第2話 特別なアナタ
「よし、ちゃんと足を下ろしたわね。じゃあ、話してあげる」
「ちょっと待った!」
「ん?」
これからかなり大事な話が始まるというのに、俺は彼女の言葉を遮ってしまった。
しかし、それにはそれ相応の理由があるわけでして。
「下に降りてからでいいですか?」
「え?」
「俺、高いところが苦手で……」
「は?」
理解できなくても当然だろう。
飛び降り自殺しようとしていたヤツのセリフとしてはかなり間抜けだ。
まあ、さっきまでは死ぬつもりだから特に気にならなかったのだが……。
「はい、じゃあ話続けてもいいかしら?」
「どうぞ」
無事、1階まで降りてきた俺たちは休憩室のソファーに腰掛けながら、話の本題に入っていった。
「まず、私のこと。アナタのお察しの通り、私は死神です」
「死神……」
はっきり言って、さっきの状況でなければ誰だって信じないであろうことを、彼女は至極当然のように言い放った。
というか俺だってまだ完全に呑み込めていない。
なぜなら彼女はどうみても、その見た目はただの女の子だからだ。
黒く長く綺麗な髪に、透き通るような白い肌。
身長は俺より少し小さいぐらいの、普通の女子高生サイズ。
服装も黒いローブとかではなく、むしろお洒落なぐらいだ。
見た目だけなら(それ以外のことを俺は知らないが)完全にカワイイただの女の子。
ただ、一つ普通と違うことがあるならそれは雰囲気。
人間が放つようなものではなく、それはどこか暗く冷たい雰囲気をしていた。
「そう、死神。まあ、アナタたちが想像するような死神とは少し違うけどね」
「それで、その死神はなんで俺を生かしたんですか? 婆ちゃんが生き返るってどういうことなんですか!?」
確かに彼女の正体も気になったが、今の俺に大事なのはそこではない。
『婆ちゃんが生き返る』
彼女の言ったそのことの真意の方が、いまの俺には大事なことだった。
「落ち着いて、ちゃんと順を追って説明するから」
「ご、ごめんなさい」
「まず死神である私がアナタを生かした理由。それは、アナタが特別だからよ」
「特別? 俺が??」
「そう、アナタが」
にわかに信じがたいセリフだった。
昔から気弱で、婆ちゃんが師範をしていた剣道以外には何の取り柄もない俺。
そんな俺を彼女は特別だといった。
いったい何が?
そう思ったが、彼女の次のセリフを聞いて俺は納得せざる負えなくなる。
「だってアナタ、私のことが見えてるじゃない」
「え!? 君、他の人に見えないの!?」
「見えないわよ。そうでもなければ今頃世界中で死神ブームになってるわよ?」
「……」
果たしてそんなブームが起きるのかどうかという点は別として、確かに彼女の言う通りだった。
普通に考えれば死神が見えるはずがない。
それが俺には見えているという時点で、俺は彼女の言うように普通じゃないのだろう。
「アナタの目は普通の目と違う、今度ちゃんと説明するけど『次元眼』って言う特別な目なの」
「次元眼……」
「そう、次元眼。そして、これが私がアナタを生かした理由」
「じゃあ、婆ちゃんが生き返るって言うのは?」
「それは――」
〈続く〉
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