第336話「思えば遠くに」

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FPO日誌

 このブログはVRMMO、FrontierPlanetをプレイしている一般のおじさんが惑星イザナミでの出来事をぼんやりと記していく日誌です。

 あまり有益な情報などはありません。

 攻略情報は公式wikiかBBSのほうがいいでしょう。

 上級者向けのものは「大鷲の騎士団(別窓)」や「ねこのあしあと(別窓)」へ。

 あくまでも、平凡な日常を淡々と記したものであることにご留意ください。


#144「エキシビジョンマッチ」


 BBB、トーナメント、キヨウ祭と立て続けにイベントが行われました。皆様どのようにお過ごしでしょうか。


 私もそれぞれのイベントに観客や参加者として参加し、とても楽しく時間を忘れて熱中することができました。

 それぞれのイベントについては個別に詳しい記事を公開していますので、そちらをご覧下さい。


 さて、今回の本題は「エキシビジョンマッチ」。

 当ブログにも既に多くの問い合わせを頂いている、キヨウ祭のモチマキ直後に行われた私と〈大鷲の騎士団〉団長アストラさんとの対人試合についてです。


 こちら、最初に話が上がったのはアマツマラの公式トーナメントの直後でした。

 この大会でアストラさんは栄光ある初代チャンピオンの座を勝ち取りました。それ自体、とてつもない偉業なのですが、彼はそのあと私に試合を申し込んできました。

 せっかくの申し出だったので断る理由も無く、ただキヨウ祭の後ならばと条件を付けて快諾しました。


 その時の私は、てっきりイベントが終わった後にでもアマツマラの闘技場で個人的に戦うものだと思っていたのですが、アストラさんはチャンピオン特典を使い各都市の管理者へ直接要望を出していたようです。


 意見箱よりも更に直接的に要望を伝えられる権利はBBBの各コース優勝者など、今後もイベントで優れた成績を収めたプレイヤーに付与されるようなので、そちらは是非皆さん頑張って下さい。


 ともかく、そうしてアストラさんは各都市の管理者と協力して、あの舞台を用意してくれました。

 闘技場のリングよりも広く、観衆は多かったですが結果的には私自身自由に戦えてよかったと思います。


 試合の結果についても少し述べておきましょう。

 今回のルールはアイテム、装備など無制限、どちらかが戦闘不能になるまで続くフリーダムマッチです。

 またフィールド自体もかなり広く、あの舞台の外、キヨウの町に飛び出してもリングアウトになることもないようでした。


 攻略最前線を走る正真正銘のトッププレイヤーであるアストラさんと、自由気ままに歩き回っているだけの私。

 試合の結果は一応私の判定勝ちとなりました。

 とはいえ、私の勝因はただ彼の知らないことをして不意を突けたことに限るでしょう。

 この日のために、というわけではありませんが今まで一度も使わなかった色々な技を今回の試合で使用しました。

 アストラさんが初めから『神気』を使っていたら『泥の腕』は無効化されていましたし、槍の爆発に構わず喰らい付かれたら押し負けていたと思います。

 そう言った意味では、日頃から“おもしろさ”を追求してきた過程がここで結実したようにも感じました。


 これからも自由に、楽しんで、この惑星イザナミで心からおもしろいと思うモノを発見していきたいと思います。


PS

 最後に少しだけ宣伝を。

 アストラさんとの試合でも使用した小蜘蛛と親蜘蛛を複合させた“浮蜘蛛”システムはスサノオ-エリアF103〈ネヴァの工房〉にてスターターセットを販売中です。

 最小構成は小蜘蛛3機と親蜘蛛1機、必要スキルは〈野営〉50〈罠〉30〈機械操作〉20となっております。

 またLP回復機能を省いた代わりに〈野営〉スキルを必要としないコンパクトバージョンも用意しております。

 もしこの試合でご興味をもたれた方は是非。

 シルバーストリングも撃てます。

 伸縮型シルバーストリングもあります。


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◇ななしの調査隊員

キヨウ祭終わりましたね


◇ななしの調査隊員

キヨウ祭終わったってよりおっさんとだんちょの試合が終わったって感じだけども


◇ななしの調査隊員

餅撒きで知らない管理者も出てきたのに、最後の最後で全部おっさんらがかっさらってったぞ


◇ななしの調査隊員

何だったんだあの試合


◇ななしの調査隊員

おっさんのブログ更新されてるぜ


◇ななしの調査隊員

うrlplz


◇ななしの調査隊員

リンク張って


◇ななしの調査隊員

ソースも張らずに報告とな


◇ななしの調査隊員

なんでお前らは頑なにブクマをしないんだ・・・


◇ななしの調査隊員

あの試合は団長から言い出したのか

トーナメント優勝したら結構我が儘聞いてくれるんだな


◇ななしの調査隊員

いいなぁ優勝狙いたくなったわ


◇ななしの調査隊員

まあトーナメントで団長に勝てる自信ないんですけどね

実質団長専用じゃねえの?


◇ななしの調査隊員

そのへんは何かしら対策されるじゃろ


◇ななしの調査隊員

多少の対策でなんとかなるもんかね


◇ななしの調査隊員

しかしようやくおじさんも多少の自覚を持ってくれたか


◇ななしの調査隊員

いままで一般人って言ってたのがおかしいんだよ


◇ななしの調査隊員

なんでもっと早く気付かなかったのか


◇ななしの調査隊員

しかしトップのあいさつは特に変わっていないという


◇ななしの調査隊員

ただまああの試合自体は面白かったよ

いくらおっさんが頭おっさんでもアストラに勝てるとは思わなかった


◇ななしの調査隊員

ガチゴリ戦闘特化ビルド相手に趣味ビルドで勝ってるんだろ?謎すぎるって


◇ななしの調査隊員

あれはアストラが舐めプしたからだろ

団長が本気出せば瞬殺できてたはずだし


◇ななしの調査隊員

最初の鍔迫り合いがまず人間離れしてたよな

おっさんなんであの初撃に反応できたの?


◇ななしの調査隊員

どっかの速度特化ビルドさんが草葉の陰で泣いてそう


◇ななしの調査隊員

ラなんとかさん死んでねーよ


◇ななしの調査隊員

疾風さんも一応ガチガチトッププレイヤーなんすよ


◇ななしの調査隊員

あれはもう脚力特化とかそういう部類の話じゃなさそう

だっておっさん、アストラが剣抜くよりも速く防御行動に出てたもん


◇ななしの調査隊員

野生動物かよ


◇ななしの調査隊員

勘が鋭すぎる


◇ななしの調査隊員

まじで中年の反応速度じゃないよ


◇ななしの調査隊員

中盤の打ち合いでもお互いリベ技決め合ってたしな

あれ多分掠った瞬間LP全損レベルまで高まってたでしょ


◇ななしの調査隊員

なんなんだろうなぁ

トッププレイヤーって動きのキレが根本的に違うよな


◇ななしの調査隊員

なんか個人差あるらしいね

仮想現実での身体の動かし方って


◇ななしの調査隊員

あの試合、アストラの敗因が泥腕で止まったことっておっさん言ってるけど本当だろうか


◇ななしの調査隊員

団長の流派にデバフ無効バフあるからな

事前にそれ張られてたら終わってたって話だ


◇ななしの調査隊員

おっさんそういえば支援アーツ使いなんだよな

普段使ってないから知らんかったわ


◇ななしの調査隊員

支援アーツ使いだけど普段は回復とか強化系しか使ってなかったからな

デバフ使ってるのはあれが初めてだったんじゃない?


◇ななしの調査隊員

だからおっさんガチ勢の団長も驚いてたのか


◇ななしの調査隊員

切り札切った感じか

浪漫だな


◇ななしの調査隊員

切り札って言えばあの槍もかっこ良かったな

爆発するやつ


◇ななしの調査隊員

あれはいい

爆発は浪漫だ


◇ななしの調査隊員

穂先使い捨てっぽいよなあれ

あれ、なんかどっかで見たような……


◇ななしの調査隊員

赤ウサちゃんじゃろ


◇ななしの調査隊員

ああ・・・


◇ななしの調査隊員

あれかぁ


◇ななしの調査隊員

そこ引き継いじゃったのか


◇ななしの調査隊員

あの爆発、目隠し説もあるな


◇ななしの調査隊員

爆発させた瞬間にドローン飛ばしてたもんな

よく考えてるわ


◇ななしの調査隊員

てことはあの後ドローン操作しながら戦ってたってこと?

やっぱ頭おっさんじゃん


◇ななしの調査隊員

そりゃおっさんなんだから頭おっさんに決まってるだろ


◇ななしの調査隊員

元祖ゾ


◇ななしの調査隊員

あの人一度に何機ドローン動かせるんだ


◇ななしの調査隊員

六機くらい動かしてた?


