第439話「手作り弁当」※
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「ぎゃああああっ! ほんとに苦手! マジで無理ですわっ! なんなんですの、この触手きもきもカエルはっ!」
◇エインヘリアル
がんばえー
◇エインヘリアル
テファ姉さんこういう系苦手だよな
◇エインヘリアル
テファ姉さんじゃなくてもこれはキツいよ
女性人気はなかなか悪い
◇エインヘリアル
クアルプァが好きな人おるん?
「私は結構好きだよー。なんていうか、目に感情がないところとか」
◇エインヘリアル
レスタちゃんはこういうのいけるクチだったか
◇エインヘリアル
その割にはドスドス斬りつけてるけどな
◇エインヘリアル
フェンちゃんもめちゃめちゃ触手食いちぎってますよ
◇エインヘリアル
フォレストウルフがクアルプァに立ち向かう構図がシュールすぎる
◇エインヘリアル
レスタちゃんは一日に青本50冊溶かしてる人だからね
◇エインヘリアル
ひえっ
「行くよっ! 機装技、『怖我雷慟』ッ!」
◇エインヘリアル
ひゅぅ
◇エインヘリアル
ノルンちゃんの破壊力は流石だぜ
◇エインヘリアル
これでクアルプァ突破か
ある程度弱体化してるとはいえ、三人で坑道踏破ってすごくね?
◇エインヘリアル
ワルキューレ姉妹は普通にガチ勢定期
◇エインヘリアル
テファ姉さんが集合写真撮りたがってるよ
「レスタ、ノルン、写真を撮るわよ」
「はいはい。ここでいい?」
「みんなー、スクショタイムだよー」
◇エインヘリアル
いえーい
◇エインヘリアル
ぴすぴーす
◇エインヘリアル
●REC
◇エインヘリアル
なんで動画で撮ってんだよ
「さて、これで坑道階層主は最後ですわね。あとは道なりに進んでいけば、いよいよ深層洞窟ですわ」
「私たちトロッコどころか〈カグツチ〉にも乗ってないけどいいのかなぁ」
「別に良いんじゃない? プロメテウスさんとかが頑張ってるみたいだし」
◇エインヘリアル
別にいいよ
◇エインヘリアル
ていうかカグツチ改造がブームになりすぎてなかなかレンタルできんしな
◇エインヘリアル
俺も早くオリジナルカグツチ作りたいんだけどな
◇エインヘリアル
深層洞窟に到着するだけでも坑道の原生生物が弱くなるから大丈夫
◇エインヘリアル
ワルキューレ仕様のカグツチも見てみたいけどな
◇エインヘリアル
もうオリジナルカグツチはオワコンってまじ?
「あっ、皆さん見て下さいまし。深層洞窟の入り口ですわよ」
「大きいねぇ。壮観、圧巻、異世界感って感じ!」
◇エインヘリアル
深層洞窟はロマンだよな
◇エインヘリアル
崩落しそうでこわい
◇エインヘリアル
真ん中の舞台がホムスビの建設予定地だよ
◇エインヘリアル
もう結構整備されてるんだなぁ
「あそこが舞台? 大きいんだね。並んでるカグツチが小さく見えるや」
「舞台までの道もきちんと整備されてるみたいですわね。行ってみましょう」
◇エインヘリアル
もうちょっとした町になってるの?
◇エインヘリアル
まだギリギリ一日目だろ。展開早いな。
◇エインヘリアル
ホムスビ自体はあんまりできてないよ。まわりにあるのは全部プレイヤーの施設。
「へええ! あの舞台の真ん中にある細い柱がホムスビかな? その周りにあるのは全部プレイヤーのなんだって」
「マジですの!? あのお屋敷とか、凄くしっかりとしてますけど……」
◇エインヘリアル
あれはおっさんだから
◇エインヘリアル
一番デカいバカみたいなやつがおっさんのテント。
中で休憩ができるよ。
◇エインヘリアル
誰があんなん作ったんだって思ったけど、おっさんだったか
◇エインヘリアル
え、あれテントなの?
