第834話「掃討作戦始動」※
投身自爆の熱狂的な騒ぎの渦中にあった調査開拓員たちは、突如として背後から刺された。
「ぐわーーーっ!?」
「なっドワーフ!? なんでっ!?」
前触れ無く背後から現れたドワーフたちが、調査開拓員を薙ぎ倒して記録封印拠点の奥へと向かう。先陣を切るのは、深紅の軍帽を被ったレッドキャップたちだ。
「おい、どうしたんだよ?」
「何かあったのか?」
調査開拓員たちも投身自爆を止め、ドワーフたちに訳を聞く。レッドキャップたちは黒いピッケルを振り、立ちはだかる改造機械人形を破壊しながら、熱に浮かれたような眼をして言った。
『我らが主が目を覚ました!』
『今すぐ御身が元に馳せ参ぜねば!』
ドワーフたちは猛進する。調査開拓員たちは慌てて道を空ける。状況はまるで分からないが、特殊開拓指令が次のフェーズに移行していることだけは実感していた。
「にゃあ。いったい何がどうなってるのかな」
「分からないけど、とりあえずドワーフを護衛しながら最下層まで行けばいいんじゃない?」
調査開拓員たちは多少の混乱を生じながらも、生来の乗りの良さと深く考えない単純さをもって、喜び勇んで敵中に飛び込むドワーフたちを追いかけた。
_/_/_/_/_/
◇ななしの調査隊員
なんかドワーフが暴走してるみたい
◇ななしの調査隊員
突然押し倒されてびっくりしたぞ
そのあとめちゃくちゃに踏まれるし
◇ななしの調査隊員
なんか一斉に地下めざしはじめたよなあ
◇ななしの調査隊員
我らが髪が目覚めた!ってめっちゃ狂信者っぽかった
◇ななしの調査隊員
俺の髪は目覚めますか・・・?
◇ななしの調査隊員
悲しいなぁ
◇ななしの調査隊員
いいやつだったよ
◇ななしの調査隊員
ドワーフに付いていけば良いの?
◇ななしの調査隊員
とりあえずそんな感じかな。まあおっさんが出てきたら皆自爆してるんだけど
◇ななしの調査隊員
いやぁ、おっさんのレプリカとはいえ、あれと真正面から当たるのはキツいっす
◇ななしの調査隊員
一人でも厄介なのにそれが何人も出てくるとなぁ
◇ななしの調査隊員
しかし自爆したら15分再出動できないからなぁ
掲示板ポチポチしてるしかない
◇ななしの調査隊員
まあ拠点に潜ったら通信できなくなるからね
今のうちに情報集めとかんと
◇ななしの調査隊員
おっさん(本物)はどこいったん?
◇ななしの調査隊員
なんか〈ウェイド〉にできた穴ん中に飛び下りてったよ
◇ななしの調査隊員
ひょえー
おっさんってそんな頑丈だっけ?
◇ななしの調査隊員
たぶん死地の輝き的な奴使ってるんじゃない?
にしてもよく飛び下りるわ
◇ななしの調査隊員
底見えないくらい深いんだろ?
俺は無理だなぁ
◇ななしの調査隊員
穴ってもう埋まったんだっけ?
◇ななしの調査隊員
埋まったというか、おっさんが埋めたというか
◇ななしの調査隊員
白鹿庵は第一拠点を爆走してたよな
そろそろ最下層辿り着いたのかね
◇ななしの調査隊員
最下層で何かしらのトリガー引いたんじゃない?
それでドワーフが動き出したんだと思う
◇ななしの調査隊員
とりあえず俺たちも最下層まで行かんとなんも分からんな
◇ななしの調査隊員
カーニバルですわ~~~!
◇ななしの調査隊員
拠点内で動きがあったんで連絡します。
なんか突然おっさんズの動きが止まって、全域に放送が掛かりました。声の主はコシュア=エグデルウォンです。
◇ななしの調査隊員
おっと
◇ななしの調査隊員
本命きたコレ
◇ななしの調査隊員
それで、ちょっと分かんないんですけど、コシュア=エグデルウォンはドワーフの存在を認知してなかったっぽい?
なんか、ドワーフとの話し合いを望んでるみたいです
◇ななしの調査隊員
ええ?
◇ななしの調査隊員
DWARFの一番上がデルウォンなんでしょ?
ドワーフのこと知らんとかある?
◇ななしの調査隊員
とりあえず放送聞いて報告のために自爆してきたんで、詳しい事はあんまり・・・
◇ななしの調査隊員
thx
とりあえず管理者案件じゃねぇの?
◇ななしの調査隊員
おっさんに報告しなきゃ
◇ななしの調査隊員
おっさんが今いねえんだよ
◇ななしの調査隊員
ええ、じゃあ誰が管理者に取り次いでくれるんだ
◇ななしの調査隊員
シスターズ行けばいいかな?
◇ななしの調査隊員
意見箱に通報しとくか
◇ななしの調査隊員
おっさんが連絡口として優秀すぎて、不在になるとどうやって管理者とコンタクト取れば良いか分からなくなるの異常だろ
◇ななしの調査隊員
一応おっさんって運営じゃなくて一般プレイヤーなんだよね?
◇ななしの調査隊員
自称な
◇ななしの調査隊員
本人はそう言ってる
◇ななしの調査隊員
まあ大体の奴は信じてないっていうか、運営と何かしら繋がりがあるか運営のサブアカとかだと思ってるだろうけど
◇ななしの調査隊員
とりあえずシスターズ勤務してたホムスビちゃんに伝言しておきました。慌てて他の管理者と通信してたし、結構事態は大きいっぽいぞ。
◇ななしの調査隊員
とりあえず料理系バンドがフィナンシェの増産体制に入ったな
◇ななしの調査隊員
ドワーフの暴走は落ち着いた感じ?
