頭おかしいんとちゃう?
◇名無しの調査開拓員
成人男性の1日の標準摂取量ぶっ飛ばしてて草
どんな旅を想定してんだよウェイドちゃん
◇名無しの調査開拓員
1単位ってことは、クソでかホールケーキにしてもいいのか
◇名無しの調査開拓員
別にいいけど、携帯性の観点でマイナス付けられそう
◇名無しの調査開拓員
審査項目は、可食性、携帯性、保存性の3点か
可食性は食べやすさ、おいしさあたりかな。携行食なので運搬と保存のしやすさも見られると。
◇名無しの調査開拓員
結構難しいなこれ
◇名無しの調査開拓員
真面目に考察するとめちゃめちゃ面倒な条件だな
いっそ錠剤型にしてカプセルに封じた方がいいんじゃないの?
◇名無しの調査開拓員
もう〈オリガミ製薬〉が試作品出してるよ
◇名無しの調査開拓員
やっぱ手が早いバンドは動き出してるか
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「ほぁあああああっ!?」
終業し、帰宅後すぐにFPOへログインしたラクトは、開口一番に悲鳴を上げる。自作の簡単なスクリプトを用いてログイン時に FPO日誌の更新通知が来るように設定していたのが功を奏した。彼女は数分前に更新されたばかりの記事を読み、驚愕の展開を目の当たりにしたのだ。
「れ、レッジがスイーツコンペの審査員!?」
他の情報は重要ではないので捨象するとして。彼女の優秀な頭脳は高速で回転を始め、一つの結論を出した。それすなわち、少しでも多くのNPWを買い集めることだった。
「やばいやばいやばいやばい、もう相場が崩れ切ってるはず!」
レッジの記事公開の直後から、砂糖の価格は急激に上昇していた。金に糸目をつけないトッププレイヤーたちが売り手の言い値でNPWを買い集めているのだ。彼らの目的はただ一つ、コンペに向けた検証である。
このコンペで優勝すれば、買い集めるために使った金など砂粒のように思えるほどの大金が転がり込んでくるのだ。――だが、一部のプレイヤーはまた別の思惑で動いている。
「ま、まあわたしもリアルで料理習い始めて結構経つし、ちょっと腕試し的な? やってみてもいいかなって、思っただけだし!」
誰にというわけでもなく言い訳をしながら市場へと急ぐラクト。彼女の脳裏には、数人の友人の顔が浮かんでいる。彼女たちは〈調理〉スキルを持っているわけではないが、この千載一遇のチャンスを逃すはずがない。ある者は農場を直に襲撃して砂糖を集めているだろう。またある者はトップバンドとしての資金力を使って市場を侵蝕しているはずだ。
だからこそ、ラクトも出遅れるわけにはいかなかった。
「おっちゃん、ネオピュアホワイトちょうだい! 在庫全部!」
「うおおおっ!? 今の相場だと、大体……キロ500kだぞ?」
商人は〈取引〉スキルによって、リアルタイムなアイテムの価格を知ることができる。その料理素材店の店主も、急激な価格高騰に驚きつつラクトに問いかけた。
いくらネオピュアホワイトが最新の品種とはいえ、その精製砂糖の価格がキロ100kを超えることはなかった。平時の5倍を飛び越える相場の上昇は、店主さえもにわかには信じ難いものだ。
「いいから! 在庫全部!」
「お、おお……」
だがラクトに逡巡している暇はない。刻一刻と価格は上がり続けるだろう。だが、それ以上に――彼女は作らねばならないのだ。彼に贈るための最高のスイーツを。
曲がりなりにもトップ帯に位置する〈白鹿庵〉の固定砲台を務めるラクトはかなりの稼ぎを持っている。その上で趣味と呼べるのはアーツチップ集めくらいのもので、使うあてがほとんどなく、ビットは口座に積み上がっていた。
それを今こそ、解放する。
取引を逡巡なく承諾し、店の在庫全て――7,000kgに上るNPWを買い占める。店主は目を白黒させていたが、彼に一言残す時間も惜しい。ラクトは疾風のように店を飛び出し、別の店へと向かうのだった。
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Tips
◇『相場解析』
〈取引〉スキルレベル70のテクニック。調査開拓団の経済システムにアクセスし、特定の商品の取引相場を確認する。スキルレベルおよび熟練度が上がるほど、解析可能なデータ量が増加する。
“市況を見極めることこそが大成の秘訣です。脳が痺れるほどの情報量を浴びてこそ、商人は鍛えられます”――指揮官T-2
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