第880話「少女達の贈り物」※
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FPO日誌
このブログはVRMMO、FrontierPlanetをプレイしている一般のおじさんが惑星イザナミでの出来事をぼんやりと記していく日誌です。
あまり有益な情報などはありません。
攻略情報は公式wikiかBBSのほうがいいでしょう。
上級者向けのものは「大鷲の騎士団(別窓)」や「ねこのあしあと(別窓)」へ。
あくまでも、平凡な日常を淡々と記したものであることにご留意ください。
メンバーからの許可を得たので、今後はバンド〈白鹿庵〉の活動日誌としても運営していきます。
その一環で、本人らからの要望を受けて記事中の画像にあったメンバーのプライバシー保護編集を消しました。
ゲーム内での問い合わせは〈白鹿庵〉リーダーのレッジまでお願いします。
# 420「オフ会をしてきました」
第5回〈特殊開拓指令;古術の繙読〉も終わり、みなさまいかがお過ごしでしょうか。
私はここ数週間、少しログイン率が下がっておりました。というのも、今回のタイトルにもあるように、ついに〈白鹿庵〉のメンバーでオフ会というものを開催したのです。
実は、先日は私の誕生日でもありまして、メンバーからこの機会にオフ会を開かないか、というありがたい提案がありました。そんなわけで、色々と準備を進めるため、少しFPOでの活動が疎かになっていました。
オフ会の写真は、諸事情もあり公開できません。しかし、改めて〈白鹿庵〉の楽しい仲間達と交流することができて、より親交を深められたように思います。
今回の集まりは私の誕生日記念ということで、メンバーからはそれぞれとても素晴らしいプレゼンントを頂きました。氷の置物や、懐かしのアーケードゲーム“ユグドラシル・リーサルウェポン”のキャラクターストラップ、兵法書、短刀、サボテン、そして、水晶でできた白い鹿の置物。どれも大切な品になりました。
[皆からのプレゼント.img
今後も仲間と共に、〈白鹿庵〉として惑星イザナミの開拓を楽しんでいければと思います。このブログを読んでくださっている皆様にも、この機会に改めて深くお礼申し上げます。
追伸
植物園の復旧任務などにも本日より本格的に参加する予定です。今回のイベントでは多くの皆様に大変なご迷惑をおかけしましたこと、改めてお詫びします。
それでは、今日はこのあたりで。
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◇名無しの調査開拓員
お、おっさんのブログ更新されてるじゃん
◇名無しの調査開拓員
久々だな
◇名無しの調査開拓員
URLくれ
◇名無しの調査開拓員
ブクマしとけ定期
◇名無しの調査開拓員
はーーーーー?
オフ会やってたのか
◇名無しの調査開拓員
いいなぁオフ会
◇名無しの調査開拓員
俺もオフ会したいぞ・・・
◇名無しの調査開拓員
てかおっさんって実在してたんだな
◇名無しの調査開拓員
リアルに存在してたって事実の方が驚きだな
◇名無しの調査開拓員
おっさん実在性疑われてて草
◇名無しの調査開拓員
まあ、プログラムの一種とかすごいAIとか言われても不思議じゃないしなぁ
◇名無しの調査開拓員
運営説とか統括AI説とかあったし
◇名無しの調査開拓員
おっさんみてーなヤバいやつが少なくとも一人はリアルにいるという事実
◇名無しの調査開拓員
おっさん誕生日だったのかー
おめでとうおっさん
◇名無しの調査開拓員
おっさんが更におっさんになってしまったな
◇名無しの調査開拓員
ていうか植物園の修復っておわってなかったっけ?
◇名無しの調査開拓員
↑建物自体は大体完成してる。
レベル9耐爆性能の最新鋭設備だぞ。
◇名無しの調査開拓員
けど中身が全然揃ってないんだよな。
それにおっさんが前の戦いで初めて出したやつとかもあるし、そういうの補充するんじゃない?
◇名無しの調査開拓員
ウェイド「こないで」
◇名無しの調査開拓員
すまんなウェイド、これも仕事や
◇名無しの調査開拓員
おっさん誕生日だったのか。てことは挨拶回りするのかな?
◇名無しの調査開拓員
挨拶回り とは
◇名無しの調査開拓員
知らんのか。
自分の誕生日の当日から1週間の間、友好度が一定以上のNPCに話しかけたら特殊な会話が解放されるんだぞ。
◇名無しの調査開拓員
限定のアイテムとか依頼とか貰えるから、やってみるよろし。
◇名無しの調査開拓員
管理者からは必ずなんか貰えるからな。誕生日期間の奴は紳士協定でシスターズの優先入場権もあるぞ。
◇名無しの調査開拓員
知らんかった……
◇名無しの調査開拓員
フィールド探索ばっかやってる奴だと知らんのも多いよな
◇名無しの調査開拓員
知ってたけど仲良しのNPC全然いなくて悲しかったぞ
◇名無しの調査開拓員
普通に日常的に使ってるベースラインのNPCとか嫌でも仲良くなるだろうに……
◇名無しの調査開拓員
遊戯区画でイカサマしまくって黒服のお世話になりまくってた詐欺師が黒服との親密度上がっててバーに連れてってもらってたのはちょっと面白かった
◇名無しの調査開拓員
おっさん割とNPCも人みたいに扱うタイプだしなぁ
挨拶回りも大変そうだ
◇名無しの調査開拓員
ていうか普通にプレイヤーからも色々プレゼントもらえそう
◇名無しの調査開拓員
アストラから聖剣もらいそう
◇名無しの調査開拓員
真面目に有り得そうだからやめろ
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数日ぶりにFPOへログインすると、〈ワダツミ〉の別荘で目が覚めた。開け放たれた窓のカーテンを揺らす潮風に懐かしいものを感じながら部屋の中を見渡す。キッチンの影の涼しいところに、白月がだらりと丸く寝そべっている。
「カミルは農園かな?」
いつもちょこちょこと忙しなく働いているカミルを探して、隣にある農園に入る。俺の予想通り、彼女は花に水をやっていた。
「カミル」
『あら、やっと起きたのね』
ジョウロを揺らしていた彼女は、赤髪を揺らして振り返る。ログアウト中の調査開拓員は、NPCからは睡眠中のような状態と認識される。現実時間で数日ログアウトしていると、この世界ではかなりの日数眠り続けていたことになる。
「すまんな。花の世話もしてくれて」
『仕事だから別にいいわよ。お給料も貰ってるし』
変わらず生き生きと葉を広げる植物たちを眺めて感謝すると、カミルはぷいっと横を向いた。しかし、すぐにまたこちらへ振り返る。いつもより目つきを鋭くして、彼女はこちらへ近づいてきた。
「どうした?」
『この前、アンタの製造日だったでしょ』
「えっ。ああ、そうか」
突然のことに驚きつつ、以前レティがそのようなことを言っていたのを思い出す。製造日、つまりは誕生日だが、VRシェルに記録しているそれを参照して、カミルたちNPCも特別な反応をしてくれるのだ。
『別におめでたい訳じゃないけど。一応雇い主だし義理は果たさないといけないし』
そんな言い訳をしながら、カミルが何かを手渡してくる。
「これは……」
彼女の小さな掌に載っていたのは、赤と青の糸で編まれたミサンガだった。
『アンタが寝てる間暇だったから作っただけよ。さっさと擦り切れるくらい働きなさい』
そう言って、彼女はくるりと背を向けてしまう。すたすたと足早に離れていく彼女に、大きな声をかける。
「ありがとう! 大切にするよ」
『別に大切にしなくていいわよ!』
彼女はそう言い残して、農園の危険区域へと飛び込む。しかし、すぐにピョコンと頭だけドアの隙間から覗かせて言った。
『そう言えば、奥にT-1とスサノオもいるわよ』
「そうか。挨拶だけしてくるかな」
そう言ったきり、今度こそカミルは隔壁を閉じてしまう。俺は彼女の言葉に従い、農園の奥にある安全な植物を植えているエリアへと向かった。
市場で売るための野菜などを育てているそのエリアに、二人の少女が隣り合ってしゃがみ込んでいる。二人ともメイド服を着ていて黒髪で、姉妹のようだ。まあ、実際そう変わらない関係性ではあるか。
「スサノオ、T-1」
『おおっ! 主様ではないか』
『レッジ!』
名前を呼ぶと、二人が振り向く。彼女たちにとっても久々だ。こちらへ駆け寄ってくる管理者たちに手を振る。
『データの整理に時間がかかっておったようじゃのう』
『あぅ。心配したよ』
「すまんすまん」
長時間眠り続けていたことを謝りつつ、スゥの頭を撫でる。彼女は猫のように目を細め、向こうから頭を押し付けてきた。
『そういえば、主様の製造日じゃったのう。ふふふ、妾も特別な品を用意しておるぞ』
早速、T-1が誕生日について言及してくる。彼女も何やらプレゼントを用意してくれていたらしい。期待を胸に、彼女が取り出したものを受け取る。
「……まあ、そうなるか」
『ふふん。妾が持てる権限の全てを使って作り上げた最上のおいなりさんじゃ!』
彼女から手渡されたのは、稲荷寿司だった。ある意味では予想通りの品だが、妙に品質が良い。星10等級の料理は、一流の調理師でもなかなか作れない代物だったはずだが……。
『T-2やT-3も何かしら用意しておるようじゃし、近いうちに来るじゃろ。楽しみにしておると良いぞ』
「ああ。ありがとうな」
チラチラと俺に渡したばかりの稲荷寿司を見ながらT-1が言う。彼女の隠しきれない様子に苦笑しつつ、これは後でみんなで食べようと決める。一人で食べるより、みんなで分けあった方が美味しいだろう。
『あぅ、レッジ。スゥからも、これどうぞ』
「スサノオもくれるのか。ありがとうな」
更に、スサノオからも誕生日プレゼントを貰う。シード01-スサノオの管理者からは、都市の立入禁止区域の一日通行許可証だった。
「いいのか、こんなの貰って」
『あぅ。工場見学とか、みんな喜んでくれるから』
許可証とはいえ何処でも自由に、というわけではないらしい。入れるのはNPCなどの機体を製造している工場などが中心だ。どうやら、こういう施設の見学がしたいという申し出は多いようで、まずは誕生日を迎えたプレイヤーに先行してこの許可証を渡しているのだとか。
『ちゃんと、スゥが案内してあげるからね。ぜひ来てね』
「もちろん。近いうちに行かせてもらうよ」
『うん!』
工場見学とはまた新しい。俺は今から俄然楽しみになっていた。スサノオが直々に案内してくれるなら、この上ない。
「そういえば、今日は何しに来てたんだ?」
二人からプレゼントを受け取り、ひとつ落ち着く。俺は彼女たちがしゃがみ込んでいた場所へ視線を向けて言った。
『あぅ。スゥが育ててるお花の様子、見にきたの』
「なるほど」
スサノオがメイドロイド体験をしていた時期、彼女が農園で育て始めた種がある。どういうわけか、それは他の植物と比べてかなり生長が遅く、いまだに小さな芽しか出ていないのだ。
それでも栽培が失敗したというわけではなく、スサノオもたまにこうして様子を見に来ている。
「どうだ、変化はあったか?」
『あぅ。ちょっとだけ大きくなったよ』
様子を尋ねると、スサノオは嬉しそうに飛び跳ねて答える。彼女の名札が立てられた植木鉢を見にいくと、確かに双葉が少し大きくなっていた。
「ちゃんと生長してるみたいだな」
『うん! これからも、大切に育てていきたいの』
「ああ、そうしてくれ。俺たちも協力するからな」
いまだにこの植物の種類は分からないが、何やら特別な気配はする。カミルやT-1も注意を向けているから、そうそう枯らすことはないはずだ。なんとか花が咲くところまで育てたい。
『むっ』
「どうした?」
