第7話 見切り
「アイツの攻撃は、もう見切った」
「何? それはどういうことだ?」
俺の放った言葉に、リームは問い返す。
当たり前だ、急にこんなこと言いだせば訳がわからないのも当然だろう。
「言葉のままさ。アイツの攻撃の軌道、特徴、癖、全部把握できてる」
「……。次元眼にそういう効果があったのか、はたまた君が独自に進化させたものなのか。気になるところではあるが、なるほどそれなら時間稼ぎくらいならできるか」
「! 来るぞ!!」
シナトスの時とまったく変わらない勢いで振り下ろされる鉄球。
『振り下ろし攻撃は、奥行きが弱い』
脳内からさっきまでに叩きこんだ情報を引っ張り出す。
「よし……!」
後ろ向きに跳んだ俺はしっかりと鉄球をかわすことに成功。
すると、化け物は竜巻を作り始めたが――
『竜巻の弱点は出し始め、回転が弱い間なら突き技で牽制可能』
「させるか!!」
【ヌアアアアアア!?!?!?】
リームを逆向きに持って柄の部分で相手を突く。
突くのは鉄球ではなく、アイツの胴。
面積がデカく、馬の上というアンバランスな位置だからこそ、この程度の突きで体勢が崩れる。
【ナゼダ? ナゼダァ!?】
「何故だ?だと、最初に言っただろ」
「お前の攻撃はもう見切った、と!」
【ウヌアアアアアアア!!!!!】
攻撃が当たらない焦りなのか、俺程度にあしらわれていることへの怒りなのか。
化け物の攻撃はより直情的にかつ、直線的になっていく。
「……。いい判断だ。城内 光よ、君は昔からこういった能力持ちなのか?」
「いや、今までの俺にこんなことはできなかった」
リームが疑問に思うのも無理はないが……。
事実、今までの俺にできることではないのでそう答えるしかない。
と、化け物は俺たちが会話する時間など与えてはくれず、
【生者! コレナラ!!!】
「なッ!?」
なんと鉄球に車を引っ掛けて振り下ろしてきた!
最初の鉄球は初めと同じ、後ろに跳べばいい。
しかし、引っ掛けられた車は鉄球が地面に着くと同時に大きくバウンド。
俺の頭上から踏みつぶそうと迫ってくる。
「まずい!!」
リームがそう叫ぶ。
今ここで、俺がすべき行動を記憶の中から――
「これだ!!」
次の瞬間、
バァン!と、大きな音と共に車は反対方向へと吹き飛んでいく。
【!?!?!?】
もちろん、俺とリームは潰されることなくその場に健在。
何故かと言うと、
「……。まさか、アイツだけでなくお嬢の戦い方も学習していたとは」
「今のはお嬢の防壁術だろう?」
シナトスが使った技。
地面を斬り上げてアスファルトの壁を作る、即席防御。
出来るかどうかわからなかったが、無事成功したようだ。
「ああ、シナトスの方もちゃんと見といてよかったよ」
【バカナ、バカナ!】
なんてこった、まさか少し前まで怖がっていた化け物に反対にこっちがビビられるなんて。
「どうやら、シナトスの回復を待つまでもなさそうだな」
「ああ、今の君ならアイツぐらいなら倒せるだろう」
そう、アイツぐらいなら。
ガンッ!!
と、音と言うよりは衝撃そのものが俺の後頭部で破裂する。
「え?」
何が起きたのか、その答えはすぐに分かった。
内側に折れ曲がった電柱が、俺の後頭部に思い切りぶつかってきたのだ。
つまりそれは―
「し、しまった……! 油断した……!!」
確かにアイツの放つ磁力によって、武器の軌道が変わることは警戒していた。
だがしかし、武器でも何でもないものまで利用してくることまでは懸念できていなかったのだ。
「し、しっかりしろ!! 城内 光!!!」
リームが俺の意識が飛ばないように、声をかけ続ける。
だが、だくだくと血がこぼれていく俺の意識は、急速に消えていっていた。
「う……。くそ……、こんな……、所で……」
【死ヲ! 死ヲ与エン!!】
しかし、そんな俺に向けて化け物は容赦なくその鉄球を振り下ろした。
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