◇ななしの調査隊員
分からんな
◇ななしの調査隊員
自爆で死に戻ってくる奴も少なくなってきたか
◇ななしの調査隊員
現場はとりあえず落ち着いたかな。
エグデルウォンの居るところには白鹿庵と騎士団が到着してるっぽい
◇ななしの調査隊員
やっぱり第一と第二は繋がってたのか
◇ななしの調査隊員
改造機械人形はデルウォンが出してたみたいなんだけど、稼働停止できないっぽいんだよね
今はそれの残党狩りが始まってる
◇ななしの調査隊員
ええ・・・
◇ななしの調査隊員
とりあえずおっさんとか殲滅させないと、デルウォンちゃんも出れないというか
◇ななしの調査隊員
?
◇ななしの調査隊員
なんて?
◇ななしの調査隊員
拠点内の安全が確保でき次第、デルウォンちゃんの神核実体を運び出して海底神殿で機械人形にコンバートするっぽい
◇ななしの調査隊員
デルウォンちゃんは図体デカい概念だったのか
◇ななしの調査隊員
拠点内の掃討任務
↓
神核実体護衛任務
↓
デルウォンちゃんとドワーフ陣営と管理者陣営の鼎談
って流れみたい
◇ななしの調査隊員
なるほどなー
じゃあ任務受けてくるか
◇ななしの調査隊員
つまり俺たちでおっさん全滅させねぇとデルウォンちゃんが出れないってこと?
◇ななしの調査隊員
まあまあ厳しいなぁ・・・
◇ななしの調査隊員
機体鹵獲の危険がなくなったから自爆機能剥奪措置出たぞ
◇ななしの調査隊員
もう終わりですやん
◇ななしの調査隊員
自爆なしでどうやっておっさんと戦えばいいんだよ!!
◇ななしの調査隊員
ていうか向こうは原始原生生物持ちだろ?
無理無理かたつむり
◇ななしの調査隊員
エグデルウォンちゃんのためだ。頑張れ頑張れ。
◇ななしの調査隊員
エグデルウォンちゃんのお姿すら知らないんですが!
◇ななしの調査隊員
声的に多分華奢で可愛らしい美少女だよ
◇ななしの調査隊員
部屋から出られないって言ってなかった?
◇ななしの調査隊員
うるせぇ働け!
_/_/_/_/_/
記録封印拠点内では、調査開拓員とドワーフたちの協働による敵掃討作戦が進められていた。暴走状態の機械警備員、改造された機械警備員、そして野放しとなった改造機械人形たちを処理していくものだ。
事態を察知したウェイドの指令によって自爆装置を内蔵した外装は即座に廃止されたため、調査開拓員たちも自力で戦うことが強いられている。
「おっさんそっちにいったぞ!」
「ぎゃあああっ!?」
しかし、その道のりは決して楽なものではない。
何せ、敵の大半は改造機械人形であり、なかでもレッジ型は凄まじく面倒くさかった。原始原生生物を巧みに扱い、また自身の身体的制約を無視した機動で翻弄する。
「赤ウサ!」
「総員退避!!」
更に、戦闘特化のレティ型やトーカ型もまだ残存機体があった。彼女たちは耐久性こそレッジ型に劣るものの、その攻撃力はあまりにも高い。
「げぇっ!? トップ勢が束になってるんだが!」
「その部屋塞げ! 爆殺するぞ!」
厄介なのは〈白鹿庵〉モデルだけではない。その他多くの著名な戦闘職のコピーが徘徊しており、調査開拓員たちに熾烈な攻撃を加えていた。
『そこぉ!』
『ちぇええええいっ!』
調査開拓員たちに混ざって、DWARF警備部の面々も戦いに参加している。彼らの戦闘能力も目を見張るものがあった。
そんな拠点内の各所で繰り広げられる戦闘を、物陰からひっそりと見守る存在もある。
「グレムリン!」
「別に放っておいて良い。襲ってこないから」
グレムリンたちが不安げな顔で彼らを見ていた。その金色の瞳には敵意はなく、むしろ調査開拓員たちを応援しているようにも見えた。
「おっさん! なんか下半身が蜘蛛っぽい!」
「厄介な奴だ! 逃げて囲んで叩くぞ!」
『なんと面妖な……』
調査開拓員とドワーフ。両者は互いに補い合いながら、敵を殲滅していく。やがて現れるコシュア=エグデルウォンの姿を見るため、武器を振るっていた。
「おっさん、覚悟!」
「総員、突撃ーーーっ!」
「待て待て待て、俺は本物だ!」
「今まで殺した奴もみんなそう言ったんだ!」
「うわあああっ!?」
_/_/_/_/_/
Tips
◇未確認原生生物-暫定分類番号“0002”
第零期先行調査開拓員コシュア=エグデルウォンによって発見された未確認原生生物。上半身は第一期調査開拓団調査開拓用機械人形タイプ-ヒューマノイド型に酷似しているが、下半身が巨大な蜘蛛型となっている。また、腕部も八本に増加しており、それぞれに槍のような形状の武器を所持している。
その後の調査、および調査開拓員アストラの指摘により、調査開拓員レッジの変形した姿であることが判明する。変形プロセスに関しては情報が不足している。調査開拓員レッジが新世代型調査開拓用機械人形である可能性を検討する。
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