第198話「晶角の白神獣」

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◇ななしの調査隊員

なにがどうなってんだか


◇ななしの調査隊員

とりあえず滅茶苦茶強い黒い方の敵を倒せばいいんだろ


◇ななしの調査隊員

結局これは何が原因でどうなってんだ?


◇ななしの調査隊員

たぶんレッジたちがなんかしたからだろ


◇ななしの調査隊員

ほんと何かしらやらかしてんなぁ


◇ななしの調査隊員

とりあえず第1回の時と同じようにゾンビ戦法は使えるみたいだぞ


◇ななしの調査隊員

ウェイドはかなり押されてる。もうすぐそこまで黒い犬が来てるんだ。


◇ななしの調査隊員

アマツマラも同じ様なもんだ。生産職ばっかで戦闘職があんまりいないし寒いしで状況はもっと悪いかも。


◇ななしの調査隊員

竜鳴はアストラたちが来てるからなんとか。

あと警備NPCってめっちゃ強いのな


◇ななしの調査隊員

町中で戦った時より強く見えるわ

なんか制限されてたんかね


◇ななしの調査隊員

おっさんらの計画が阻止されようがされまいがどっちも想定してたっぽいしな


◇ななしの調査隊員

とりあえずこいつらなんとかせんといかんのじゃろ


◇ななしの調査隊員

トッププレイヤーってやっぱ強いんだなぁって


◇ななしの調査隊員

やっぱ適合者が多いのかね


◇ななしの調査隊員

VRゲーはセンスが物言うところあるからなー


◇ななしの調査隊員

戦闘には参加せずに黒神獣と白神獣の戦い見てるんだが、まんま怪獣大戦争だな


◇ななしの調査隊員

動画であげてくれ


◇ななしの調査隊員

見たいなり見たいなり


◇ななしの調査隊員

→[怪獣大戦争.image]


◇ななしの調査隊員

どっちもかっこいいな


◇ななしの調査隊員

黒い狼めっちゃでかいんな

白い蝙蝠も大きいんだろうけど小さく見えるわ


◇ななしの調査隊員

そういえば情報規制が解除されたっていうやつはどうなったの?


◇ななしの調査隊員

詳細あがってないね


◇ななしの調査隊員

検証班もまだ見付けてないみたいだ


◇ななしの調査隊員

アストラのペットの鷹、黒神獣に特攻持ってんのかな


◇ななしの調査隊員

まじかー

まあそれでもおかしくないか


◇ななしの調査隊員

ていうか神子は全員特攻持ってんじゃないの?


◇ななしの調査隊員

かもね


◇ななしの調査隊員

おおおおおおお


◇ななしの調査隊員

なんかめっちゃ揺れてる


◇ななしの調査隊員

地震? 地震また?


◇ななしの調査隊員

今度は何の揺れだこれ


◇ななしの調査隊員

おおおおおおおお


◇ななしの調査隊員

ゆれ


◇ななしの調査隊員

全然ゆれない


◇ななしの調査隊員

俎板かな


◇ななしの調査隊員

震源地はウェイドっぽいな

ていうかアマツマラとか草原とか断崖はあんまり揺れてない


◇ななしの調査隊員

ウェイド組か

なにがあったの


◇ななしの調査隊員

わからんね


◇ななしの調査隊員

戦線は白鹿庵のメンバーが加わってかなり押し返した


◇ななしの調査隊員

つまりまたおっさんがなんかやったってことだな


◇ななしの調査隊員

ほんも重要人物すぎるだろおっさん


◇ななしの調査隊員

おっさんのくせに


◇ななしの調査隊員

そんでおっさんなにしたんだ


◇ななしの調査隊員

特に変わった様子は無いが・・・


◇ななしの調査隊員

うーん? なんか霧が濃くなった気がする


◇ななしの調査隊員

言われれば


◇ななしの調査隊員

どんどん出てきてるぞ


◇ななしの調査隊員

あかん隣の相方も見えねぇ


◇ななしの調査隊員

なんだこれ


◇ななしの調査隊員

どうなってんだこれ


◇ななしの調査隊員

とりあえず町に戻る


◇ななしの調査隊員

同士討ちは無いにせよ黒神獣は暴れてんだろ


◇ななしの調査隊員

避難できる奴は避難しとけ


◇ななしの調査隊員

ウェイド周辺がパニック映画みてーになってんな


◇ななしの調査隊員

こんな町に居られるか! 俺は霧の外へ行くぞ!


