第263話「霧深まる森奥」
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◇ななしの調査隊員
第五域は霧森だけっぽいな
◇ななしの調査隊員
高地をぐるっと囲んでる感じ?
◇ななしの調査隊員
霊峰側は分からんが、多分そうだろうな
◇ななしの調査隊員
起点設営フェーズが終わればもっと詳しい地図も解放されるのかね
◇ななしの調査隊員
なんにせよ戦闘職の仕事は終わったのであとは生産職の皆さん頑張って下さい
◇ななしの調査隊員
おう護衛しろよ
◇ななしの調査隊員
原生生物の素材集めろ
◇ななしの調査隊員
こんなんいくらあってもいいですからね
◇ななしの調査隊員
霧狼の長い爪が全然出ないんだが
◇ななしの調査隊員
ヒント
物欲センサー
◇ななしの調査隊員
答えじゃねーか
◇ななしの調査隊員
レアドロ狙う時は最低四つくらいは泥品質うpのアクセ付けておいた方が良い
◇ななしの調査隊員
解体スキル上げてもいいんだぞ
◇ななしの調査隊員
狼牙のお守りとかなら安いしどこの市場でも売ってるだろ
◇ななしの調査隊員
お守り系は安くて安定した効果出るから色々揃えておくと良いよ
◇ななしの調査隊員
着けてもかるいしな
◇ななしの調査隊員
戦闘系のバンドが全然いない
◇ななしの調査隊員
騎士団ならサカオ側の起点で護衛してるだろ
◇ななしの調査隊員
アストラたちおらんぞ
◇ななしの調査隊員
そういえば八刃会とかも見ないな
◇ななしの調査隊員
降下フェーズだと熱心だったバンドも軒並み顔が見えんな
◇ななしの調査隊員
みんなどこいったの?
◇ななしの調査隊員
見守られることもなく
◇ななしの調査隊員
森の奥探索してるんじゃねぇの
◇ななしの調査隊員
新種の原生生物倒して新しい素材持ち帰ったら高く売れるしな
◇ななしの調査隊員
アストラとか金に困ってる気がしないんだが
◇ななしの調査隊員
図鑑埋めたいんじゃないの
◇ななしの調査隊員
新種ってのはそれだけで甘美な響きなのだ
◇ななしの調査隊員
森の奥か・・・
◇ななしの調査隊員
どうしたんだ
◇ななしの調査隊員
いや、大変そうだなって
一回森の奥行ってみたけど、起点の周りよりも遙かに大変だぞ
◇ななしの調査隊員
ええ・・・
◇ななしの調査隊員
まあそんな気はしてた
◇ななしの調査隊員
起点襲ってくる熊とかでも一杯一杯なんですけど!
◇ななしの調査隊員
ま、イベントサボって掲示板見てるような奴らは無理だよ
◇ななしの調査隊員
お、今日もいいブーメランが飛んでるな
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「しもふり、突き上げてください!」
猛犬の頭が熊の横腹を穿ち空中へ放り投げる。
レティがハンマーを構えたまま飛び上がり、宙にある赤熊を殴って地面に叩き落とした。
「レティ、次が来ますよ!」
「分かって、ます、よう!」
斬撃が飛び、飛び掛かる大柄な狼たちを切り伏せる。
彼女の肩を乗り越え、レティは転がりながら着地し、勢いを殺さずまた跳ねる。
瞬間、彼女が居た場所に黒毛の蛇が尻尾を叩き付けた。
「『
「助かります!」
氷の雨が猛る獣たちを怯ませ、空中に生成された氷の板を踏んでレティは更に高く飛び上がる。
「『
彼女が鎚を振り上げるのと同時に、大きな壁がぐるりと周囲を囲む。
逃げ場を失った獣たち目掛け巨鎚が振り落とされる。
「『大波撃』ッ!」
地面を打つハンマーの一撃が、波紋のように周囲へ広がる。
大きな揺れと共に獣たちに強い衝撃を与える波は、壁に辿り着くと更に反射して折り返した。
「おおおおおおおお」
「た、退避! 退避ぃ!」
原生生物を相手取っていたトーカたちまで揺れに巻き込まれ、慌てて“浮蜘蛛”を動かし壁の外へ脱出する。
「各自生存報告!」
「レティ、生きてます!」
「トーカ、大丈夫です。LPがちょっと危ないですが」
「エイミー、大丈夫。LPも余裕あるわ」
「ラクト、異常なーし」
「ミカゲ、大丈夫。ただ、おかわりが来てる」
「早すぎるだろ!?」
息をつく暇もなく霧の中から新たなる獣の一団が現れる。
赤熊、黒熊、レヴァーレンの幼体らしい黒蛇がそれぞれ1体、それに続く3頭の霧狼、5匹の一角兎。
「なんでこいつら、森の奥だと群れてるんだ!」
「知らないですけどレティたちはただ倒すだけです、よ!」
ビリビリと震えるような咆哮と共に駆け出す獣たち。
それに対して勇敢な少女たちもバフを更新する。
俺も負けじと支援アーツを配り、“浮蜘蛛”を動かして背中に立つラクトが攻撃しやすいポジションを取る。
「奥から新しいエネミー。今度のは新種みたい」
索敵していたラクトから報告が上がる。
見れば木々の間から背中にびっしりと鋭い棘を生やした大きな鼠の群れが走ってきていた。
「ハリネズミ!? しかもあんな大量に……」
「あっちは私に任せて。レティたちは熊の相手を!」
「任せて下さい!」
エイミーがハリネズミたちの前に立ちはだかり、腰を落として拳を構える。
「『自壊し飛散し反射し増幅し続ける十二の鋭利な貫く針の飛散する三枚の小盾』」
三枚の盾が弾ける。
白い針が扇状に広がり、ハリネズミたちを貫く。
「エイミー!」
「っ!? 『
攻撃を受けた瞬間、ハリネズミたちは真っ赤になって風船のように膨れ上がる。
嫌な予感が脳裏を過りエイミーに声を掛けると、彼女は咄嗟に大きな壁を目の前に生成した。
「くぅ……!」
生成が完了した直後、無数の針が乱射される。
四方八方へ狙いも付けず放たれた針は葉を貫き幹へ深く突き刺さる。
大壁も一瞬にして剣山のようになり、許容するダメージ量を消化していく。
「風牙流、一の技、『群狼』!」
浮蜘蛛を動かし、高速で壁の前に出る。
太い針が全身に突き刺さるが構わず槍を薙ぎ暴風でハリネズミを吹き飛ばす。
「レッジ!」
「LPは回復の方が追いついてるから大丈夫だ。それよりもあのハリネズミを片付ける方を優先してくれ」
体中に刺さった針を引き抜きながら、アンプルを砕く。
テントの影響範囲内だったため死ぬことはなかったが、気絶の可能性もある危険域には違いない。
「よくもレッジさんを針だらけにしてくれやがりましたね!」
一瞬で2頭の熊を腐葉土に沈め、レティが飛び出してくる。
彼女は鎚のリーチを最大限に活かしてぐるぐると回転しながらハリネズミを吹き飛ばす。
「おらぁあああっ!」
「ちょ、レティ、回復しろって!」
自分に針が刺さるのも構わず攻撃を続けるレティを必死に回復し続ける。
彼女の方がLP量で勝るとはいえ、テクニックを連打しているため消耗も激しい。
万が一四肢欠損などに陥ってしまったら、撤退も余儀なくされてしまう。
「『
その時、ハリネズミたちが瞬間的に凍結する。
レティがハンマーで砕いた直後に再凍結が行われ、針も飛ばない。
「二人とも頭冷やして。もうちょっと冷静に行動してよね」
そう言うラクトは少しご立腹の様子で、俺とレティは素直にペコリと頭を下げるのだった。
「……エネミーの気配、無くなった。しばらくは安全、だと思う」
森の中で乱戦を続け、周囲に獣の骸が積み上がってきた頃。
ようやく状況が落ち着いた。
「ふぅ、やっとですか」
「森の奥に行けば行くほど、どんどん賑やかになるわねぇ」
レティたちも流石に疲労困憊の様子で“浮蜘蛛”の周囲に集まってくる。
〈奇竜の霧森〉は起点から奥へ進めば進むほど緑と霧の密度を増し、現れる原生生物も種の入り交じった群れを形成していた。
遭遇の頻度も段々と高くなり、先ほどのハリネズミのような新種も現れる。
「物資はまだあるか?」
「しもふり様々ですね。一応、まだ余裕はありますよ」
「レッジのテントのおかげでアンプルも結構節約できてるよ」
油断することなく、しかし楽な姿勢を取ってそれぞれに休息を取る。
ラクトなどは“浮蜘蛛”の背に仰向けになって伸びている。
「私たちだけ、ということもないでしょうし。森の先を目指す他の方々も苦労されているんでしょうね」
「多分ね。騎士団なんかはもっと余裕あるんでしょうけど」
「アストラは逆に燃えてそうだなぁ」
彼は敵が強ければ強いほど、逆境であればあるほどに力を発揮できるタイプだ。
森の中でも嬉々としてあの両手剣を振り回していることだろう。
まあ、それを言えばこちらにも……
「次はどんなエネミーが出てくるんでしょうかね! ちょっと楽しみですよ!」
「相変わらずだなぁ」
ピコピコと忙しなく耳を動かすレティ。
満身創痍だというのに、驚くほど元気が漲っている。
彼女があの様子ならまだまだ進めそうだと安堵した丁度その時だった。
不意にベルが鳴り響き、TELが来たことを示す。
「……うん?」
小さなウィンドウに表示された発信者名に首を傾げながら通話を許可する。
『こんにちはレッジさん。森攻略の首尾は如何ですか?』
若干ノイズの混じった、爽やかな青年の声。
掛けてきたのは今も絶賛〈奇竜の霧森〉攻略中であるはずのアストラだった。
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Tips
◇狼牙のお守り
鋭く尖った狼の牙を滑らかに加工し、紐を通した簡素なお守り。狼のように狩りが上手くなり、希少な素材を手に入れることができるよう願いが込められている。
装備時、ドロップアイテムに若干の品質ボーナス付与。
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