「あの二階建ての立派な建物? あれがテントなの!?」
「うちより立派じゃん……。こほん、ま、まあ私たちの屋敷よりは小さいですわね」
◇エインヘリアル
テファさん本音出てますよ
◇エインヘリアル
キャンパーのテントが全部あんなんだと思わんでくれよ
◇エインヘリアル
あれは特殊な例だから
◇エインヘリアル
間取りはたしか20LDKとかだったっけ
「舞台に到着したよー。うわぁ、いっぱい建ってるね」
「地図もあったよ。おじさんハウスの隣から、作戦本部、大型機械工作工房、装備開発工房、物資保管庫だって」
「すでにちょっとした町ですわね」
◇エインヘリアル
けっこう人もいるんだな
◇エインヘリアル
有名プレイヤーがそこかしこに
あそこで募金募ってるのってラッシュ?
◇エインヘリアル
作戦本部の前に行こう
「作戦本部ってあそこだっけ? 何かあるの?」
「の、ノルン! ドアの前に立っている子って……」
「ううーん? あっ、もしかしてあの子がホムスビちゃん!?」
◇エインヘリアル
おおっ
◇エインヘリアル
もう管理者ちゃんがいるのか
◇エインヘリアル
会いに行こうぜ
◇エインヘリアル
かわいい
◇エインヘリアル
話してくれるんかね
「こ、こんにちは。私は〈ワルキューレ姉妹〉の長女、テファですわ。貴方はここの管理者ですか?」
『押忍! こんにちはっす! 確かに、わたしが地下資源採集拠点シード02-アマツマラの管理者のホムスビっすよ!』
「おおっ! 可愛いねぇ、可愛いねぇ。ノルンの名前はノルンだよ! 〈ワルキューレ姉妹〉の三女だよ!」
「レスタ。次女だよ」
◇エインヘリアル
かわいい
◇エインヘリアル
荒廃系かな?
◇エインヘリアル
後輩な
◇エインヘリアル
アマツマラちゃんに似て活発そうな子だ
◇エインヘリアル
こんなとこで何してんだろ
「ホムスビちゃんは何してるの?」
『押忍! 管理者として指揮を執ってるっす。制御塔周辺の建物も一時的にわたしが借り受けてるので、そちらへの案内もしてるっす』
「周りの建物って、レッジさんとかアストラさんとかの所有物なのですよね。今はホムスビさんの物なんですの?」
『い、いやぁ……。その、先ほど色々と話し合いがありまして、その結果としてベースライン建築が完了するまでという期限付きで管理を任せて貰ってるっす』
◇エインヘリアル
なるほど
◇エインヘリアル
なるほど
◇エインヘリアル
なるほど。かわいい。
◇エインヘリアル
おっさん、前もテント取り上げられてたし今回もそうなるかと思ったけど拒否ったのか
◇エインヘリアル
まああのテント(やしきのすがた)だけでも一財産だもんなぁ
◇エインヘリアル
ていうかレッジたちはホムスビちゃんと話したのか
うらやまじい
◇エインヘリアル
君も深層洞窟に行けば話せるぞ
「私たち、さっきこちらに辿り着いたばかりなんですの。良ければ各施設について教えて頂けるとありがたいのですが」
『いいっすよ。まずはこの作戦本部からいくっすね。こちらは元々は〈大鷲の騎士団〉の活動拠点として使われてたっす。今は深層洞窟調査の起点として、他の戦闘職の方々にも解放されてるっす。深層洞窟を探索する前には、ぜひここで情報を集めて欲しいっす』
◇エインヘリアル
ギルドみたいだな
◇エインヘリアル
採掘に行きたい掘り師とかが護衛募集してたりもする
◇エインヘリアル
深層洞窟の原生生物は新種も多いからぜひ行こう
「深層洞窟も面白そうだね。舞台をぐるっと回った後にでも行こうか?」
「いいねえ。ノルンのハンマーが唸るよ!」
『ハンマー!? こ、こほん。失礼したっす』
◇エインヘリアル
えっなに
◇エインヘリアル
ハンマー恐怖症だったりするのかな
◇エインヘリアル
何その局所的なトラウマ
『大型機械工作工房では〈カグツチ〉の修理や拡張パーツの製造が行われてるっす。ちなみにアマツマラはよくここに来てるっすよ』
「ほんとに!? アマツマラさんにも会いたいなぁ」
『あー、今はちょっと難しいかもっすね。〈鉄神兵団〉の技術班の方々と何かお話してるらしいっす』
「それは残念ですわね。……この工房はあまり立ち入る機会はないでしょうか」
『いえいえ! 洞窟探索で入手した鉱石なんかは、こちらで買取をしてるっす。皆さんが集めた鉱石がホムスビの建材になるので、是非お願いしたいっす』
◇エインヘリアル
俺たちの働きがホムスビちゃんに!?
