第1056話「戦場の支配者」※

━━━━━

◇ななしの調査開拓員

騎士団壊滅してて草


◇ななしの調査開拓員

騎士団の完全防御体勢が紙になるってどんだけだよ


◇ななしの調査開拓員

赤兎と人斬りだとねぇ

しかたない


◇ななしの調査開拓員

どっちも攻撃力に全てを賭けてるタイプだからな。そのぶん防御力は低いと思いたいんだが……。


◇ななしの調査開拓員

騎士団の範囲殲滅攻撃を凌ぎ切る時点でもう絶望的じゃないですか?


◇ななしの調査開拓員

そうなんだよなぁ


◇ななしの調査開拓員

ワイ騎士団盾兵。知らん間に死に戻る。


◇ななしの調査開拓員

第二次戦線も突破されるかな


◇ななしの調査開拓員

副団長のブレスで崩壊しとるやんけ!


◇ななしの調査開拓員

まさかの前衛2人が到達する前に崩壊かぁ


◇ななしの調査開拓員

第三次戦線も間に合うかこれ?


◇ななしの調査開拓員

間に合わなさそう


◇ななしの調査開拓員

だめみたいですね


◇ななしの調査開拓員

あっ


◇ななしの調査開拓員

おっ


◇ななしの調査開拓員

おお!


◇ななしの調査開拓員

白鹿庵きたーーーーーっ!


◇ななしの調査開拓員

おっさん以外の白鹿庵全員か


◇ななしの調査開拓員

仲間の責任は取ってくださいよ

お願いします


◇ななしの調査開拓員

やっちゃえ白鹿庵!


◇ななしの調査開拓員

とはいえ冷静に考えるとなんで騎士団員数十人で抑えきれなかった2人をたった5人で抑えてるんですか?


◇ななしの調査開拓員

そりゃあ仲間だからだろ


◇ななしの調査開拓員

前衛2人の攻撃、見切ってる感じがするなぁ

特に忍者


◇ななしの調査開拓員

忍者くん毎日のように闘技場で扱かれてたからね。そりゃあ慣れるさ。


◇ななしの調査開拓員

トーカちゃんみたいな姉が欲しい人生だった


◇ななしの調査開拓員

ほんまか?


◇ななしの調査開拓員

せやろか


◇ななしの調査開拓員

嬉々として人を切りに行くような獰猛な姉は嫌なんですが・・・


◇ななしの調査開拓員

姉にしたい人ならやっぱエイミー一択


◇ななしの調査開拓員

エイミーは年齢的におかあ


◇ななしの調査開拓員

↑のコメントはBANされました


◇ななしの調査開拓員

言っちゃったな


◇ななしの調査開拓員

ナムナム


◇ななしの調査開拓員

レティちゃんもどっちかっていうと妹っぽいしなぁ

Lettyちゃん参加で双子の姉妹みたいにはなったが


◇ななしの調査開拓員

なんやかんやでラクトちゃんなんだよなぁ


◇ななしの調査開拓員

シフォン「」


◇ななしの調査開拓員

うおっと、そろそろ副団長ブレスが来るか


◇ななしの調査開拓員

耳塞げ!


◇ななしの調査開拓員

は?


◇ななしの調査開拓員

えっ


◇ななしの調査開拓員

なにがどうなりましたの?


◇ななしの調査開拓員

なんか空間歪んだ?


◇ななしの調査開拓員

白鹿庵メンバーは気軽に空間を歪めるな


◇ななしの調査開拓員

あれは何がどうなったんだ?

なんかシフォンちゃんがなんかやった感じがするけど


◇ななしの調査開拓員

ラクトが氷壁で緩衝した?


◇ななしの調査開拓員

いやぁ、あれで緩衝はできないだろ


◇ななしの調査開拓員

エイミーが全部防いだ


◇ななしの調査開拓員

音波をジャストガードってどういうことですか


◇ななしの調査開拓員

騎士団盾兵、あれできる?


