第149話「掲示板と二号店」
_/_/_/_/_/
◇ななしの調査隊員
一つ質問いいでしょうか。
◇ななしの調査隊員
どうぞ
◇ななしの調査隊員
やっぱ焚き火で料理はロマンあるよな
◇ななしの調査隊員
丁度話題が切れたところですので
◇ななしの調査隊員
キャンプ以外ならなんでもいいぞ
◇ななしの調査隊員
ありがとうございます。
先日テントを新しくしまして、また未強化状態のものを手に入れました。
そこで、強化方針について決めあぐねています。
なにか助言頂ければと思い、書き込ませて頂いております。
◇ななしの調査隊員
あ・・・
◇ななしの調査隊員
わかりました。
ちなみに以前のキャンプはどのようなものでしたか?
◇ななしの調査隊員
金属パーツを多用した防御力偏重の構成でした。
能力に不満はありませんでしたが、展開にかなり時間が掛かるのがネックでした。
◇ななしの調査隊員
なんとなく正体分かってしまった。
◇ななしの調査隊員
いちおうここは匿名掲示板ですよ
◇ななしの調査隊員
俺は布系のパーツを使ったミリタリーっぽい方向で組んでるよ
迷彩柄で、森に溶け込めそうな
◇ななしの調査隊員
俺はワンポールの極力シンプルな構成にしてる
ハンモックも付けてるから、瀑布の森なんかで寝てると気持ちいいんだ
これで大体展開に20秒掛かるかどうかってとこかな
◇ななしの調査隊員
PTの休息所としても使ってるから、私は防護壁を付けてますね。とは言っても質問者さんみたいながっちりした金属製じゃなくて、木製の簡易的な物ですが。
展開はおよそ2分くらいでしょうか。
◇ななしの調査隊員
なるほど、木製というのもいいですね
◇ななしの調査隊員
木材は加工が簡単だからか、コストが安い。
大体、布<木<鉄の順でコストは高く付くよ。
◇ななしの調査隊員
耐久も同じ相関ですね
◇ななしの調査隊員
ぶっちゃけ鉄まで強化する意味はあんまり見いだせないんだよな。
ボス戦で使うならともかく。
◇ななしの調査隊員
ボス戦で使う予定です。
◇ななしの調査隊員
・・・
◇ななしの調査隊員
そういやそうだったなぁ
◇ななしの調査隊員
基本素材は木材で、要所を鉄で補強というのはどうでしょう
◇ななしの調査隊員
それならコスト抑えつつ展開も早めつつ、最低限の防御力はとれるかな
◇ななしの調査隊員
いっそのこと一軒家とか、コテージ風も面白そう
◇ななしの調査隊員
それどれだけ木材消費するんですかね・・・
◇ななしの調査隊員
現実的じゃないですね
◇ななしの調査隊員
なるほど。
◇ななしの調査隊員
一軒家ですか。
◇ななしの調査隊員
まって
◇ななしの調査隊員
はやまらないで
◇ななしの調査隊員
コスト。コストわすれてる。
◇ななしの調査隊員
〈伐採〉スキルは持っているので、なんとかなると思います。
◇ななしの調査隊員
伐採持ってるのか・・・
◇ななしの調査隊員
一応蒐集家のロールを持っています。
能力はまだクエストを終わらせてませんが。
◇ななしの調査隊員
それなら・・・ワンちゃん?
◇ななしの調査隊員
いや無いでしょ。小屋だぞ。建物だぞ。
◇ななしの調査隊員
キャンプテント(不動産)
◇ななしの調査隊員
土地じゃん
◇ななしの調査隊員
ありがとうございます。
光明が差した気がします。
◇ななしの調査隊員
考え直した方が・・・
◇ななしの調査隊員
それはほんとに光ですか・・・?
◇ななしの調査隊員
俺たちはとんでもないことをしてしまったのでは・・・
_/_/_/_/_/
_/_/_/_/_/
◇河原の狗
【速報】瀑布のボスが見つかったよ!