◇エインヘリアル
〈採掘〉スキルがなくても鉱石って取れるの?
◇エインヘリアル
鉱石ワーム系とかもいるから
はぎ取りで多少は入手できる
◇エインヘリアル
ノルンちゃんのハンマーで岩砕けそうだけどなぁ
『ちなみに今のところ、最高効率で鉱物を採取してくれてるのは〈鉄神兵団〉さんの〈カグツチ〉っす。えーっと、ほら、あそこにいますね』
「うんん……? うわ、あれですの!?」
「めっちゃデカくない?」
◇エインヘリアル
カグツチだ
◇エインヘリアル
カグツチか?
◇エインヘリアル
おまえのカグツチでかくね?
◇エインヘリアル
鋼鉄巨神〈カグツチ〉“アメノオハバリ”エディション-パーフェクトタイプだぞ
◇エインヘリアル
なんて?
「こうてつきょ……なんて?」
「〈カグツチ〉二機を合体させた巨大機装だって」
『っす! 少し前にこちらに来られて、アマツマラはその件で〈鉄神兵団〉さんと話してるっす』
◇エインヘリアル
ドリルでガリガリやってんなぁ
◇エインヘリアル
確かに効率は良さそうだ
◇エインヘリアル
そのうちバゲットホイールエクスカベーターとか作るヤツ出てきそう
◇エインヘリアル
流石におらんやろ
◇エインヘリアル
あたまおっさんすぎる
◇エインヘリアル
そもそもこの洞窟に持って来れないだろ
『では、次に行くっす。こちらは〈シルキー織布工業〉さんの装備開発工房っす。深層洞窟の原生生物素材を使って武器や防具の開発を進めてくれてるっす』
「新しい武具ですか。良いですわねぇ」
「私もそろそろ新しい防具に交換しようかな。フェンちゃんも何か着せてあげたいし」
◇エインヘリアル
ペットに防具って行けるのか?
◇エインヘリアル
普通にできる
設計図を一から起こす必要があるけど
◇エインヘリアル
アーマードウルフは格好いいな
◇エインヘリアル
フェンちゃんがまた強くなるのか
『物資保管庫は〈笛と蹄鉄〉さんっすね。製造した建材や、持ち帰られた鉱物、原生生物素材なんかをプールしておく場所っす。調査開拓員の方々に向けては、ストレージアクセス可能な端末を設置してるっす』
「なるほどなるほどー。じゃあ物資の補給はここでやるって感じなのね」
「ほんとに町みたいに充実してますわねぇ」
◇エインヘリアル
〈笛と蹄鉄〉もトロッコ運搬に本腰入れてきたよな
◇エインヘリアル
目標はトロッコ20両連結らしいが
◇エインヘリアル
ストレージ接続できるんならマジで住めそうだなここ
『では、最後に〈白鹿庵〉さんのテントっすね。テントって感じはしないっすけど』
◇エインヘリアル
それはそう
◇エインヘリアル
テントじゃねえよなぁ
『中は休憩所と補給所になってるっす。〈白鹿庵〉さん以外にも、料理系バンドの皆さんが参加して下さっているので、凄く豪華なお食事処になってるっす。なかなか空室が出ないんですが、個室もあるので、運が良ければそこでゆっくり休むこともできるっすよ』
◇エインヘリアル
おっさんのテントはマジで福利厚生が行き届いてるから、一回味わった方が良い
◇エインヘリアル
〈白鹿庵〉に入ったらいつでもここに泊まれるってマジ?