◇ななしの調査隊員

狙撃で四機かな

あと自爆させた奴が三機


◇ななしの調査隊員

よーやるわ・・・


◇ななしの調査隊員

DAFシステムってなんか統合管理用のユニットもあったよな?


◇ななしの調査隊員

今回見てないな


◇ななしの調査隊員

・・・えっ


◇ななしの調査隊員

もしかして使ってないの?

全部自分の頭で管理してたの?


◇ななしの調査隊員

ロボットかよ


◇ななしの調査隊員

俺たちみんなロボットだぞ


◇ななしの調査隊員

まじでロボットがヘッドセット着けてる説に信憑性が出てきてしまった


◇ななしの調査隊員

白神獣の時なんかヤバイくらい大量に動かしてなかったっけ


◇ななしの調査隊員

頭破裂しそう


◇ななしの調査隊員

流石に体調異常で強制ログアウト喰らいそう


◇ななしの調査隊員

おっさんのドローン地味に高性能なんだよな

俺、北町だったんだけどあの人のドローンのカメラ性能エグくて笑ったわ


◇ななしの調査隊員

ハガネ中継してた時か

空間投影のホロ使ってたな


◇ななしの調査隊員

あれ一つ何十万しなかったっけ・・・


◇ななしの調査隊員

あの自爆した奴も大概高性能

DAFシステムのユニットもネヴァさんとこで売ってるけど、やばいよ


◇ななしの調査隊員

だから記事の最後に宣伝入れてたのか


◇ななしの調査隊員

金遣い荒そうだもんなぁ


◇ななしの調査隊員

値段相応の性能はあるんだけど、その機能がピーキーすぎるんだよ

おっさんは全プレイヤーが頭おっさんだと勘違いしてけど


◇ななしの調査隊員

あれ使いこなせる奴何人いるんだよってレベル


◇ななしの調査隊員

シルバーストリングはお手軽拘束罠だろ!