詳細はこちら!→[URL]
◇ななしの調査隊員
おっ新聞だ
◇ななしの調査隊員
瀑布のボスもついに見つかったか
◇ななしの調査隊員
見付けたのはどこかな
百足衆かBBCか
◇ななしの調査隊員
最近は新規参入組も勢い付いてるからなぁ
妖精の輪とか
◇ななしの調査隊員
おじさんだったよ
◇ななしの調査隊員
おじさんやんけ
◇ななしの調査隊員
おっさん!?
◇ななしの調査隊員
まあ、なんとなく予想は付いてたよ
◇ななしの調査隊員
一周回って驚かなくなってきたなぁ
◇ななしの調査隊員
ブログも更新されてんな
→[URL]
◇ななしの調査隊員
老鎧のヘルム
滝の裏側に洞窟があって、その先に地底湖
◇ななしの調査隊員
わかるかーい!
◇ななしの調査隊員
いや、んなもんなかったろ。俺何回探し回ったと思ってんだ。
◇ななしの調査隊員
例の赤ウサギさんが爆発するハンマーで壁吹っ飛ばしたんだって
◇ななしの調査隊員
ええ・・・
◇ななしの調査隊員
ヴォーパルがすぎるだろ
◇ななしの調査隊員
壁吹っ飛ばすとかいう発想、ふつうある?
◇ななしの調査隊員
普通ならこんだけ有名パーティになってないんだよなぁ
◇ななしの調査隊員
あれ、ていうかいつの間にか人数増えてね?
◇ななしの調査隊員
バンド組んだらしいぞ。名前は白鹿庵。
◇ななしの調査隊員
あの鹿がマスコットってことかぁ
◇ななしの調査隊員
トーカとミカゲって、僥倖の侵攻の時にパーティ組んでた姉弟じゃん
◇ななしの調査隊員
相変わらず人脈が謎すぎる
◇ななしの調査隊員
ていうかなにげにボス初見討伐じゃんね
◇ななしの調査隊員
おじさんってカイザーもはじめに討伐してたよね
◇ななしの調査隊員
サーバー込みで最速ボス撃破(初見)記録ホルダーっすよ
◇ななしの調査隊員
普通いず何
◇ななしの調査隊員
しかしブログとはいえこうして情報纏めてくれてんのはいいな。
写真が見やすい。
◇ななしの調査隊員
おっさんカメラマンだからな
◇ななしの調査隊員
おっさんすげえなぁ
◇ななしの調査隊員
いやいやいやよく見ろこの戦い方は常人のそれじゃないだろ
◇ななしの調査隊員
ほんまや
湖面凍らせるってどんなアーツだよ
◇ななしの調査隊員
水色幼女でしょ。
たしかアーツ極振りビルドだよ
◇ななしの調査隊員
にしてもよくLP持つな
◇ななしの調査隊員
おっさんが支援アーツで回復させつつテントと焚き火も使ってるっぽいなぁ
◇ななしの調査隊員
にしてもこの規模じゃあ水面の氷維持するだけで精一杯だろ
◇ななしの調査隊員
記事にもそうかいてあるな。
役割分担は、
赤ウサギ:近接アタッカー
開祖:近接アタッカー
盾のお姉さん:盾
幼女:足場維持
ニンジャ:拘束
おっさん:支援アーツで全員のLPを管理しつつ適切なバフを飛ばしつつ盾が押された時にはピンチヒッターに出て常にテントと焚き火を維持しながら戦況を見て各自に指示を出す。
◇ななしの調査隊員
一人だけ仕事多すぎぃ
◇ななしの調査隊員
もうこれおっさんがニンジャだろ
◇ななしの調査隊員
よくもまあ支援アーツとキャンプだけでパーティのLP管理できるな
◇ななしの調査隊員
なあこれ最後は赤ウサギさんがボスの体内に入って自爆してるんだが
◇ななしの調査隊員
もうやだこのPT
◇ななしの調査隊員
頭おかしいでしょこれ
◇ななしの調査隊員
鹿はなんか霧になってるし、おじさんはその霧を足場にして空中歩行してるし
◇ななしの調査隊員
常識ってもんを考えろ
◇ななしの調査隊員
ぜひ参考にしてくださいって言われてもなぁ
◇ななしの調査隊員
参考にできる場所あります?