◇エインヘリアル
問題は白鹿庵に入る方法が殆ど無いってことだな
◇エインヘリアル
ラーメン系のバンドが結構入ってて、ちょっとした激戦区になってるの面白いよ
ここで食べ比べしてるだけで時間が溶ける
◇エインヘリアル
ボムカレーのレインボードラゴン美味いからおすすめ
◇エインヘリアル
見え透いた地雷を勧めるんじゃない
「案内ありがとうございます。せっかくですから、こちらのお屋敷で少し休憩していきましょうか」
「賛成。フェンちゃん用のペットフードも売ってるかなぁ」
「ノルンもおなか空いてたんだよ。行こう行こう!」
『行ってらっしゃいっす~』
◇エインヘリアル
ホムスビちゃん可愛いなぁ
◇エインヘリアル
ホムスビちゃんのおむすびとか食べたい
◇エインヘリアル
は?
◇エインヘリアル
なんて?
「うわぁ、立派なドアだね。これほんとにテントなの?」
「張りぼてってわけでもないんだよね。やば……」
「デッケぇですわねぇ」
◇エインヘリアル
テファさんのお上品言葉が
◇エインヘリアル
エセお嬢様になってますよ!!
◇エインヘリアル
しかしほんとにご立派だな
「中は大広間になってますのね」
「すっごい広いよ! めっちゃ人いるよ!!」
「うわぁ、良い匂い……」
◇エインヘリアル
フードコートで草
◇エインヘリアル
屋台がめっちゃ並んでるな
◇エインヘリアル
紳士協定のラーメン屋もあるじゃん
◇エインヘリアル
頑固豚だ。あそこも美味いぞ
◇エインヘリアル
マジカルプリンの屋台でてんの!?
◇エインヘリアル
こっちはこっちで料理界のオールスターすぎるな
『いらっしゃいませ。何名様?』
「うわっ!? さ、三人ですわっ」
◇エインヘリアル
おっ
◇エインヘリアル
メイドサンダー!
◇エインヘリアル
この子が白鹿庵のメイドさんか
◇エインヘリアル
かわいい、ちっこい・・
◇エインヘリアル
かわいい
「え、えへへ。可愛いですわね。えへ、お名前を伺ってもよろしくて?」
『え、カミルよ。とりあえず席に案内するわね』
◇エインヘリアル
愛想悪いな?
◇エインヘリアル
かわいいだろ
◇エインヘリアル
何か訳ありのメイドさんとかじゃなかったっけ?
◇エインヘリアル
テファさんのロリコンが見え隠れしている
◇エインヘリアル
抑えて抑えて
「んへへ。カミルちゃんは〈白鹿庵〉のメイドさんなんですの?」
『ええ、そうよ。ぴっ!? き、気持ち悪いわね、離してよ』
◇エインヘリアル
あああ……
◇エインヘリアル
カミルちゃんかわいそう
◇エインヘリアル
テファさん初手で手を握るのは止めた方が・・・
◇エインヘリアル
完全に警戒されてしまった
「ほらほら、姉さん落ち着いて。ごめんね、カミルちゃん」
『ふんっ。この席を使いなさい。注文は自分たちでね』
「分かったよ。ありがとね」
「ああっ、カミルちゃん……」
◇エインヘリアル
レスタちゃんとノルンちゃんが居てくれて良かったね
◇エインヘリアル
テファ姉さん、幼女が関わらなければいい人なんだけどなぁ
◇エインヘリアル
しかし、テファ姉さんの奇行にあそこまで強く拒絶するメイドさんも珍しくない?