◇ななしの調査隊員

あれもまあまあ良いお値段するよね


◇ななしの調査隊員

まあ高純度の青白鉄鋼合金糸だからなぁ

しかも改良版は特殊構造してるから更にお高い


◇ななしの調査隊員

いやぁおじさんと団長の熱い抱擁は見所でしたね


◇ななしの調査隊員

熱い抱擁(爆発


◇ななしの調査隊員

熱い抱擁(物理


◇ななしの調査隊員

まあ諸共ぶち抜かれてるんですけど


◇ななしの調査隊員

おっさん割と命軽んじてるよな

普通自分ごと撃ち抜かんて


◇ななしの調査隊員

あの時客席がわっと沸いて、直後にドン引きしてたのおもしろかった


◇ななしの調査隊員

そのあとは二人で小屋に閉じ籠もっておたのしみだったし


◇ななしの調査隊員

おたのしみ(トドメ


◇ななしの調査隊員

心中なんだよなぁ


◇ななしの調査隊員

愛ですよ愛


◇ななしの調査隊員

殺し愛


◇ななしの調査隊員

小屋のリジェネでギリギリおっさんが生き延びた感じだっけ


◇ななしの調査隊員

対人状態だと団長にはリジェネ入らないからね


◇ななしの調査隊員

最近のおっさんはほんと怖いよ


◇ななしの調査隊員

〈野営〉と〈罠〉の源石相場めっちゃ上がってて笑う


◇ななしの調査隊員

第二第三のおっさん・・・


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 穏やかな波の音が微かに耳を撫でる。

 その心地よい調べに心を穏やかにしながら、鼻歌まじりで庭先に座り込んだ。


「お、良い感じじゃないか」


 ぷりんとした瑞々しい青葉の影に隠れるように、柔らかな土からぽっこりと白いものが見えている。

 ステータスウィンドウを見てみれば、すでに収穫可能時期に入っていた。


「ふふふ、丹精込めて育てた甲斐があったな」


 俺は知らず知らずのうちに笑みを深め、ゆっくりとそれを土の中から引き抜いた。


「みんな、収穫できたぞ!」


 わざわざ用意したカゴに乗せて、裏口から別荘の中に入る。

 大部屋で自由に過ごしていたレティたちが一斉に視線を向け、すぐに僅かに下げた。


「なんですかそれ?」

「大根?」


 首を傾げる少女たち。

 俺はかっくりと頭を落とす。


「カブだよ、カブ。ずっと育ててたろ」

「そういえばそんなのもあったわね」


 雑誌をペラペラと捲っていたエイミーが顔を上げる。

 彼女は俺が土いじりしている時に時々話しかけてくれていたから覚えていたらしい。

 他のメンバーはそもそも裏庭にさえ入った姿を見ていないが。


「カブ植えたのって結構前じゃありませんでした?」


 畳に敷いた座布団の上にちょこんと座り、湯飲みを持つトーカが首を傾げる。


「収獲自体は初めてじゃない。ゲーム内時間で三日もあれば育ちきるからな」

「じゃあそれはなんです?」


 再びレティの視線がカゴに積まれた真っ白で丸いカブへと向く。

 拳を二つ合わせた程度の小ぶりなサイズで、真っ白美肌の新鮮なカブだ。

 俺はカゴごとそれを掲げ、胸を張る。


「何を隠そう、星5品質のカブなんだ!」

「……へぇ」


 高らかに放った言葉。

 しかし彼女たちの反応は思ったほど劇的ではなかった。


「あ、あれ? 星5だぞ? 星5!」

「いやあの、星5品質がどんなもんなのかレティ知らないですので……」

「レッジ以外みんな生産系スキルは専門外だからねぇ」


 ザクザクと容赦ない言葉が突き刺さる。

 しかし俺はそれに屈せずなんとか立ち上がった。


「星5はいわゆる一級品だ。星1が粗悪、そこから不良、三級、二級と続くんだな」

「つまり一番上ってこと?」

「いや、特級、超特級、伝説、神話、とあって最後に星10の銀河があるらしい」

「ええ……なんですかそのインフレしまくったカードのレアリティみたいなの」


 俺の説明にレティとラクトが眉を寄せる。

 まあ、その気持ちは分からんでもない。


「とはいえ現状、プレイヤーによる栽培が成功したのはギリギリ特級まで。市販の種を普通に育てると星2になるから、品質の良いものを掛け合わせて世代を重ねる必要があるんだ。1級の星5は十分すごいんだぞ」

「なるほど。つまりお味の方も1級ということでよろしいので?」


 長々とした説明よりも味が先だとレティが唇を舐める。

 食欲に素直な彼女に呆れつつ、俺は頷いた。


「まあそういうことだ。というわけで今からシチューでも作ろうと思ってな」

「やったぁ!」


 ここまで来てようやく待ち望んでいた反応が見れた。

 安心したような悲しいような複雑な気持ちを抱え、俺はキッチンへ足を向ける。


「っと、そういえばカミルは? 姿が見えないけど」


 その前にふと気になったことを尋ねる。

 さほど広くもない別荘だ、彼女の姿は大抵いつでも少し捜せば見つかったが今日は見当たらない。

 そうするとレティが再び顔を上げ、隣の部屋に目を向けた。


「今、ミモレちゃんが来てるんです。姉妹水入らずでお話してるみたいですよ」

「なるほど」


 どうやらゲストルームは本来の役割を果たしているらしい。

 そういうことならば邪魔をするのも無粋だろう。


「……ミモレのぶんもシチュー作ってやるか」

「レッジ、なんか凄いね」


 軽く言葉を零すと、ラクトが薄く笑んで言う。

 どういうことかと首を傾げると彼女は続けていった。


「ついさっきまでアストラとバリバリの戦闘してたのに、今は完全に農家のおじさんだもん。ほんとにスキル値1,050以内に収まってるの?」

「それはレティも思いますね。レッジさん、戦闘の時とオフの時で全然違いますもん」

「俺としてはどっちもオフなんだがなぁ」


 むしろ最近オンになった時の方が少ない気がする。

 結局、俺は自分のしたいことをしているだけなのだ。


「俺はレティたちみたいに一つの事を極められないからな。生産もしたいし戦闘もしたいし写真も撮りたいし、いろんな所を旅してみたい。その結果が今の俺だよ」

「そんなふわっとした理由でそこに至れるのが凄いんですよ」


 呆れ顔のレティ。

 そんな彼女たちから逃げるように、俺は足早にキッチンへと向かうのだった。


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Tips

◇カブ

 白く丸い、可愛らしい根菜。初心者でも育てやすく、シチューや酢漬けなど簡単な料理に広く扱える。甘く柔らかな根と風味豊かな葉はまさしく春の味。


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