スサノオと共に小さな葉っぱを見ていると、唐突にT-1が声を上げる。ぴくりと反応する彼女に首を傾げると、彼女は農園の入口の方へ視線を向けた。
『ふふふ、主様、どうやらお客人のようじゃぞ』
「客?」
『うむうむ。待たせてはならぬし、早く出迎えてやるのじゃ』
何やら企むように笑っているT-1を訝しみつつ、背中を押されるまま入口へ向かう。すると、別荘の敷地を区切る柵の外からひっそりと中を伺う少女が見えた。
「……ウェイド?」
『きゃっ!?』
挙動不審な管理者に怪しみながら声を掛ける。彼女はビクンと肩を跳ね上げ、キッと俺を睨みつけた。
『突然驚かせないでください!』
「ええ……。何か用なら、TELでも良かったんだが」
理不尽な怒りに困惑しつつ、来訪の要件を尋ねる。植物園の復旧をサボっていた件を怒られるのかとも思ったが、それなら遠隔通話でもよかったはずだ。何か特別な事情があるのだろうかと聞くと、彼女はとたんに歯切れが悪くなった。
『それはですね……。ええと……』
「T-1かスサノオに用か? それなら呼んでくるが」
『違いますよ! ええと、ほら、先日貴方の製造日だったでしょう』
「ああ、そういう話か」
どうやら、ウェイドはわざわざ自分の町からここまで出向いてきてくれたらしい。こういう所が律儀なのが、彼女らしいな。などと感心していると、彼女は背中に隠していたものを前に出す。
『領域拡張プロトコルの進行への寄与度を鑑みれば、レッジの功績は無視できません。反面で周囲への影響も大きいわけですが、それでも信賞必罰の原則上何かしらの褒賞を与えないというのも管理者の資質に関わりますからね。——ですので、こちらを』
早口で捲し立てながら、彼女はそれを押し付けてくる。
受け取り、封を開くと、そこには銀色に輝く花を象った徽章が入っていた。
『“月下に輝く銀花の徽章”です』
「これって——」
まじまじとそれを見つめて、とある事に気がつく。
俺は以前、サカオやアマツマラからも徽章を貰っていた。けれど、それは友誼の徽章というものだったはずだ。ウェイドから受け取ったこれは、それとは少し趣が異なる。
『ただの徽章ですよ。深い意味はありません』
「そうは言ってもな……」
『他意はないと言っているでしょう。用件は終わりましたので、帰ります』
「ええっ!? ちょっと待てよ。ほら、T-1から稲荷寿司貰ったんだ、一緒に食べないか?」
そのままあっさりと背を向けるウェイドを慌てて呼び止める。俺は彼女を敷地内に呼び入れ、カミルたちも呼び集める。
「せっかくだし、みんなで食事でもしようじゃないか」
『あぅ! それじゃ、他のみんなも呼びたいな』
『むふふ。パーティならば妾もおいなりさん食べ放題……。よし、盛大にレッジの製造日パーティを催すのじゃ!』
スサノオとT-1は早速乗り気だ。カミルに目を向けると、彼女は呆れ顔で肩をすくめながらも、キッチンへ向かっている。
『貴方という人は……』
各々動き始めた管理者たちを見て、ウェイドが立ち尽くす。
「そういうわけだ。もうちょっと祝ってくれてもいいんじゃないか?」
『……仕方ありませんね』
ウェイドはため息をつき、少し笑う。俺は彼女の背中を押して、別荘の中に入って行った。
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Tips
◇交わり糸のミサンガ
とあるメイドロイドが丁寧に編み込んだミサンガ。赤と青の二色とシンプルながら、とても繊細な模様が編み上げられている。一目見ただけでも、その美しさと掛けられた手間がよくわかる。
禍福はあざなえる縄のごとし。青と赤の糸は互いに交わるなかで固く結ばれていく。
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