◇エインヘリアル
それもそうだな
◇エインヘリアル
おっさんも扱いに困ってたりして
◇エインヘリアル
かもなぁ
「こほん。気を取り直して、腹ごしらえと参りましょう。皆様、何かおすすめはありますか?」
◇エインヘリアル
ボムカレーのインフェルノレッドドラゴン
◇エインヘリアル
ボムカレーのレインボー
◇エインヘリアル
ボムカレー緑龍
◇エインヘリアル
何食べても基本おいしいから胃袋に従ったら良いよ
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厨房で土鍋ご飯を炊いていると、カミルがむくれた顔でやってきた。
どうしたのかと尋ねてみると、どうやら少し困った客に遭ったらしい。
「俺が代わりに対応しようか?」
『別に良いわよ。殴られたわけでもないし』
本人は気にしていないと言うが、やはり接客関係の業務は少し苦手に思っているようだ。
ホムスビ相手には毅然とした態度で話していたが、生身のプレイヤー相手となると少し難しいのかもしれない。
『それよりも、注文入ってるわよ。レモンティーのホットが三つと、ブラックコーヒー五つ、あとはホットドッグ六十個とコーラ瓶を10本』
「どっかのフードファイターでも来てるのか?」
メモもせずにすらすらと注文を伝えるカミル。
それを聞いて思わず耳を疑った。
『別々の注文を合算してるだけよ。纏めて渡してくれたら、こっちで分けるわ』
「カミルは本当に優秀だなぁ」
『これくらいできて当然よ』
標準的なメイドロイドの能力がどんなものかは知らないが、恐らくカミルほどの手際の良さではないだろう。
対人能力に難がある代わりに、他の分野ではかなりのハイスペックメイドさんなのだ。
「すぐに準備するから。待っててくれ」
『はいはい。……その土鍋は何を作ってるの?』
商品受け渡し口の向こうから厨房を覗き、カミルが怪訝な顔をする。
ボムカレー用のライスは大型の炊飯機で一気に炊き上げているから、こっちはそれに使う米ではないことに気がついたらしい。
俺は目聡いメイドさんに向かって、誇らしげに語る。
「おにぎりを作るための米を炊いてるんだ」
『おにぎり? 何のために』
きょとんとするカミル。
彼女は知らないようだが、おにぎりは凄く優秀な食品で、特に今回のような場合にはとても嬉しいものなのだ。
「採掘団とか、調査団の弁当にな。おにぎりは携行食カテゴリだから外で食べられるし、重量とカロリーのバランスも優秀だ。それに、中に入る具でバフにバリエーションが出る」
『なるほど。……って、お弁当まで売り始めるの?』
カミルの発した驚きの声に、俺は深く頷いた。
米は力だ。
金属系物資が足りない今、採掘団やそれを護衛する戦闘職には頑張って貰いたい。
おにぎりで力を付けて貰って、舞台の外での活動も支えたいと思っていた。
「あとは、レティたちのためってのもあるかな。ハンバーガーを食べまくってたレティはともかく、ラクトやエイミーはそろそろ腹も減ってるだろ」
『なるほど。確かにずっと働きづめだもんね。それは喜んで貰えるんじゃない?』
テントに閉じ籠もっている俺とは違い、レティたちは今も洞窟内を探索したり、坑道のクアルプァあたりを倒したりしているはずだ。
ずっと動いていると腹が減るし、腹が減ると戦もできない。
俺がここから動けないぶん、料理だけでも届けてやりたかった。
「実際、バフ付きの携行食があると活動の効率があがるからな。そっちの方面で支援するつもりだ。それに――」
少し溜める俺に、カミルがむっと眉を寄せる。
『何よ。早く言いなさいよ』
「実はさっき、とある人に頼んでたんだ」
『頼んでた……?』
カミルが首を傾げた丁度その時。
厨房の奥にある、テントの裏口が開いた。
『お疲れ様っす! みんな到着したので、連れてきたっす!』