◇ななしの調査隊員
でも釣り師界隈と河童界隈が盛り上がってるみたい
◇ななしの調査隊員
あっそもそもこれボスを釣り上げてんのか
・・・ようやるわ
◇ななしの調査隊員
釣り上げるのは強制イベントっぽいな
ルーレット出ないって言ってる
◇ななしの調査隊員
おお、普通に魚も釣れるみたいだな
◇ななしの調査隊員
うわ、俺こういうの無理だ……
◇ななしの調査隊員
美味いみたいだぞ
◇ななしの調査隊員
ビジュアルよ
_/_/_/_/_/
「ブログ書き終わったんですか?」
「おう。ついさっきな」
ウェイドにある新天地二号店、その窓際のボックス席に座った俺とレティはそれぞれにブログを執筆したり掲示板を眺めたりと好きなことをして過ごしていた。
ヘルムの討伐後、ウェイドに戻ってきた俺たちはこの新天地で軽い祝勝会を催した。
そうしてレティと俺以外の四人はそれぞれに時間が迫っているからと言ってすでにログアウトしている。
少し静かになったテーブルを囲み、改めて〈鎧魚の瀑布〉のボスを討伐できた達成感の余韻に浸る。
「俺もトーカも、無事にロール任務を終わらせたし。とりあえず一段落だな」
ヘルムを討伐しウェイドに戻った俺はその足で制御塔に向かい、そこで無事に
蒐集家の能力は、予想通り収集系スキルを使用した際のボーナスドロップと品質の向上、そしてささやかながら所持重量の増加も付いてきていた。
腐っても複合ロールだけはある、ということか。
「そうですね。とは言えまだヘルムも討伐するんでしょう?」
「まあな。その前にテントだが」
掲示板、サバク難民の集いで意見を求めた時、面白い発想を得た。
それを元にして後日ネヴァと協議を重ねる予定だ。
「さて。じゃあ俺もそろそろ落ちるよ」
「あれ、早いですね」
タイピングに集中して凝り固まった肩を回して言うと、レティは意外そうに眉をあげて返した。
「ま、多少は健康に気をつけないとな」
「ふふっ。それは殊勝な心がけですね」
本人に向かって言うのはどことなく恥ずかしく、少し目線を反らす。
レティは小さく口元を緩めて頷いた。
「それじゃあレティも落ちます」
「おう。お疲れさん」
「はい。レッジさんも、今日はありがとうございました」
ログアウトボタンを押すと30秒のカウントダウンが始まる。
「明日もログインしますか?」
「当然。やりたいことはまだまだ消化し切れてないからな」
「ですね。じゃあレティもログインします」
「おう」
レティがはっとしてこちらを向く。
「本当に、ありがとうございました」
「うん? さっきも聞いたが」
「いえ。レティが湖に沈んだ時、助けてくれたので」
「ああ……。まあ、当然だろ」
「当然、ですか?」
頷く。
「レティも大切な仲間だからな」
時間が来る。
光に埋め尽くされる視界の中で、彼女は花の綻ぶような笑みを浮かべていた。
_/_/_/_/_/
Tips
◇
希少なアイテムを追い求める情熱と偏屈さを持つ変わり者。ツルハシを担ぎ、斧を振るい、鎌を研ぎ、ナイフを突き刺し、まだ見ぬ秘宝珍宝を探し求める姿にはいつしか敬意すら向けられる。
Now Loading...
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます