第1034話「旧き盟友」
##第1034話
『カヒュッ……カヒュッ……』
気がつけばクナドは過呼吸を起こして倒れていた。顔色も悪く、四肢が痙攣している。もしかしたら、何かしらのデバフもかかっているかもしれない。ともかく、とにかく頑丈な管理者機体であるはずだが、重大なダメージを負っているようだ。
「流石にちょっと可哀想だったな。クナド、立てるか?」
『……ろして……殺して……』
「これは重症だなぁ」
瀕死の様相で喘ぐクナドに肩を貸し、立ち上がらせる。周囲に人だかりもできてきているし、よく見ると顔色を悪くしているプレイヤーも何人かいる。衆人環視の中で過去の黒歴史をブラックダークに朗読させたのは悪手だった。
「あれ、フゥちゃんちょっと気分が悪そうだけど、大丈夫?」
「う、うん。大丈夫だよ」
何やらフゥまで胃のあたりを押さえて唇を噛み締めている。光が彼女の様子に気づいて背中をさすっていた。
俺は反省しつつ、クナドを連れて中央制御塔へと向かった。
「クナド、大丈夫か?」
『誰のせいでこんなになってると思ってるんですか』
「過去の自分では?」
『グハァッ!?』
恨みがましく俺を見上げるクナドに、レティから鋭いツッコミが入る。クナドは胸を押さえて呻き、ヨロヨロとタタラを踏む。
「それでは、次の記憶を読んでもらいますの」
『いやーーー!!』
光が再び断片を取り出したところ、クナドが悲鳴を上げる。完全に記憶の断片そのものがトラウマの対象になっているようだ。
「すまん、クナド。これも開拓団のためなんだ」
『うぅぅぅ。調査開拓団なんて滅んでしまえばいいんです』
よしよしと頭を撫でて励ますも、クナドは怨嗟を漏らす。ついさっきと言っていることが逆転しているが、彼女を心情を思えば仕方ない。
彼女は統括管理者時代、〈
「安心してください。私はブラックダークさんの言っている言葉はあんまり理解できていませんから」
『そういう問題じゃないんですよ!』
アイが慰めの言葉をかけるも、クナドは唇を尖らせる。
『ククク。我が
『うるっせー! アンタは黙っててください!』
両手をブンブンと振り回して回りくどい言葉で語るブラックダークにクナドが髪を逆立てる。この中で一番悲鳴をあげているのはクナドなのだが、ブラックダーク的にはそのあたりどう認識しているのだろうか。
『だがしかし、〈
『な、なんですかそのファイティングなんとかって!』
不思議そうな顔をするクナド。ブラックダークは驚いた顔をした後、悲しげに睫毛を伏せる。
『そうか……。其方はかの盟友の名も忘れてしまったか……。共に熱情の調べを奏でたあの夜のことも……』
『な、なんなんですか?』
突然ブラックダークの口から飛び出した己の中に存在しない記憶。クナドが混乱している間にも、黒衣の少女は懐古する。
「その、〈
『クハハッ! あらゆる真理はすでにそこにある……!』
俺が尋ねてみるも、ブラックダークは再び意味のわからない返答に戻ってしまう。結局、彼女から有意味な言葉が語られたのは、それだけになってしまった。
「アイ、〈
「既に連絡して調査を始めさせています」
とはいえ、重要な情報だ。おそらくは第弐術式的隔離封印杭の管理者かつ元第二開拓領界統括管理者の名前が判明した。〈
第二開拓領界の統括管理者の詳細が判明すれば、その部下であったソロボルに関する情報も芋蔓式に出てくるかもしれない。
「ブラックダーク、もうちょっと〈
『我が記憶は大いなる秘密の扉によって封じられている。それをこじ開けようとすれば、大いなる災厄がその身に降りかかるだろう。お主にその覚悟があると……?』
「大丈夫だ。クナドがなんとかしてくれる」
『ちょっと!?』
悲鳴を上げ目を剥くクナド。すかさず光が手札を準備する。
俺は全力で脱走を図ろうとするクナドに平身低頭で頼み込みながら、ブラックダークに記憶の断片を読み上げてもらった。
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Tips
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