『はぴっ!? ほほほ、ホムスビ!? それに、アマツマラ、ウェイド……ていうか管理者全員いるじゃない!?』
現れたのは、ホムスビ。
そして、彼女を通じて招集されたウェイドたち管理者全員。
総勢七人の上位存在が一堂に会し、カミルが目を白黒させる。
「調査開拓員とのコミュニケーションの一環ということで、おにぎり弁当の売り歩きを提案したんだ」
『なんてこと考えてるのよ!?』
慌てふためくカミルに、ホムスビはにこにこと笑う。
提案したのは俺だが、それを快諾し、姉たちに呼びかけたのは彼女である。
「ちなみに、おむすびは管理者たちに作って貰う予定だ。〈料理〉スキルは無いが、エプロンと割烹着を付ければ十分に良い品質のものができるからな」
俺は〈シルキー織布工業〉のあーちゃんに依頼していた、“料理人のエプロン”と“割烹着セット”を管理者たちに渡す。
早速、いつものワンピースからそれに着替えた管理者たちは、小柄なのも相まって給食当番の子のようだ。
『つ、罪深いことを……』
「はっはっは。カミルも作るか?」
『ええっ。いいの?』
「一応、もう一着準備してるからな。無くてもカミルの〈家事〉スキルなら十分かも知れないが」
駄目で元々くらいの気持ちで提案してみると、意外と明るい声が返ってきた。
接客よりも、厨房で料理しているほうが、彼女にとってはやりやすいのかもしれない。
『カミルも手伝って欲しいっす。わたしたちは料理をしたことがないっすから』
ホムスビが手を伸ばして誘う。
カミルは恐る恐ると言った様子で、それでも自ら厨房に入ってきた。
『なァ、あたしはまだ〈鉄神兵団〉の野郎から聞き出したいことがあるんだが……』
『このエプロン、ひらひらしすぎじゃねえか?』
『せやろか。あてはこういうの可愛らしぃて好きやけどなぁ』
『あぅ。スゥも、好き!』
『プリティ! レッジさん、ワタクシのためにプレゼント、ありがとうございます』
口々に言いながら、管理者たちが厨房の奥へとやってくる。
突然現れた少女たちが管理者と分かり、他バンドの料理人たちが目を丸くしていた。
『レッジ……』
彼女たちに紛れて、銀髪の少女がこちらを見る。
白い三角巾を被り、長い髪をポニーテールのように纏めているあたり、ウェイドも生真面目だ。
「おう。ウェイドも似合ってるな」
『そういう話では……。まあ、今回は貴方の提案が一定の成果を出すと予測されたため、仕方なく付き合っているだけですからね』
「分かってるよ。よろしく頼む」
ふん、と鼻を鳴らすウェイド。
彼女は早速、流し場に行って手を洗っていた。
『ねえ、レッジ』
「うん?」
カミルもメイド服からエプロン姿に装いを変える。
いつもの黒を基調とした服から、真っ白な姿になって、こちらも赤髪が良く映えていた。
『おにぎり弁当を管理者に作らせるだなんて。何か考えでもあるの?』
「そうだな、一つ間違いを訂正しよう。おにぎりじゃなくて、おむすびだ」
疑いの目を向けるカミルに向けて、指を立てて言う。
きょとんとする彼女に、俺はにやりと笑って、このアイディアを思いついた切っ掛けを話した。
「ホムスビのおむすびって事だ」
『――駄洒落じゃないの!』
瞬間、脛に強い衝撃が走った。
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Tips
◇おにぎり
炊き上げた米を少しの塩と共に握った料理。簡単ながら、中に色々な具材を入れることで豊富なバリエーションがあり、片手で食べられることもあって携行食に向いている。
一つ一つ、思いを込めて。頑張るあの人のために。
満腹度が20回復。一定時間、LP回復速度が僅かに上昇する。一定時間、LP最大量が僅かに増加する。
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