◇ななしの調査隊員

町中も霧が十万してんな


◇ななしの調査隊員

充満


◇ななしの調査隊員

滝の上から見てんだけど、霧はウェイド中心に発生してるっぽい

そんでもって黒神獣どもは霧の中に入ってこないみたいだぞ


◇ななしの調査隊員

さっき霧の外に行った奴死んでるんじゃね


◇ななしの調査隊員

とりあえず霧の中なら安全ってことでおk?


◇ななしの調査隊員

それで良いと思う


◇ななしの調査隊員

またおっさんがなんかしたっぽいな


◇ななしの調査隊員

おっさん……


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_/_/_/_/_/


「ああああっ! なんですのこのワンちゃんたち! しつこいったら!」


◇エインヘリアル

がんばえー


◇エインヘリアル

〈群影のカラスト=アルゴス〉って名前らしい


◇エインヘリアル

実体のある分身って感じかなぁ


◇エインヘリアル

普通に厄介なニンジャ犬


「『機装展開アーマーマージ』、咬み啜る血の装ドレス・オブ・ダインスレイヴッッッ!」


◇エインヘリアル

テファさんの本気だ!


◇エインヘリアル

ドレス! ミニスカ!


◇エインヘリアル

大剣!


◇エインヘリアル

かっこいい


◇エインヘリアル

やっちまえ!


「うぅぅらぁぁああああっ!! 諸、共、吹き飛べぇぇぇい!! ……ですわっ!」


◇エインヘリアル

とってつけたようなですわ好き


◇エインヘリアル

正体表したね


◇エインヘリアル

そうわよ


「機装技、『血鬼咲闇』」


◇エインヘリアル

けっきさかん!


◇エインヘリアル

かっこいいよな、機装技


◇エインヘリアル

流派とは別物?


◇エインヘリアル

装備特有のテクニックみたいなもんだよ


◇エインヘリアル

強いけど特定の装備を付けとかないと発動できない


◇エインヘリアル

あとかっこいい


「『百閃連舞』ッ!」


◇エインヘリアル

ああ、子犬が散っていく


◇エインヘリアル

しかしキリがねぇな


◇エインヘリアル

しかし霧はある


◇エインヘリアル

斬りもある


◇エインヘリアル

ていうかウェイドの方、霧濃くない?


◇エインヘリアル

ほんまや、放送に夢中で周りの様子に気付かなかった


◇エインヘリアル

テファさんなんかヤバそうですよ!


「あああっ! あ、こほんっ。えっと、なんだか周囲の霧が濃くなってますわね」


◇エインヘリアル

そうですわね


◇エインヘリアル

はい


◇エインヘリアル

いったん町に戻ったら?

調査隊の仕事も終わったんでしょ?


「そうですわね。物資もありませんし、一度戻りますか。――『機装解除アーマーパージ』っと」


◇エインヘリアル

普段着も可愛い。推せる。


◇エインヘリアル

とりあえず霧の中に入ったら黒真珠はいなくなるみたいだ


「情報ありがとうございます。調査隊の皆さんも全員居ますから、移動しますわね」


◇エインヘリアル

ちゃんと隊長としてもしっかりしてんなぁ


◇エインヘリアル

こう見えて長女やからね


「こう見えてってどういうことですの? ほら、皆さん出発しましょ――って、あれはなんですの!?」


◇エインヘリアル

どうしましたの!?


◇エインヘリアル

なにがあった


◇エインヘリアル

んんん、なんだあれ


◇エインヘリアル

ウェイドの霧の中からなんかでっかいのが


◇エインヘリアル

あれ、鹿か?


◇エインヘリアル

おっさんが連れてた子鹿に似てるな


◇エインヘリアル

サイズが1,000倍くらい違うだろ


「よく分かりませんが、白い毛並みですし白神獣なのではないでしょうか。とりあえず、攻撃はしないみたいですが……」


◇エインヘリアル

これ町に戻っても大丈夫なのか?


◇エインヘリアル

町は混乱してるが敵はいない


◇エインヘリアル

こんな状況でも問題なく動いてるヤタガラスよ


◇エインヘリアル

姉さん気をつけて


「ありがとうございます。とりあえず、安全そうなのでウェイドへと向かうことにしますわね」


_/_/_/_/_/


 レティたちに門を任せた俺は、白月と共にウェイドの中心へと走った。

 中央制御区域の端末は疎か百戦錬磨の検証班によってもRoI――重要記録の詳細は見つかっていない。


「ということはつまり、情報は限られた人にしか開示されていないってことだ」


 遠く後ろに戦渦の騒ぎを聞きながら、静かなシャッター街をひた走る。


「白月、お前の出番はもうすぐだ。覚悟を決めろよ」


 併走する白月の黒く湿った瞳を見つめ語りかける。

 言葉を話さない小さな牡鹿は、しかし明確な意思を込めて俺を見返した。


「――やっぱりここみたいだな」


 そうして、俺と白月は目的の場所に辿り着く。

 ウェイドの中心、町の要のすぐ傍にある大樹。


「白樹」


 かつて俺の物だった要塞によって守られ、今は整えられた緑の中で静かに佇む白い大樹。

 外の喧噪も遠ざかり、しんと張り詰めた糸のような静寂が彼の老樹を包み込んでいる。


「なんか活性化してるよな、これ」


 白樹は以前よりも更に生気を溢れさせていた。

 葉先、枝先に至るまでピンと張り、白い幹も艶々と輝いている。

 レイラインと呼ばれる巨大なエネルギーの流れに根ざし、その力を存分に吸い上げているのだろう。


「白月」


 傍らに立つ小さな背中を軽く撫でる。

 彼はしばらく迷うように視線を動かし、俺の手のひらを優しく舐めた。


「大丈夫だ」


 そう言って背中を押す。

 彼は決意を固め四つの蹄で歩き出す。

 柔らかな草を掻き分け、鼻先で白い幹に触れたその瞬間だった。


「ぐあっ!?」


 風と共に濃霧が広がる。

 瞬く間に周囲の景色が塗り替えられ、真っ白な闇の中に誘われる。


「白月!」


 ごうごうと耳元でうねる風が感覚を麻痺させる。

 もはやあらゆる方向感覚が無くなり、立っていることすらできずに膝を突く。


『神子の存在を確認』

『巡礼者の存在を確認』

『神子の権限を確認』

『巡礼者の権限を確認』

『重要記録:黒神獣の開示を承認』

『重要記録:未詳文明の開示を承認』

『レイラインの解放を承認』

『〈特殊開拓指令;白神獣の巡礼〉最終フェーズへの移行を申請』

『申請を承認』

『ホワイト・ポイント、コア、ファウンテン、ストリームの解放を承認』

『霧之角の封印を第一段階解除』

『高位神霊実体顕現に際するエネルギー供給を開始』

『ホワイト・ポイントの接続を確認』

『〈神還り〉イベントの実行を承認』


 流れ込む情報の渦に頭を抱える。

 自我を失いそうになるほどの衝撃と衝動を押さえ込み、荒い息の中で平静を取り戻そうとする。


「が、あっ、アアアアッ!」


 その時。


「っ!?」


 何か大きい物が頬を掠めて降ってくる。

 それは地面を揺らして真横へ落ちる。


「……脚?」


 巨大な――白樹の太い幹よりも更に頑強な、白い体毛に覆われた脚だ。

 透明な水晶のような蹄が、地面を踏みしめている。


 まるで鹿のそれのような、しかしあまりにも大きいそれを辿り、見上げる。


「……白月」


 そこには一頭の牡鹿が立っていた。

 制御塔にすら匹敵するほどの高さから俺を見下ろす、荘厳な枝角を持つ鹿がいた。

 身体は半透明の白色で、何故か建造物を透過しているが、そしてあまりにも大きさが違いすぎるが、それは白月に違いなかった。


「白神獣、か」


 思わず口の端から零れた言葉。

 それを聞いて彼は満足げに頷いた。


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Tips

◇機装技

 アーマーテクニック。特定の装備を着用していることを発動の条件とする特殊なテクニック。使用条件が課されていることもあり強力なものが多い。

 装備条件さえ揃えていれば発動可能なものから、それに加えて特定のスキルレベルを要求するものまで、その種類は多く全ての網羅は難しい。


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