第150話「おじ日誌#35」
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FPO日誌
このブログはVRMMO、FrontierPlanetをプレイしている一般のおじさんが惑星イザナミでの出来事をぼんやりと記していく日誌です。
あまり有益な情報などはありません。
攻略情報は公式wikiかBBSのほうがいいでしょう。
上級者向けのものは「大鷲の騎士団(別窓)」や「ねこのあしあと(別窓)」へ。
あくまでも、平凡な日常を淡々と記したものであることにご留意ください。
#35「〈鎧魚の瀑布〉ボス、老鎧のヘルムを討伐しました」
ロールやデコレーション、そしてバンドなどの新システムが実装されて数日が経ちました。
皆様いかがお過ごしでしょうか。
私は先日、以前からのパーティメンバーに交流のあった二人を加えた六名で〈白鹿庵〉というバンドを設立しました。
何故か私がリーダーに任命されてしまいましたが、上下のないフラットで和気藹々とした、アットホームな雰囲気のバンドを目指していきたいと思っています。
バンドの拠点、ガレージはスサノオ02――今はウェイドという通称で親しまれている異国情緒溢れる町の一角にあります。
一人に一つずつの私室と大部屋、地下室があるだけの小さな城ですが、頼りになるメイドさんもいて日々調度品も充実し、居心地の良い空間に仕上がっています。
大鷲の騎士団やダマスカス組合のような大手バンドなら、もっと大規模な建物を購入しているらしいですね。
私は先日のシード02迎撃作戦[別窓]もあって金欠ですが。
とまれ拠点も用意でき、私たちはそれぞれのロール任務をこなして能力を獲得するため、瀑布の森を奥へ奥へと進んでいました。
私のロールはコレクター系中級職の
“老獣の白石”はまあその辺の原生生物を仲間が乱獲してくれたのでそれほど労せずに五つ揃ったのですが、“光帯リンゴ”“妖精の小枝”“闇の結晶”の採取系三種類が辛かった……。
リンゴは入手は難しくないですが如何せん数が少なく、小枝は何も考えずに斧で切ると簡単に折れ、闇の結晶に関してはあのパズルが厄介で。
とはいえ仲間が根気強く付き合ってくれたおかげで時間は掛かりましたが無事に全て手に入れることができました。
[木に成るゲーミングアップル.img]
複合スキル、ロール任務の難易度が高いだけあって便利な能力があるのが救いですね。
私のロールについてはこんなところで。
今日の本題は長らく発見されていなかった〈鎧魚の瀑布〉のボスを発見・討伐したことです。
ロール任務をこなしながら、ボスの探索も併せて行っていた我々は森を奥へ奥へと進んでいました。
しかし有名な攻略者の皆さんが日夜探し回っても見付けられないボス。そう簡単には見付けられません。
そこで仲間の提案で初心に戻り、瀑布まで引き返すことになりました。
瀑布の裏側、とても綺麗で思わず息を呑みました。
[岩と水の回廊.img]
まあこの後、仲間が壁に大穴を開けたのですが。
それがなんと大当たりで、今まで発見されていなかった洞窟へ繋がっていました。
[洞窟入り口.img]
洞窟内には下層から上層へ向かう洞窟にも生息していたアシッドスレッジやその亜種らしいヴェノムスレッジの大群が蠢く、非常に気持ちの悪いエリアでした。
[ナメクジの大群.img]
しかしまあそれらを仲間は鎧袖一触、瞬く間に蹴散らして洞窟の奥へと進みます。
嫌らしい亀裂を飛び越えた先にあったのは、静かな地底湖。
[地底湖.img]
仲間の一人がアーツで氷を作りながら偵察に出掛けている間、キャンプを張って休憩し、私は釣りに勤しんでいました。
地底湖とはいえ水場があるなら釣り糸を垂らしてみるのが釣り師ですよね。
結果としてはケイブフィッシュという、目の退化した白い魚が釣れました。
[ケイブフィッシュ.img]
見た目は仲間にもあまり評判は良くありませんでしたが、焚き火で焼いてみるとこれが美味しく、釣り糸を垂らしさえすればすぐに釣れるということもあって皆で楽しく食事に興じました。
[ケイブフィッシュ焼き.img]
そうこうしていると偵察に行っていた仲間が帰還。
しかもなんと、彼女はスケイルフィッシュの親玉のような巨大魚も連れてきてくれました。
[巨大魚襲来!.img]
そう、この巨大魚こそ長らく存在そのものが厚いヴェールに包まれていた謎のボス、老鎧のヘルムだったのです。
水辺のボスと言えば〈水蛇の湖沼〉の隠匿のラピスを思い出しますが、彼(彼女?)は水中洞窟を経るとはいえ陸上での戦いです。
今回のヘルムはれっきとした魚、水棲生物なので戦闘は困難を極めると予想されました。
しかし偵察を買って出てくれた仲間の提案を受け、私が釣り竿で水面に引きずり出したところを水面ごと凍結。
ボスの上半身だけを露出させることに成功しました。
優秀なダメージソースを担うアーツ使いが足場と固定の維持に専念する必要がありますが、白鹿庵にはまだ二人も近接アタッカーがいます。
更にはトリッキーな戦法でヘルムを固定するニンジャ、猛攻を一手に引き受けるタンクと、我ながらバランスの良いパーティだと思います。
私はといえば、どれをとっても中途半端なのですが、キャンプを維持しつつ〈支援アーツ〉で仲間の回復をして、たまに手薄になったポジションにピンチヒッターとして入る、という便利屋をしていました。
鎧魚と言うだけあって堅牢なヘルムにダメージを与えるのは、近接職はあまり相性が良くないようです。
しかしアーツ使いは手が回らず、近接の二人はとある大胆な戦法を編み出しました。
それは一人がヘルムを怯ませて口を開かせ、そこへもう一人が飛び込んで体内で攻撃するというもの。
正直目の当たりにした時は信じられませんでしたが、さしものヘルムも体内は弱いようで、かなりの大ダメージを与えることができました。
ま、その反動で体内に入った仲間も瀕死になって湖に沈みかけたのですが……。
ともあれこれで無事に老鎧のヘルムを討伐できました。
長く苦しい戦いでしたが、無事に勝てて良かったです。
[老鎧のヘルム討伐.img]
ボス討伐後、解体をしながらの反省会となったのですが、私はとりあえずテントの強化を早急に施す必要を感じました。
先日の作戦以降、未だにテントが初期状態なので。
公式掲示板のスレッドで質問もして、色々と大変助けになる答えを頂きましたし、今後少しずつ強化拡張していきたいと思います。
それでは、またいつか。
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画面に表示されたブログ記事を読み終わって、自然とため息が出た。
一足先にログアウトしてシンクに溜まっていた用事を適当に片付けて、少し暇ができたからもしかしてとブログを開いたらやはり更新されていた。
彼女と一緒に、あの喫茶店のあの席で書いていたのだろうか。
「だとしたら、少し妬いちゃうかな」
そんな“らしくない”言葉に我ながら笑ってしまう。
彼は普段静かにしていることが多いが、ネット上ではいささか饒舌になるらしい。
「でも、ちょっと違うよね」
そこに描かれているのはとても輝かしい日々の記録だ。
彼と、彼に篤い信頼を寄せる仲間たちの波乱に満ちた平穏な日々。
しかしそこにはわたしたちにだけ分かる誤りがある。
「貴方は、自分で思っているよりもずっと、仲間にとって大切な存在だよ」
彼はきっと自分が仲間に入れて貰っていることに感謝しているのだろう。
しかしそれは違う。
彼がいたからこそわたしたちは出会い、互いに仲間になれたのだ。
彼は中心から少し離れたところに立っていると思っているのだろうが、実のところ中心は彼なのだ。
「しかし、今回の記事は良く書けてるわね」
自分についての記述が多いだけで、少し顔がにやけてしまう。
きっと他の記事を読んだ時の他の仲間もそんな顔をしているのだろう。
「……明日も早めにログインできるといいな」
願望が口を衝いて出る。
早めに仕事を片付けて、定時で帰りたい。
変な飲み会などすべて断って、まっすぐに家に帰ろう。
「――おやすみなさい」
万年床に横たわると自然とあくびが漏れる。
身体的な疲労はあまりないが、今日は一際良く身体を動かした。
頭はとても疲れていることだろう。
そんなことをぼんやりと考えている内に、わたしはゆっくりと水底へ沈むように静かな眠りへと落ちていった。
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Tips
◇闇の結晶
光の差し込まない洞窟の奥深くなどで稀に生成される希少な鉱物。複雑な形をしており、非常に繊細。不用意に触れると瞬く間に砕けてしまうが、形状を見極め決まった順序で各所を砕くことで採石できる。
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