◇ななしの調査開拓員

できるわけないだろうが


◇ななしの調査開拓員

アホ抜かすな


◇ななしの調査開拓員

なんとなく分かった。

シフォンちゃんがなんやかんやで衝撃波を一方向に纏める。

ラクトちゃんが等間隔で氷壁を並べて、衝撃波の到達タイミングを正確に知らせる。

エイミーさんがそれを聞いてジャストガード。


◇ななしの調査開拓員

なんやかんやってなんだよ


◇ななしの調査開拓員

ていうか氷壁が砕ける音も音速なんだから、衝撃波と同じタイミングなんじゃ……


◇ななしの調査開拓員

音より目視確認だろうな

にしても意味わからんが


◇ななしの調査開拓員

ラグ許容1秒もねぇだろ


◇ななしの調査開拓員

あ、あたまがおかしい……


◇ななしの調査開拓員

白鹿庵攻勢に出たな


◇ななしの調査開拓員

副団長ブレスは連発できないっぽいし、今のうちに前衛2人潰すプランかな


◇ななしの調査開拓員

流石にあのブレス迎撃は何回もできないだろうしなぁ


◇ななしの調査開拓員

ところでおっさんは何やってるんです?


◇ななしの調査開拓員

後方でなんか準備してる


◇ななしの調査開拓員

おっさんがなんか準備中ってだけで嫌な予感がしてくるな


◇ななしの調査開拓員

頼むからこれ以上設備に被害は出さないでくれよ


━━━━━


 最前線では、レティたちとラクトたちが戦っているようだ。アイによる衝撃波を凌いだ彼女たちに、後方に控えるプレイヤーたちもどよめいていた。そして、すぐさま記録した映像が解析に回され、シフォンたちが行った衝撃波防御策が再現できないかの検討に移っている。

 後方もまた、戦場だ。彼らは次々と物資を運び込み、情報を整理し、戦術を組み立ていく。そうして、決戦のため武器を研いでいる。


「ケーブル接続完了。エネルギー供給開始」

「充填率5%。順調に増加中」

「左腕装甲増設完了」


 そして、俺もまた同じだ。

 ラクトたちが時間を稼いでくれている間に、決着をつけるための準備を進めている。リアルタイムで上がってくる情報を元に装備を吟味し、取り付けていく。周囲では〈ダマスカス組合〉の職人たちが忙しなく動き回っていた。


「レッジさん、展開率はどれくらいですか」

「ようやく55%だ」

「へっ。流石に時間がかかるな」


 手元のウィンドウを見て答えると、通りがかったクロウリが笑う。

 第二フェーズ開幕直後から展開を始めているだが、まだようやく折り返したところだ。完成まではまだまだ時間がかかる。


「流石にこの規模になると、俺も動かしたことがないからなぁ」

「開拓団の技術の粋を集めてんだ。分野も理論もごちゃ混ぜだから、繋げるだけでも一苦労さ」


 俺が展開しているテントは、現在進行形で生産が行われている特殊なテントだ。〈ダマスカス組合〉が内部機構を担当し、〈プロメテウス組合〉が外部装甲を受け持っている。それだけではない。〈ビキニアーマー愛好会〉や〈グラスフィールド〉〈キバヤシ組〉――他にも多くのバンドが協力してくれている。もちろん、組織に所属していな個人の職人も。

 それだけ多くの手を借りる必要があるほど、前代未聞のテントである。


「ラインF暴走! 出火しました!」

「消火急げ! 代替ラインで間に合わせてる間に修復しろ!」


 それ故に、至る所でトラブルも発生している。そのたびにクロウリたちベテランの職人が飛び回り、処置を施していく。


「前線の様子は?」

「Lettyがレティと戦ってるみたいだ。流石におんなじスキルビルドにしてるだけあって、互角だよ」

「普段から一撃被弾したら落ちるのはおんなじだからか。もうちょっと堪えてくれよ……」


 前線の様子が気になって焦燥感が募る。しかし、今俺にできるのは少しでも早くテントを完成させることだ。


「第一ブロック作業完了です!」

「第二ブロック完了!」

「第四ブロック完了しました!」


 側で情報通信を担当していたプレイヤーが次々と声を上げる。


「第三ブロックに応援を。第五、第六も急げ!」


 それを聞いて、クロウリも即座に指示を出す。俺の目の届かない場所でも、力を貸してくれているプレイヤーが大勢いるのだ。彼らのためにも、失敗はできない。


「ええい、最後のピースはまだ届かんのか!」


 声を荒げるのは〈プロメテウス工業〉のタンガン=スキーである。クロウリたちがそれを諌めていると、ちょうどよく頭上から影が落ちてきた。顔を上げると、〈ダマスカス組合〉の大型輸送機がホバリングし、後部ハッチを開いているところだった。


