第251話 再び赤いあの場所へ

「さて、それじゃあ改めて始めようか」


 と、いう訳で俺を加えて再び対策会議開始。

 これからの方針を皆で決めてい……く!?


「宇水さん!?」


「!? ど、どうしました!?」


「髪どうしたんです!?」


 宇水さんの髪が短くなってる!?

 あんなに長かったのに、随分バッサリと短くなってるし!!!


「え、ヒカルお前今更気が付いたのか?」


「……初めからずっとこうでしたよ」


「……そうなの?」


 クロスと音無さんに凄い呆れた顔で見られてしまった。

 いやー……恥ずかしながら全っ然気が付かなかった……。


「えっと、見ての通り切ったんですよ。その気合を入れる為……的な感じで」


「はあ、そうですか」


 よく見れば背中に背負っているのは薫の剣だ。

 そうか、宇水さんも……。


「ねえ、話進めてもいい?」


「あ、ごめん」


 シナトスに言われて三度会議スタート。

 今後はもうちょっと周りの人をちゃんと見るようにしよう……。



「それじゃあまずは敵の戦力確認から。まあこの後増える可能性も十分あるけど、現状確認出来る相手はあと誰だっけ?」


「『追走』の狂気ガサナ、『共感』の狂気ソサナ、『真実』の狂気マサナ、それからあのバーサーカー。あと、もちろん言うまでもないが帝だな」


 ……まだあと帝を除いても4人もいるのか。

 あんなに強いのが4人……うう、やっぱり怖い……。


「大丈夫ですか、ご主人?」


「……うん、ありがとう大丈夫だよ」


 顔に出ていたのだろうか、村正ちゃんに心配されてしまった。

 まあ怖いのは怖いが、だからってもう逃げるほどではない。

 正面から向き合うくらいの勇気はある。


「そして……奴らはどうも一人一人相手を決めて戦っているようだ。おそらく向こうなりに有利に戦えると判断した相手を選んでいるのだろう」


「つまり……戦うとしたらもう1回同じ相手になるということですか」


 リームと音無さんの言う通りだろう。

 つまり、俺は……。


「俺はソサナが相手か……。分かった、村正ちゃんとなんとか勝ち目を探してみるよ」


「はい!」


「私はガサナですね。前に一度負けた身で言うのはあれですが、任せてください。きっと勝ってみせます」


 さて、そして未だ初めの時以来姿を見せないマサナは……。


「私が相手にするのはマサナ……になるのだろうな」


 クロスが相手にするのだろう。


「ああ、多分な。……頼むぞ、黒お嬢」


「もちろんだ、任せておけ」


『真実』の狂気……、一体どんな能力何だろうか。

『略奪』『追走』『共感』とチートじみた凄まじい能力ばかりだったのだ、きっと『真実』もかなり厄介なチカラだろう……。


「なんだ? 心配してくれているのか、ヒカル」


「え? ……まあ、そうかな。あ、別にクロスが頼りないって訳じゃないだけど……」


「分かっているさ。ありがとう、心配してくれて」


 素直にお礼を言われてしまった。

 ……こういう風に言われると、なんて返せばいいのか分からないな。

 そもそもクロスには前にその……告白されたから……普段以上になんて話せば――


「で、バーサーカーだが」


「――!」


「ん? どうした? うわの空では困るぞ、城内光」


「ごめん! 続けて大丈夫だよ」


 ダメだ、とりあえずそれを考えるのは後にしないと。

 今は眼前の問題に集中、集中……。


「バーサーカーは恐らく今後は宇水嬢を狙うだろう」


「――! ……そうですよね。はい、なんとなく分かっています」


「あれ? 宇水さん、バーサーカー見たことないよね?」


「そうなんですけど、でもちゃんと知ってるので大丈夫ですよ」


 なんで?

 誰かから聞いたの?


「任せてください。勝ち目は……全然見い出せないですけど、ちゃんと戦ってみせます!」


「ああ、頼むよ。それで新谷殿とドロンにはまあ引きつづき現状維持でお願いしたい」


「分かったわ、まあアタシ達が前線に出ても邪魔でしょうしね」


「うむ、先刻から理解に達していた。問題はない」


「現状維持って……えっと失礼ですけど、何してるんですか?」


「調査と見張りって言えばいいかしら。いつどこから変なのが湧いて出てこないとも言い切れないでしょう?」


「ああ、なるほど」


 ……さて、じゃあこれで今後の方針は大体決まったな。


 ソサナ、『共感』の狂気ソサナ。

 受けたダメージをこちらに投影させる能力の持ち主。

 つまり相手から攻撃を受けるのはもちろん、相手に攻撃しても俺はダメージを受ける。

 ……一体どうやって勝てばいいのだろうか。


「大丈夫ですよ、きっと勝ち目は見出せますって!」


「……そうだね、ありがとう」


 そうだ、悩んでいても仕方がない。

 出来る・出来ないじゃないんだ、やるか・やらないかの問題なんだから。

 大丈夫、勝てる。

 きっと勝てるはずだ。



 ―暗闇の中―

「そろそろ、お前の出番かもしれないぞ」


「……面倒ですね。まあ、命令とあれば仕事はしますが……。……面倒です」



【後書き雑談コーナー】

 クロス(ヒカルは髪切っても気がつかない系なのか……)

   光「? どうかした?」

 クロス「いいや、別にー」

   光「?」



 次回 252話「恐怖は未だ消えずとも」

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