第252話 恐怖は未だ消えずとも

「うーむ……」


 家の居間、俺と村正ちゃんは仲良く唸り声を上げておりました。

 それは別に遊んでいる訳でも、威嚇している訳でもなく……。


「どうやったら勝てるんですかね……」


「ねえ……」


 対ソサナ戦対策会議でした。

 数日前からいろいろ考えているのだが、全然良案が思いつかない。

 こっちが攻撃してもこっちがダメージ受けるとかホントにどうすればいいんだ。

 こんなの勝ち目がないだろ……。


「まあ、能力的に複数人で戦えば勝てるんでしょうね。でも奴らはそれが出来ないタイミングでしか攻めてこないですし……」


「そうなんだよな」


 前に薫が言っていたが、奴らは危険を冒してまで俺達を倒す必要はないのだ。

 奴らにとって俺達は居ると邪魔なだけで、絶対に倒さないといけない存在ではない。

 その気になればずっと隠れて俺達の寿命が尽きるまで待っていることも出来る。

 だから奴らは絶対に安全で有利に戦えるタイミングでしか出てこないのである。

 つまり奴らに勝つにはその場でその優位性を覆さないといけないのだ。


「単独でソサナを討伐する方法……。何があるでしょうか……」


 ソサナの能力は『共感』

 俺がソサナに攻撃すると、俺も同じダメージを受ける能力。

 しかも厄介なことにソサナが俺に攻撃した時はソサナにダメージはない。

 また、俺が回復するとソサナも回復するが、ソサナが回復しても俺は回復しない。

 まあなんとも都合のいい能力だ……。


「……ダメだ! 全っ然思いつかない!!!」


「いや、諦めちゃダメですよご主人」


「……それは分かってるよ。大丈夫、どんなに嫌になっても諦めはしないよ」



「ええ? 諦めればいいのに、考えるだけ無駄なんだからさ」



「――!!!」


 相変わらず馴れ馴れしく響く声。

 その主が居るのはウチの庭。

 村正ちゃんと駆け出すとそこにはやはりソサナが居た。


「やっほー、光くん。また君に会うことになるとは思ってもみなかったよ」


「……」


 ひらひらと手を振り、心底びっくり……という風な表情を作りながら俺を見る。


「馬鹿だねー、隅っこで怯えていれば痛い目に合わないで済んだのにさ。変な希望を持つから死んじゃうんだよ?」


「そういうことは勝ってから言え。そんな簡単に殺されてたまるか」


「アハハ! よく言うよ! まったく攻略法も思いついてないのにさ!」


「……」


「薫くんレベルでようやく相打ちが限度なんだよ? 君程度の強さで何が出来るって言うの!?」


「――ッ!!!」


 瞬間、拳を振りかざしたソサナが目の前に。

 その一撃は回避したが、もちろんそれでソサナの攻撃は終わりではない。


「ほらほらほら! どうする!? 攻撃しなかったらダメージ受けないけど、私は永久に倒せないよ!」


 回避、回避、回避!

 悔しいがソサナの言う通りだ、何とか突破口を見つけ出さないと絶対に勝てない!


「無間・鎌鼬!!!」


 放つ真空の刃。

 しかしソサナはやはり回避せず、結果俺も同じ切り傷を受ける。


(ダメです、ご主人! むやみに攻撃していたらこっちが倒れてしまいますよ!)


「だからって何もしない訳にもいかないだろ!」


「アハハ! さあ考えて、考えて! まあ意味ないけどさ!」


「無間・爆決天牙!!!」


 変わらない。

 結果は変わらない。

 同じようにソサナは敢えて攻撃を受け、そして俺にも傷をつける。


「ぐっ……!!!」


「どう? 自分の技のお味は? 爆発する突き技なんていい感じに痛いんじゃない? 私人間の感覚自体は分からないから、君がどういう風に痛いのかまでは分からないんだよねー!」


 挑発的にソサナは嗤う。

 ……どうすればいい!?

 本当に相手の言う通りだ、このままじゃ絶対に勝てない!


「痛……」


 ソサナから投影された爆決天牙の傷が痛む。

 ……まったく、我ながら結構メチャクチャな技を使うものだ。

 鎌鼬の傷よりも数倍くらい痛い……。


 ……ん?


(どうしました? ご主人?)


(ちょっと待って)


(え?)


 村正ちゃんへの返答をする前に、もう一度ソサナに攻撃。

 意識的に斬りでもなく、突きでもなく、打ち技を放つ。


「物覚えが悪いねー、無駄だよ攻撃の仕方を変えたって」


 今までと同じように、俺の身体にも傷がついた。

 打ち技の傷が。


(……分かった! ソサナの弱点!!!)


(!? ほ、本当ですか!?)


(ああ! ソサナは攻撃を全く同じ状態でしか返せないんだ!)


(……それがどう弱点になるんです?)


(簡単なことだよ。アイツにしか効かない攻撃をすればいいんだ、そうすればアイツだけがダメージを受ける。あの能力さえ封じられれば勝ち目はある!)


(なるほど! ……それでソサナにしか効かない攻撃とは?)


 ……そうなんだ。

 それが一番の問題だ。

 答えは見つけ出したが、その答えに当てはまるものがない。


 地天反逆

 鎌鼬

 空烈十字斬

 爆決天牙


 俺が使えるどの技でも、俺はダメージを受けてしまう。

 薫の聖炎みたいなアイツにだけ効く攻撃方法を何とか見つけ出せれば、それで勝てるのに……!


「さてさて、そろそろ終わりにしようかな? 今回は絶対に逃がさないからね!」


「――!!!」


 見つからない。

 見つけ出した答えを埋めるものが!

 ソサナにしか効かない攻撃が……!!

 

 <続く>



 【後書き雑談コーナー】

  信長「『無間の型』は型だから技ではないぞ」

  信行「勘違いなされないようにー」



 次回 253話「その目を逸らさない」

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