第1064話「兄妹決闘」※
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◇ななしの調査開拓員
寝て起きたら戦場にボスがいた件
◇ななしの調査開拓員
あの眠りは抗えねぇよ
気づいたらバックアップセンターだった
◇ななしの調査開拓員
中継見てたけどアレえぐいな。副団長の子守唄はママみが強くて良かったけど、その後淡々とレイピアで首ブッ刺されて殺されてるのキツかった。
◇ななしの調査開拓員
一応全年齢のはずだけど、最近は表現規制も緩くなってるしなぁ
◇ななしの調査開拓員
そして出てくるデカ狐ちゃん
◇ななしの調査開拓員
あれ前にも見たよね。シフォンちゃんだっけ
◇ななしの調査開拓員
ま た 白 鹿 庵 か
◇ななしの調査開拓員
クソデカ狐、流石に強いみたいね。レティちゃんもアイちゃんもぶっ飛ばされてた
◇ななしの調査開拓員
あれなんのスキルなんだろ
アーツとかであんなんあったっけ?
◇ななしの調査開拓員
機術兵装はあるけど、あんなデッカいのはないな
◇ななしの調査開拓員
あるとしたら三術系か?
シフォンは占術しか持ってないはずだけど
◇ななしの調査開拓員
あれいつぞやのダミープログラムだよ
◇ななしの調査開拓員
おっさんがボスになったやつか
◇ななしの調査開拓員
アレの時にシフォンちゃんと一部のプレイヤーはダミープログラムと和解して、なんかそのまま有耶無耶になってた。
◇ななしの調査開拓員
トリガーはシフォンが寝ることかな
◇ななしの調査開拓員
多分そうかも? 解析班の報告待ちだけど。
◇ななしの調査開拓員
うおおお、狐ちゃんがおっさんのテント(鹿頭ロボット)を!
◇ななしの調査開拓員
テント(鹿頭ロボット(全長20m越え))が!
◇ななしの調査開拓員
テントってなんだっけ
◇ななしの調査開拓員
なんでシフォンちゃんがテント壊してんの?
◇ななしの調査開拓員
見事なテールアタック
もふもふで気持ちよさそう
◇ななしの調査開拓員
ええっ
◇ななしの調査開拓員
ええ・・・
◇ななしの調査開拓員
なんか出てきた
◇ななしの調査開拓員
おっさん、お前頭しか残ってねぇじゃねぇか!
◇ななしの調査開拓員
キモすぎる
◇ななしの調査開拓員
これが人畜無害な一般調査開拓員の姿かよ
◇ななしの調査開拓員
この前の針蜘蛛よりもキモいな
◇ななしの調査開拓員
カサカサ動くな
◇ななしの調査開拓員
レティちゃんもこれにはにっこり
◇ななしの調査開拓員
えっ
◇ななしの調査開拓員
なんで爆発!?
◇ななしの調査開拓員
え、いつの間にか地雷仕掛けてたの?
マジで?
◇ななしの調査開拓員
エグすぎる
◇ななしの調査開拓員
レティちゃん片足吹っ飛んでますが
◇ななしの調査開拓員
それくらいハンデにもならん
◇ななしの調査開拓員
圧倒的ではないかおっさんは
◇ななしの調査開拓員
おっさん卑怯すぎない?
◇ななしの調査開拓員
お座りしてる狐ちゃんかわいいね
◇ななしの調査開拓員
うわあああ!!!!
◇ななしの調査開拓員
小せえ蜘蛛はやめろ!!!!!
◇ななしの調査開拓員
きもいきもいきもいきもい
◇ななしの調査開拓員
きついつらいなにこれ
◇ななしの調査開拓員
あれも爆発すんのかよ!
◇ななしの調査開拓員
おっさん、やってることと笑ってる姿がどうみても悪の親玉
◇ななしの調査開拓員
もうあの人がボスだろ
◇ななしの調査開拓員
あいつ倒したらおわるんじゃない?
◇ななしの調査開拓員
これにはソロボルもドン引き
◇ななしの調査開拓員
ソロボル君、ほら喜べよ。戦いだぞ。おい、目を逸らすな。おい。
◇ななしの調査開拓員
我々は何を見せられてるんです?
◇ななしの調査開拓員
うおおおおおっ!?
◇ななしの調査開拓員
まーた絶叫か(耳が)壊れるなぁ
◇ななしの調査開拓員
鼓膜破れた
◇ななしの調査開拓員
パーツ交換しろ
◇ななしの調査開拓員
衝撃波よりも範囲は小さい? ていうかダメージなさそう?
◇ななしの調査開拓員
地雷と蜘蛛を破壊するための攻撃っぽいな
◇ななしの調査開拓員
汚ねぇ花火だぜ
◇ななしの調査開拓員
おっ、これでみんな起きてきたな
◇ななしの調査開拓員
おっさんグッジョブ
◇ななしの調査開拓員
目覚まし機能つきだったか
◇ななしの調査開拓員
レティちゃんさんクソ強え
◇ななしの調査開拓員
なんかLP減るごとに強くなってる?
◇ななしの調査開拓員
『起死回生』あたり積んでるんだろ。効果量がチートだが。
◇ななしの調査開拓員
おっさんと狐ちゃんでなんとか抑えてるって感じだな。アイちゃん参戦したらやばいぞ。
◇ななしの調査開拓員
起き出した連中はなにしてんだよ。
◇ななしの調査開拓員
寝起きに戦いは無理だって
◇ななしの調査開拓員
うおおおおっっ!!!!!
◇ななしの調査開拓員
きたっ! アストラきた!
◇ななしの調査開拓員
団長キターーーーーー!
◇ななしの調査開拓員
復活!!! 団長復活!
◇ななしの調査開拓員
勝ったな風呂入ってくる
◇ななしの調査開拓員
何げにこっちも兄弟対決か
◇ななしの調査開拓員
兄より強い妹など
◇ななしの調査開拓員
面白くなってまいりました
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剣戟が連続する。硬質な音が無数に重なり合い、肉厚な両手剣と細いレイピアが衝突する。二つの刃は絡まるように打ち合い、銀の燐光を撒き散らす。その速度はもはや常人の追いつけるそれを越え、荒野で目を覚ました調査開拓員たちは唖然としてそれを見守るほかなかった。
「『断罪の両断』ッ!」
アストラの扱う両手剣は重量級の武器に分類される。レティや光の持つ特大武器ほどではないが攻撃速度が遅く、攻撃力が高い傾向にある。それを彼は重点的に伸ばした腕力ステータスや装備効果によって十全に扱える状態を整え、両手と片手を細やかに切り替えながら使っていた。
『断罪の両断』は対象のマスクされたステータスであるカルマ値を参照する、比較的実装の新しいテクニックであった。カルマ値がプラスにある対象に対してはさほど効果を発揮しないが、“消魂”バフのついたモデル-ヨーコのプレイヤーなどに対しては高い攻撃倍率を誇る。アイのカルマ値についてアストラが確認することは叶わないが、彼は状況を鑑みて、“竜の化身”となった彼女のそれがマイナスに傾いていることを信じて放った。
しかし、彼の予想に反して断罪の刃はアイのLPをさほど減らさない。“竜の化身”バフによる防御力の超強化を考えても、そもそものカルマ値がさほど減少していない可能性の方が高かった。内心でほぞを噛むアストラに、今度はアイが無数の斬撃で攻める。
「『レイン・スラッシュ』」
兄の両手剣とは対照的に、アイの扱うレイピアは軽量高速低威力の武器種として知られる。一発の威力が低い代わりに目にも止まらぬ連撃を繰り出すことで相手を圧倒する。特にレイピアは刀剣カテゴリにありながら、点の攻撃を得意とする刺突武器である点が特徴的であった。
刺突攻撃を真正面から受けると、距離感が掴めず避けにくい。また刺突攻撃に乗せられた貫通属性は的確に急所を捉え、出血や麻痺などの状態異常を誘発する。
本来の『レイン・スラッシュ』はその名前の通り、驟雨の如き刺突を矢継ぎ早に繰り出すものだ。下手な鉄砲に準えるように、点攻撃の弱点である命中率を数で補うガムシャラな技である。
しかし、それを卓越した剣技と経験を持つアイが扱えばどうなるか。
「くっ! 面倒な!」
全ての突撃が的確に急所を狙う、必中の連撃となる。それはアストラの特注の銀鎧を襲い、その僅かな隙間を的確に穿つ。洗練された刺突は狙いを外さず、アストラの関節や急所を次々と貫いた。
あまりに正確無比なレイピアの嵐に、アストラでさえも思わず苦悶の表情を浮かべて後方へ飛び退く。最強の名を欲しいままにするアストラが退いたことに、周囲の者たちがざわめいた。
「『翼竜の爆哮』ッ!」
そして、アイを相手取るアストラにとって、距離を取るという行為は悪手であった。
両手剣とレイピア、両者を比べた際により広い範囲を間合いに収めるのは前者である。特にアストラの持つ剣は両手剣の中でも長い部類であり、刃渡りは180cmを越える。一方のレイピアは刃渡り50cmほどであり、前後に動かす刺突武器の性質を考えても、間合いは狭いと言わざるを得ない。
しかし。
アイの武器はレイピアだけではない。彼女はアストラが離れたのを見て、即座に胸を膨らませる。極限まで圧縮した空気を勢いよく解放させ、風の弾丸として吐き出す。それは耳朶を打つ爆音を伴って突出し、アストラの胸を撃った。
「ぐあっ!?」
たまらず声を上げるアストラ。彼の体が無防備に宙へ浮かぶ。その隙を狙い、アイは一瞬で間合いを詰めた。
「――『ゲイルスラッシュ』」
旋風を帯びた猛烈な突撃。勢いを乗せた刺突は絶大な破壊力を孕み、渦巻く凶暴性を封じている。それがアストラの銀鎧を、真正面から叩く。高度上質精錬特殊合金製の真新しい鎧が呆気なくひしゃげる。深く凹んだ板金はアストラの胸部を圧迫し、ひいてはその中央に取り付けられた調査開拓員の急所、八尺瓊勾玉に負荷をかける。
アストラの視界が赤く染まり、危険状態を示すアラートが鳴り響く。
「――『ピアシングスラスト』」
アイは冷静に最も効果的な技を選び取る。
『ピアシングスラスト』。それは薄い鋼鉄ならば容易く貫き、その奥の柔らかな急所を切り裂く貫通ダメージ加算のテクニック。その青い輝くを乗せたレイピアが、アストラの胸へと迫る。
「『白刃取り』」
だが、それが八尺瓊勾玉を砕くことはなかった。
勝利を確信していたアイも、周囲で最強の陥落を見守っていた調査開拓員たちも、理解が遅れる。どうしようもなく体勢を崩し、もはや死を受け入れるのみだったはずの青年が、口元に笑みを浮かべて立っている。
彼の突き出した手が、アイのレイピアを握っていた。
籠手の隙間から青い血が流れ出す。しかし、それはアストラを死に至らしめるほどのものではない。
「レイピアの刺突を……」
「と、取ったのか……?」
群衆に動揺が走る。
『白刃取り』は〈剣術〉スキルと〈戦闘技能〉スキルを条件とする複合テクニックでありながら、その性能を見てネタ技に分類されるものだった。その効果は“極短時間、両手のひらにのみ高い斬撃耐性を付与する”というもの。つまりは、迫り来る剣を手のひらだけで受け止めること、それだけに特化したテクニックである。
重量型の大剣などは、手のひらだけで受け止めることはできない。速度型のレイピアなどは、早すぎて反応できない。故に出番が余興以外に存在しないネタ技。それが体勢の認識であった。
しかし、アストラはそれを使い、この状況でアイのレイピアを受け止めた。『白刃取り』の効果によって斬撃属性の攻撃はほとんど通らず、刺突属性もまた刃を側面から握り込んだことで及ばない。
「――『翼竜のッ」
剣を掴まれたアイは立場が逆転したことに気付く。即座に『翼竜の爆哮』を放ち距離を取ろうとする。しかし、アストラはそれを許さない。
「『握撃』『顎砕き』」
「ごっ!? がはっ!」
レイピアを掴んでいた手が、アイの手首へと滑る。驚異的な握力で引き寄せることでアイの体勢を崩したアストラは、すかさずもう片方の手で拳を作り、突き上げる。それはアイの顎へ衝突し、そして砕く。
可憐な少女の頭部が損傷する。下顎を失い、破れたスキンに青い血が滲む。
「声が出なければ、ただの軽装剣士だ。純粋に剣技だけを競おう」
無慈悲なアストラの冷徹な瞳がアイを貫く。声を失った“竜の化身”は憤怒に震え、勢いよく飛び出した。
━━━━━
Tips
◇『白刃取り』
〈剣術〉スキルレベル5、〈戦闘技能〉スキルレベル10の複合テクニック。繰り出された斬撃を手のひらで挟んで受け止める。言うは易し行うは難しの達人の技。
極短時間、両手のひらにのみ高い斬撃耐性を付与する。熟練度の上昇、および関連スキルレベルによって効果時間が延長される。
“向けられた白刃は何よりも恐怖である。それに打ち勝つ信念こそ、必勝の故である。”
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