第1481話「脱獄犯達」※
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◇名無しの調査開拓員
【悲報】おっさん、敵に寝返る
◇名無しの調査開拓員
またかよ
◇名無しの調査開拓員
いつものこと定期
◇名無しの調査開拓員
レイドボスになった経歴持ちの一般男性プレイヤーやぞ
◇名無しの調査開拓員
骨塚すげぇな。おっさんがテントに立て籠って、ウェイドが警備NPC仕掛けてる
なんでかカミルと重機ふたりが参戦しとる
◇名無しの調査開拓員
NPCに恨まれNPCに愛される男
◇名無しの調査開拓員
ぶっちぎりで命令違反なんだろうけど、カミルちゃんとか良く動けるな
◇名無しの調査開拓員
協調性ゼロだからじゃない?
◇名無しの調査開拓員
そういやそうだったわ
◇名無しの調査開拓員
773と385は監視者がおっさんに移ってるんだっけ?
ウェイドちゃんも迂闊やね
◇名無しの調査開拓員
ちゃんと〈白鹿庵〉のメンバーとかアストラとかは拘束されてますけども
◇名無しの調査開拓員
詰めが甘い!
◇名無しの調査開拓員
うぉわあああっ!?
なんかウェイド軍にミサイル飛んできたんだが!?
◇名無しの調査開拓員
警備NPCが景気良く吹き飛んでるなぁ
◇名無しの調査開拓員
あー、ワダツミ近海にクチナシちゃん来てるね
◇名無しの調査開拓員
海軍戦力まで来ちゃったよ
◇名無しの調査開拓員
いつの間にミサイル積んでるんだよ!!
◇名無しの調査開拓員
射程すごいな。いくら霧森とはいえ骨塚って海からかなり遠いだろ。
◇名無しの調査開拓員
ワダツミの水上機動NPCがスクランブル発進しとるわ
◇名無しの調査開拓員
おっさんの虎の子ワダツミちゃんが負けるという発想すらないわ
◇名無しの調査開拓員
ブラックダークちゃんが敵になった時よりも状況やばくないか?
◇名無しの調査開拓員
とりあえずおっさんが崩壊した瓦礫の城主にならないようにしないとな
◇名無しの調査開拓員
そう考えるとNPCを無計画に仕掛けるのも考えものだなぁ
あれは神格実体が必要だったとはいえ、おっさんならNPC取り込んでテントのパーツにするとかできそうだし
◇名無しの調査開拓員
下手に嗾けると逆に相手が強くなるのか
◇名無しの調査開拓員
厄介ボスすぎるだろ
◇名無しの調査開拓員
俺、おっさんと戦いたいんだけど、ウェイド側に加勢ってできる?
◇名無しの調査開拓員
今の所は管理者側で決着つける方針みたいだね
おっさんの抵抗が長引けば、俺たちも参加できるかもしれん
◇名無しの調査開拓員
頑張れおっさん! 負けるなおっさん!
◇名無しの調査開拓員
ところでバリテンさんは何してるんすか?
◇名無しの調査開拓員
おっさんのテントでスヤスヤしとる
◇名無しの調査開拓員
ずっと寝てるんだよなぁ
おっさんがなんで近づけたのかよく分からん
◇名無しの調査開拓員
絆……っすかね……
◇名無しの調査開拓員
杯交わした仲だからな
◇名無しの調査開拓員
ズッ友ってコト?
◇名無しの調査開拓員
おっさんならワンチャンありそうだから困る
◇名無しの調査開拓員
ついにNPCだけでなくエネミーまで手懐けてしまうのか
◇名無しの調査開拓員
赤兎ちゃんたちは元気してるかねぇ
◇名無しの調査開拓員
とりあえずシフォンちゃんが鳴いてることだけはわかる
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「はええん……」
〈ワダツミ〉中央制御塔地下の人工知能矯正室。問題を起こした調査開拓員やNPCが捕縛、拘禁される監獄に、〈白鹿庵〉のメンバーも投げ込まれていた。手錠と足枷で動きを封じられ、インベントリ内のアイテムから武器や防具、アクセサリーに至るまで全てを押収された彼女達は、もはやなす術なく項垂れる他なかった。
「うう、おじちゃんなんて馬鹿なことを。ウェイドに勝てるわけがないでしょ」
何度目かのため息を漏らし、管理者に反旗を翻したレッジの身を案ずるシフォン。彼女はこの絶望的な状況に打ちひしがれていた。
カリ……。
「まあ、なんとなくこうなる気はしてたけどねぇ」
「それでも説明してほしかったわ。急に拘束されて牢屋に入れられちゃったんだもの」
はえんはえんと悲泣するシフォンとは異なり、ラクトとエイミーは気楽だ。手足が不自由とはいえ、それなりに広い牢屋にまとめて収容されているため、会話はできる。お互いに「レッジならやると思っていた」と主張する。
エイミーに至っては、レッジよりも管理者側に苦言を呈するほどだ。
カリ……。
『Shout up. あなた方にも嫌疑が掛けられています。レッジさんのテントを開く手伝いをするなら、減刑も考慮されますが?』
格子の外から声をかけたのは、ウェイドに変わって彼女達の監視をしているワダツミだった。どこから調達してきたのか警察の制服のような衣装に着替え、サングラスをかけて警棒を携え、腰には銀色の手錠まで下げている。
「我々にも、あのテントをどう破ればいいかは分かりませんよ。残念でしたね」
「というか、ワダツミさん結構ノリノリじゃない?」
床に正座し、背筋を伸ばして押し黙っていたトーカが片眉を上げる。Lettyは、形から入るタイプだったワダツミに意外な印象を抱いていた。
Lettyの指摘に、毅然とした態度を保っていたワダツミがわずかに肩を脱力させる。
『Ah……。まあ、正直な話をするとですね』
彼女はぺちぺちと警棒で手のひらを叩く。
カリ……。
『T-1たち指揮官からは、現場にて対処せよという指令しかありませんので。これだけの規模ならウェイドへの全権委任をやめて、直接指揮を執ってもおかしくないのですが』
「なるほど。そうしない理由があると考えてるわけね」
「はええ……」
エイミーのレスポンスに、ワダツミは浅く頷く。
調査開拓員が反旗を翻し、更にNPCまでもがそれに加勢する。明らかな異常事態にも関わらず、なぜか上層部は静観を続けている。その態度そのものが、ワダツミには疑念を抱かせていた。
ウェイドだけは頭に血が上っているようだが、他の管理者たちについても同様である。
「なんか面白そうな展開だねぇ。本人達に聞いてみる?」
『No. T-1たちは現在連絡が取れませんよ』
疑念が深まる。
カリ……。
「それで、レティはさっきから何してるの?」
「ひょわっ!?」
先ほどから小さく聞こえる音に、エイミーがいよいよ意識を向ける。壁際に身を押し込めるようにして息を殺していたレティは、露骨に驚いて飛び上がる。
「あ、いやその……」
『What’s!? レティさん、あなた何してるんですか!』
「ち、違うんですこれは。ちょっと換気をよくしようと!」
『ホワーーーッ!?』
立ち上がり両手を広げ弁明するレティ。彼女の声とは裏腹に、壁に大穴が現れる。特殊多層合金装甲製の牢屋が、虫食いのように破られていた。
ありえない光景にワダツミが悲鳴を上げる。
「脱獄だなんて、大胆なことするわね」
「どうやって掘ったの?」
「だってレッジさんが心配で……。あ、穴は〈破壊〉スキルと〈体術〉スキルでちょっとずつ」
「あら、〈体術〉なんて持ってたっけ?」
「さっき上げ始めました。ここの壁、経験値効率がまあまあ良いみたいで、今レベル15です」
『何を呑気に! Stop!! 今すぐそこから離れなさい!』
レティは今まで上げてこなかった〈体術〉スキルに手を出し、拳と爪先を使って穴を掘っていた。あまりにも大胆な行動だったが、〈体術〉スキルは唯一武器を持たずとも素手で機能することもあり、理にかなってはいた。
ワダツミが慌てて牢屋へ入ろうと電子錠を操作する。もたつきながらも格子戸を開き、一歩中に入った瞬間。
「……ごめん」
『はわっ!? きゅぅ……』
影に潜んでいたミカゲが手刀を落とす。一瞬、たったの数秒だけワダツミの意識が乱れた。その刹那を突いて、レティたちは牢屋の外へと飛び出した。
「すみません、ワダツミ! 後でお詫びしますから!」
『ちょっ、なっ、コラーーーッ!』
ミカゲの早技によりワダツミの手首は手錠で格子に繋がれる。謝るレティに拳を振り上げるも、追いかけることはできない。彼女は慌てて緊急事態を宣言し、中央制御塔にけたたましいアラートが鳴り響いた。
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Tips
◇警吏の黒装
法の執行者たる純黒の礼装。その身に纏うは絶対守護の誓約なり。
“ミニスカポリスっていいよね”――シルキー縫製工房デザイン設計担当
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