「来たぞ!」

「クッション持ってこい!」


 土地の狭い環境のため、輸送機が着陸することはできない。すでに用意されていた分厚いクッションが機体の真下に置かれて、荷物の到着を待つ。

 そうして、ハッチから1人のタイプ-ゴーレムのプレイヤーが顔を出した。


「持ってきたわよ!」

「ありがとう、ネヴァ!」


 対“竜の化身”用に建造が続く特殊テント。その最後の部品。

 遠く離れた〈スサノオ〉の工房でそれを作ってくれていたネヴァが、ここまで届けてくれた。


「投下!」


 ハッチからコンテナが滑り出す。重力に従い落ちてきたそれが、クッションによって受け止められる。すぐさま駆け寄ってきたプレイヤーたちによって梱包材が剥がされ、内部の部品が露わになる。


「まさかこんなものまで作れるとはな」


 生産者としての驚きがあるのだろう。クロウリもタンガン=スキーも、周囲の職人たちも思わず手を止めてしばしそれに目を奪われる。

 特殊な設計のため、これまでとは比にならないほどのエネルギーを要求する新型テントのために用意された動力源。これひとつで、ブルーブラスト換算で特大型超高濃度圧縮BBバッテリー2,000基ぶんのエネルギーを、毎秒ごとに生産できる。

 人の頭ほどもある青い宝玉が六つ、中央の一際大きな宝玉を囲むように配置されている。それらが銀色の金属部品によって固められ、無骨ながらも機能的な六角形を形成している。


「八尺瓊勾玉増設部品、LP出力増幅装置“龍玉”。これ作るために色々頑張ったんだから、しっかり成果見せなさい」


 輸送機から降りてきたネヴァが言う。俺は頷き、早速それを自身の機体と接続した。


「起動用BB充填率80%!」

「時間がねぇ。8割なら上出来だ。起動シーケンス始めろ!」

「で、ですがまだ電磁カタパルトの安全確認が……」

「そんなもん後回しでいい!」


 “龍玉”が動き出すために必要なBBが大容量ケーブルを通じて注ぎ込まれる。それと同時に、周囲で建設が進んでいた白金のレールが動き出す。


「搭乗者保護殻閉鎖」

「密閉確認。衝撃緩衝ジェル注入開始」


 俺は卵型の容器の中に収まり、封がされた状態でネットリとした液体を注がれる。


「テント展開完了。外部増設パーツ接続完了」

「エネルギー供給問題ありません」

「第五、第六ブロック準備完了しました」

「第三ブロック完了!」


 次々と報告が上がる。

 小窓からわずかに見える外で、ネヴァたちが期待に満ちた目を輝かせている。


「カタパルト展開完了!」

「各種障壁展開!」

「周辺退避!」


 大地が鳴動する。

 ヘルメットを着けた作業員たちがダッシュで逃げていく。


「――超大型機械獣領域内戦闘拡張アタッチメント結合テント。“輝月-Mk.Ⅱ”、活動開始!」


 カタパルトが動き出し、俺は勢いよく空中へと放たれる。そのまま放物線を描きながら機体を展開。そして、ラインを通じて六つの祭壇とリンクする。

 レティたちを取り囲む、六つの祭壇。それによって区切られた戦闘領域。――戦場そのものがテントである。


━━━━━

Tips

◇LP出力増幅装置“龍玉”

 八尺瓊勾玉増設部品。六つのサブリアクターと一つのメインリアクターを備える大型LP生産装置。装着者はLPの生産、貯蓄容量が大幅に上昇する。

 各都市のバックアップセンターにて保管されている調査開拓用機械人形の部品が無許可のまま使用されている他、模倣喪失特異技術ロストパラテック・レプリカ、呪術的構造理論、占術的次元格納技術、ドワーフ族に伝わる古代技術、および第零期先行調査開拓員の神核実体からトレースされた技術が使用されている。成立していることそのものが奇跡じみた装置。そのため、使用者に対して強烈な負荷を掛け続ける。

“命を薪に、命を燃やす。盛大なる刹那の輝きは、龍の瞳に刻まれる”


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